8.魔石商で魔石を見せる
がやがやと賑わいを見せる街中を僕は兄様に手を引かれながら歩いています。ちょっと小さな子供のようで恥ずかしい。
僕たちは今街の中心に位置する大通りを歩いる。この大通りは北と南の門を一直線に結ぶ通りだ。
もちろん同じ大きさの道が東門と西門を繋いでおり、二つの道が交わる場所は大きな広場なのだ。この広場では、いろいろな催しを開催するらいし。僕は、一度も参加させてもらえてないけど。
さて、今どこに向かっているかというと、ブラブラとお店を覗きつつ、魔石を扱うお店に行く事になった。魔石か本物か、本職に確認してもらう事になった。
僕作成の魔石は、兄様の手の中にある。
街はとても賑やかで、美味しそうな匂いをさせている屋台や、収穫したての野菜や花を売っている屋台、自分で作った可愛いアクセサリーを売っている処など工夫を凝らした屋台が並んでいた。お祭りなどなにもない場合は、広場の一部はお店を持たないけれど、1日貸し屋台になっていてお店を出すことが出来るようになっていた。
帰りもこの場所を通るので、何を買おうか考え中。もちろんお金はないけど、兄様に払ってもらう。母様にもお土産を忘れないようにしないと。
「ルー、ここの店だ」
カランコロン、と兄様が扉を開けると、来訪者を告げるベルが軽やかになった。
壁には、様々な腕輪や指輪、剣・盾が飾られてある。これらの物には、魔石が嵌められる様になっており、場所を確認する為に見本として飾られてるのだそうだ。腕輪や指輪などの装飾品は、魔石を嵌めて購入する事ができるようだ。
「いらっしゃい、どんなご用件で」
ベルの音を聞いて奥から兄様くらいの男の人が出てきた。柔らかい雰囲気の気さくなお兄さんで、商人の子供出で立ちの僕に聞いてきた。
・・・そうだった、僕か。キョロキョロしてる場合じゃないね。う〜んどうしょうか。
今日は、お忍びだから商人の子供と護衛設定だった。護衛約の兄様は半歩後ろで黙って立っている。
「魔石を嵌め込められる腕輪とペンダントを。後は、空の魔石ありますか?」
僕が欲しいのはこれくらいかな。
「他に何かある?」
僕は兄様を振り返って話しを振った。僕よりも兄様が話した方が楽だし。
「あと、これの鑑定も頼む」
後ろから腕をぬっとだし、コトッと僕が作った魔石を1つ、兄様がカウンターに置いた。
「・・・これは買い取りですか?」
お店のお兄さんは、魔石もどきを見て、ちょっとビックリした顔をしていた・・・魔石として使えるはず。
「売るつもりはないんだが、鑑定をしてもらいたいんだ」
あれ、売らないんだ?
「わかりました、拝見します」
ゴクリと息を呑み緊張した面持ちで、そっとカウンターに置かれた魔石に手を伸ばし、色々な角度から眺めたり光を当てたりしている。ちょっと魔石を摘んだ指先から魔力が出てる気がする。
「・・・?!いくらなら売る!この大きさといい、魔力の流れも申し分ない!なかなか無い一品!どこで手に入れたんだい!」
カウンター越しに、兄様に体を突き出し、今にも掴み掛かる勢いで話しかけた。あまりに勢いに僕はちょっと驚いて半歩後ろに下がった・・・だって、あの魔石でこんなに興奮するなんてびっくりだよ。
「・・・・・・。」
元を知っているだけに、兄様のなんとも言えない戸惑った表情がちょっと可笑しかった。
「---ぷぷっ」
後ろでコッソリと噴出したら睨まれた。すいません、元はといえば僕が作った魔石もどき?が原因でした。でも反省はしてない。
「おやっさ~ん!急いで、来てください!!」
お兄さんは、店の裏に声張り上げた。奥から出てきたのは、頭に黒い布を巻いた長身の男の人だった。
「待たせたな、ここの店主だ」
魔石屋の店主というよりも、傭兵の方がしっくりくる厳つい風貌でちょっと貫禄がある。日に焼けた茶色い膚に、黒に近い赤い色の瞳に、印象的なのは頭に巻いた黒い布。兄様の身長も高いと思うのだけど、それよりも若干背が高いのかも知れない・・・体つきが良いからかなぁ。
お兄さんが差し出した魔石をみて、僕たちを交互に見た。・・・睨まれた気もするけど、見た目の印象からそう感じただけなのかもしれない。
「これは、売るのか?この大きさは今すぐには買い取るは出来ないぞ。魔石ギルドでの競り売りになるのだが・・・」
「売る予定はありません」
兄様がきっぱりと断っていた。空気の読まない店員が口をはさんだ。
「えー、売ろうよ。とっても高値がつくと思うよ。魔石を扱う商店の店主が買い取る競り売りは、一種のプライドをかけた戦い!高値がつく!!」
「そんなわけあるか!」
お兄さんは、店主の大きな拳で後頭部を強打され、頭を抱えて蹲った。・・・とっても痛そうだけど、なんか良くやらかしてるっぽいから大丈夫かな。
「まぁ、売らないにしても、この形じゃあ、剣にも盾にもそのまま装備しにくい・・・物は相談だが、魔石の歪な場所を削って、装備する物もこの魔石が納まるように修正してやる。・・・だからと言っては何だが、削った欠片をもらいたい」
魔石が歪サイズも普通より大きく、このままだと剣や腕輪に魔石を嵌める窪みがあるのだけれど、嵌らないらしい。魔石が小さい分には、溶けた鉄を流し込み窪みを簡単に調節する事が出来るのだが、広げるには一苦労なのだそうだ。店主の言いたいのは、加工料は取らないから魔石の削り粕が欲しいという事だ。
??まぁ、僕は良いけど、どれに魔石を使うのかはまだ決めてない。兄様はと相談しないと決められない。魔石はの中の魔力は、使ったら補充する必要があるから、魔力が少ない人には
僕と兄様は顔を見合せて、頷いた。考えている事は同じの様だ。僕よりも兄様の方が困惑している顔をしている気がするが、知らない振りをしよう。
「・・・少し待ってください」
兄様と僕は店の扉の傍に移動し、話をする事にした。もちろん内緒話だ。
「(兄様、どうします?僕は、腕輪か何かに嵌めて使おうと思っていたので、兄様が使ってもいいのですが?)」
「(・・・いや、剣や盾に使いたいところだが、まず腕輪にして、いろいろ試す必要がある)」
「(店主のおじさんの提案でいいんではないでしょうか)」
僕との話しが終わると、兄様だけが店主のおじさんに話をしに行った。
「わかった、魔石の加工をお願いしたい。魔石を付けるのは腕輪で。腕輪を加工するに当たってだが・・・魔石は通常の大きさに見えるように見えるように腕輪に工夫してほしい」
「---わかった、何とか工夫してみよう」
店主は難しい顔をしていたが、何とか頑張ってくれるようだ。あんまり大きい魔石付けてると、色々大変になっちゃうから仕方ない。・・・物取りには会わない方がいいし、色々聞かれても困るし。
僕は、兄様と店主が話しをしている間、シンの首をナデナデしたり、お店にある腕輪の装飾をみていた。いろんな模様があって迷うなぁ。
カウンターの向こうに居るお兄さんをチョイチョイと手招きする。
「ねぇ、お兄さん。僕のこの子に何か魔石を装備させたいんだけど、何か良いのある?できれば、大きくなっても調整しなくてもいいのがないかなぁ。」
・・・この犬の大きさから、馬くらいの大きさになっても・・・っ意味何だけど。
「首輪・・・じゃぁ、首絞まるしなぁ・・・。!ピアスがいいんじゃないか?耳に穴あけても良いなら」
大きさは関係ないしなぁと、シンの耳を見ながら言った。
言われたシンは・・・目が「えー・・・イヤ・・・」と言っているようだった。
「僕の大切な友達なので、傷を付けるのは駄目です。・・・かわりに此れにします。空の魔石で良いので、大きいのと中くらいのを1つづつ。小さいのを2つか3つ付けて、大きめに作ってください」
僕が取ったのは、太いリングっぽい物で、輪が途中切れているイヤーカフスなるものらしい。
お兄さんに注文を済ませ、僕は兄様に視線を向けると、話を終えたらしい店主とバッチリ目が合った。そしてその視線はシンに向かっていた。
「そいつは---魔獣シルバーウルフの子供か?」
「---!!ちっ違います。僕の犬です」
「そうだよなぁ~こんなところに大人しく魔獣がいる訳ないよなぁ」
がはははっと店主は笑い、ガシガシと頭を掻いた。そうそう、そう思っていてください。
「近くに行ってもいいか?よく見せてくれよ」
と店主言ったが、
「よその人にはあまりなれていないので・・・シン!外で待ってよう」
と、ヘラッと愛想笑いをして誤魔化し、僕は後の事は兄様に任せて、店の外に出ている事にした。
「しっかりとしている犬だ、なかなか賢そうだ」
ニヤリと店主が笑って言った。