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7.隠し事は難しい

 蹲る僕の周りには、風の渦が巻き起こる。僕を中心とした竜巻。


 シンは、巻き上がる風を受けてるはずなのに、僕の傍らに立ち子供達を威嚇し続けている異様な光景だ。


 僕の周りに居た子供達は、恐怖の為か、泣き出す子供や尻餅をついて呆然としているのもいる。


 早く僕から離れて欲しいのに、恐怖の為か動く事が出来ないでいる子供たちが、大半だ。




「ルー!」

 バダバタと数人が走り寄る。その中に兄様がいたらしく、なんとか僕に走り寄ろうとしているが、魔力が作り出す風の渦になかなか入り込む事が出来ないでいた。


「にいさま・・・」


 兄様の姿に少し凪いだ気持ちが落ち着いて来た。シンの首筋しがみ付きながら、兄様の姿に視線を合わせたまま息を数回大きく吸う。


 もう、大丈夫。兄様がいる。


 怒りで放出されていた魔力が、僕の中に押し込められたが、お腹の奥深い場所で渦巻いて熱を発生させている。体から出ていた魔力が少なくなるにつれ、風の渦は小さくなり消失した。


「・・・何があった」


 シンの体に体重をかけてぐったりしている僕の傍に膝をつき、僕の体を抱き上げる。これって・・・とっても病弱な子供みたいじゃないか。

 兄様は、触れた肌から熱が出ている事が分かると、ムッと顔をしかめ、直ぐに周りに居た騎士達に指示を出し、僕を医療室に連れて行った。






「---魔力熱か、今までも魔力は高い方だったが、しっかりと制御出来ていたはずだ」

 治療台に座らせて、僕の顔を覗きこむ。しっかりと説明してもらう、と顔に書いてあるみたいだった。言い逃れはできないよね。


「---・・・えっーと。最近魔力が上がったみたいなんだ」


「-----。」


 ジーッと見るのはやめて欲しい。・・・早く次を話せって事だよね。


「体内の魔力がもの凄く増えたみたいで、・・・部屋に閉じこもってた」

「それは、気付いていたが・・・。増えた理由はあるのか?」

「勇者様を見たときからかな?よくわからないよ・・・」


 勇者を見たからなのは、間違えない。・・・きっと魔族だった記憶を思い出したからなんだろうけど、記憶を思い出したからって何で増えたからかは、わかりません。嘘ついているつもりはない。


「---そうか。・・・ちょっと熱があるみたいだが、怪我はないのか?手を見せてみろ」


 熱はあると思うよ、魔力を押さえ込んでいる最中だから。納得はしていないみたいだけど、追求されないのなら、それでいいかな。

 はぁ~っと息を吐いて、膝の上でギュッと握り締めていた手を開いた。思ったより色々と力が入っていたらしい。


「・・・あれ??」


 僕の手の中に、親指くらい大きい歪な真っ赤な魔石が握られていた。


 ・・・あっ、これ投げつけられた石だ。ハッとして、兄様の顔を見たがもう遅かったようだ。魔石を凝視している。兄様は、やっと一言搾り出したようだ。


「・・・どうしたんだ、これは・・・」


「---・・・えっと、投げつけられた石?かな。僕何も持って無かったし」


「これが石か?」


 兄様は、僕の手から石を摘み上げ、色々な角度から調べ始めた。剣に嵌め込まれた魔石を見比べているようだが、ちょっと色が違うだけで見た目魔石と変わらない。実はある程度の魔力を凝縮して石に詰め込むと魔石になるんだよね・・・これ魔族の常識。

 魔力の少ない人間族はそんな事思い浮かばないし、出きる人が少ないから知らないんだと思う。人間族は、地中にある魔石を見つけるか、魔獣の体内から魔石を取り出して使用する。その魔石の魔力を使い、なくなったら魔力を自分で補充するのだ。魔石はなかなか見つからない高価な品だ。


「ウォン!」

 勢い良く僕に飛び掛ってきたシンは、どうやら額の傷の手当が終わったみたい。僕が兄様と一緒に居るのを横目で見ながら傷の手当をしてもらっていた・・・とってもシンには心配かけてます。


 考え事中の兄様は放って置いて、僕はシンの体中を撫で回していた。・・・シンは本当に僕の心の安定剤だよ。

 僕達がそんな事をして遊んでいる最中、兄様は傍に居た人に外から同じ位の大きさの石を取ってこさせていた。部屋にいた騎士達を退出させたら目の前に石を差し出された。


「ルー。やって見せろ」

「・・・えっ。」


 ・・・やってみるの?熱が上がったままだと兄様はこのまま帰ると言い出すに決まっているし、できたら早く魔力を外に出したい。どうしようか・・・ウンウンと石を握り締め魔力を込めている風を装いながら、ちょっと考えてみる。


 ・・・普通の魔力量じゃあ作れないから、いいかな?


 お腹の底で渦巻いていた魔力をズルリ・・・と体の中から移動させ、腕を通り手の中に納まった石に魔力を込めた。硬い石のような塊には魔力を入れ易く、ギュッと押し込めて小さくしていた魔力を石に注ぐ。ちなみに使用したい魔法の発動呪文を唱えながら魔石に魔力を込めると、ちょっと魔力があれば簡単にその魔法が使えるようになる。


「・・・どうかな?」


 無意識に作った魔石とは違い、今度は意識して作ったから良い出来だと思うよ~とちょっと得意げになりながら、オズオズと兄様に差し出した。


 ウン、体内の魔力が減って、気分も良くなってきた。


 出来た魔石はさっきと同じくらいの大きさだったけど、真っ赤な色がもっと濃い赤に変わっていた。・・・なかなかの出来栄えである、満足。


 差し出された魔石を、また同じように摘み上げ、色々な角度から見る兄様が、こちらをチラリとみてポツリと言った。


「・・・なあ、このランクの魔石なかなか手に入らないもんだんだよ・・・」


 ・・・しまった、やりすぎだった。



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