4話 選択
目は覚めている。
だが夢を見ているようだ。
今の現状が現実か、疑わしくなるほどに…。
「まず、君は最近知らない人と会話したことがあるよね?掴み所のないような人」
「…さっきの雪とかいう男。そしてお前のことか?」
「そうじゃなくって、もう少し前。ん〜…いろんな人がいるから…誰に与えられたかわからないんだよなぁ…」
「それは、男が女かわからないような顔をした奴のことか?そういえばそいつは…」
…あ
「自分で理解した?そう、おそらくその人が、君にその力を与えた。君の能力の特徴からして、能力の名前は『切断』と形容していいのかな。」
切断…
途端に記憶を刺激される。
「…うっ!ぐ…うぅ…」
吐き気がこみ上げてきた。
俺の目の前で身体が真っ二つになった和章…。
やはりあれは俺がやった…のか…
「今君が考えていることは想像できる。そしてその答えは、悲しいけれどもYesよ。」
「やっぱそうなのか…で、何で俺なんだ…?」
「…?何が?」
「何で俺に能力が与えられたのか ってことだよ」
そう、そもそも何故俺だったのだろう。
ただつまらない日常を過ごしているというだけでこんな能力を与えられたとは考えづらい。
そもそもそんな理由ならこの世界は能力者で溢れてしまうだろう。
「…わからない。私もそれはわからないの。」
これだけは、こいつもわからないということか。
そういえば…
「ところで、お前の能力ってのは…?」
「あ、やっぱり興味ある?まぁそうだよね。私の能力は、言うなれば『降霊』って感じかな。死んだ人を私自身の肉体に宿らせるの。」
こりゃまたかなり現実離れしたものが出てきたもんだ。
俺の「切断」とかいう物理的な能力じゃなく完全に人智を超えている。
「私の能力は、見せたくても見せづらいんだよね…人によっては演技と取るかもしれないから。」
まぁ…目の前に霊が現れるとかならまだしも、肉体に宿らせるだけでは、死人を演じればいいのだから演技と取られるかもしれないな。
これでとりあえずの疑問は払拭した。あとは…
「それで、最後に…俺がこれからどうするか…と言っていたが。」
「そうだね…基本的に選択肢は2つ。私達のこの能力者保護のための機関に入るか。それとも一人で勝手に運命を背負って生きて行くか。ちなみに後者は、能力悪用側に連れ去られるかもしれないって危険がオマケでついてくるよ」
冗談めかして微笑する少女。
こちらは笑えないんだが…。
でも、自分から危険な道を進むような必要もない。
ならこのままここにいた方がいいのだろうか…?
ここはとりあえずは安全そうに思えるし…
「どうする?栗山くん。決めるのはあくまで君だよ。ちなみにここに残ったとしても、完璧な安全は保証できない。所詮は子どもを主としたコミュニティだからね。悪用側に抵抗して、命を落とす者もいたよ。」
前言撤回。
ここも危険だ。
でもだからといって、他に当たる場所もない…それなら…
「わかった…俺はここにいる。その方が、友達の…和章のためにもなるかもしれない。和章を巻き込んでしまった俺のできる限りの罪滅ぼしを、ここでする。」
そう、もう俺は部外者じゃない。
巻き込まれるだけでなく、自分の力で友を巻き込んでしまったんだ。
なのに今更怯えて逃げてどうする…。
「ありがとう…正直、ここの安全性の不完全さを説明すると残ってくれる人は少ないんだけど…安心した。改めて、リーダーの小春です。これからよろしくね、秋くん。」
しゅうくん?
聞き覚えがある…昔親からこう呼ばれていたのだったか…?
…思い出せない。まぁ今は関係ないか。
「あぁ、こちらこそよろしく頼むよ、桜。」
二人固く握手を交わした。
そして俺は今、助けられた側から助ける側の人間になった。
ー4話 終ー
少し遅れが…
頑張ります