7話 自然
用件は結局俺の能力のことだけであったらしく、話はすぐ終わった。
俺は部屋に戻っても練習を続けていた。
「……」
何も考えないようにして、近くの本を手に取る。
するとやはり、何の手応えも無く裂けてしまった。
「…くそ…上手くいかねぇ…」
おそらく、何も考えないように…と考えてる時点でダメなのだろう。
その時点で一種の集中状態に入っている。
だがこの事実を知ってしまった以上、前のようにスラスラと自然にいられない。
故に何をしても全て壊してしまう…
(このままじゃいずれ…桜や雪篤も…)
手にかけてしまうのではないか…
だがそう思ってしまうすんでのところで思い出した。
「…バカか…そうならねぇために今こうしてコントロールの練習をしてるんだろうが…」
どれだけ時間がかかるかはわからない…でも足掻くだけ足掻いてみよう。
再び、周りのものを探した。
「…あっ」
目が覚めた。
気がつくともう暗くなっていた。
いつの間にか寝てしまったようだ…
「ったく…コントロールの練習してたんじゃねえのかよ…」
しかし後悔してももう遅い。
時間からして、そろそろ夕食が食べれる頃だろう。
ドアノブに手をかけ、部屋を出た。
食堂に着くと、雪篤が俺の席を空けておいてくれていた。
「悪いな、席空けてもらって。」
「気にすんな。…コントロールはできてるっぽいな…」
「…能力のことか?」
「それ以外に何があるんだよw」
「いや、まだ上手くいかない…何を手に取っても全て裂いてしまう…」
「そうか?できてるだろ。」
「そんな簡単にできてたら、こんな悩んでねぇよ」
「いやいや、できてるって。じゃあ聞くぜ?コントロールできてないのなら、どうしてお前は部屋を出てこれたんだ?」
「何言って…」
……あ
そうだ…能力が発動していたら、ドアノブに手をかけたところでドアノブは切断されて、部屋からは出られなくなっているはずなのか…
しかし今俺はこうして食堂で雪篤と会話を交わしている…
…ということは…?
…ん?
「…いや…これコントロールって言うのか?」
「細かいこと気にすんなって。無事に自然でいられるんだからいいじゃねえか。ほら、飯食おうぜ。」
…まぁ…いいか…
時間はまだある。
それに、自然でいることに本来練習なんていらない。
普段過ごしてるように、ただただ同じように過ごせばいいだけだ。
何も悩むことなんてない。
そう考えたら、少し心が軽く感じた。
そして俺は、少し嬉しいような気持ちを感じながら、夕食を食べ始めた。
ー7話 終ー
意外と普通に投稿できました。
よろしければまた見てください。
自分のこの妄想劇を