5話 招集
目が覚めた。
夢を見ていた。
和章と笑いあう…そんな普通の日常だったはずの夢。
「お、起きたか。昨日はすまないな、いきなりあんなことして。」
起きて与えられた部屋から出ると、白髪男がいた。
「あれもお前の能力なのか?」
「あぁ、そうだ。お前の脳に同化し、少しばかりいじくらせてもらった。故に脳が拒否反応を起こし、意識を閉じた…ってわけだ。」
「…便利なもんだな。そんな力があれば、ここいらを征することだってできるんじゃないのか?」
「そんなことに興味はないし、そうもうまくいくもんじゃない。あれはお前が単に焦ってたからいじりやすかったが、警戒されてりゃそうも楽に意識を閉ざさせることはできん。」
「つまり俺は楽な対象だった、と?」
「いい意味で、な。まぁそう怒らないでくれ。結果として安全な場所に来れたんだから。」
安全?
ここの安全性は保証できないと昨日言われたばかりなんだが…
「おっと…あんまゆっくりはしてられねぇ。飯の時間だ、行こうぜ。」
「飯って…朝飯が食えるのか」
「当たり前だろ、食えなきゃ今頃餓死してるよ。」
そりゃそうか…
雪篤に連れられ、大きな広間のようなとこに出た。
ここが食堂…か…
「ここは、以前倒産してしまった会社の寮にあたる建物なの。だから部屋もあるし、こうして食事をとったり調理したりする場所も整ってる。変なものとかも入ってないから、安心して食べてね。」
気づくと後ろに小春が立っていた。
最初は古びたビルか何かかと思ったが…なるほど、それならあの多くの部屋やこの広間も納得だ。
食事を済ますと、再び小春に声をかけられた。
「9時になったら、3階の会議室に来て。それまではこの建物の中をうろついててもいいし、部屋でくつろいでてもいいからね。」
今は8時半…あと30分か。
まぁ迷子になると嫌だし、部屋に篭るか。
自室に戻ると、何故か妙な安心感を得た。
思いの外このコミュニティは人がいるようで、食堂にも多くの人間がいて共に食事をとっていた。
コンコン…
誰だ?
「よう、栗山。暇つぶしに来たぜ。」
扉を開けると、そこには雪篤がいた。
「入っていいか?ちょっと話そうぜ」
「あぁ、構わない。」
雪篤を部屋に招き入れ、適当に座らせた。
「さて…暇してたか?」
「あぁ、まだ20分近くあるしな。何をしようにも部屋には何もないし。」
「贅沢言うもんじゃないぜ?飯を食えるだけマシってもんだ。お前料理とかできなさそうだしなぁ…家にいてもまともに飯食えねえだろw」
「…おそらくその通りだが、何か腹立つな…」
「ふっ、すまないな。…突然な質問だが、お前はなんでここに残ることにしたんだ?」
「…本当に突然だな。逆になんでそれが聞きたいんだ?」
「当然の質問だろう。家にいても危険だらけだが…ここは戦いの最前線だぜ?今朝は安全な場所と言ったが、それも確実じゃない。いつ争いが起こるかわからねぇんだ。それは一応聞いたろ?」
「まぁ…それっぽいことは聞いたよ。」
「聞いたなら当然だ。それを聞いて何故ここに残ろうとする。お前の能力なら…だいたいの敵は自分で払えるだろう。そんな力だから俺からすれば、ここにいてくれたらいい戦力になると思うし…」
「身を守るとか、そういうんじゃないんだ。俺はただ…こんな力を得てしまった原因を突き止めたい。元凶を見つけたい。今はそれだけだ。それが…俺が殺した和章に対しての、罪滅ぼしだと思うから…」
「…そっか…なるほどな。まぁ話したいことはまだ山ほどあるが…とりあえずそろそろ行こうぜ。意外と遠いんだよ…会議室。」
ー5話 終ー
そろそろストックが尽きる…
頑張ります!