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4.そうは簡単に、物事はすすまない

 一ヶ月は滞在すると思っていたラインハルトも、10日でこの領地を去り、もう我が家には居ないのだ。やったね!



 僕は、ほとんど部屋から出ていない。すべての事は部屋で済むし、侍女にお願いすれば大抵の事はしなくて済む。

 急激に増えた魔力によって、体はだるいし、魔力と体に意識を向けないとうまく行動できずにいた。


 記憶を取り戻した初日にアクシデントはあったみたいだけど・・・ラインハルトには合わずに済んだ。

 時折、父や母がやってきて話をしたが、部屋でずーっと、魔力制御をしながら体調を整える事に専念して、過ごした。




 日が沈み、月が真上に来る時間には、館に居る者達は皆休んで居る、この時間を待っていた。


「じゃあ、シン打ち合わせどおりにヨロシク」


 まず、シンに僕の部屋から魔力が漏れないように、結界を張ってもらう・・・誰かやってきても直ぐ分かるし、念の為。僕の部屋から、少しくらい僕の魔力が大きくなったとしても怪しまれないけど、僕じゃない魔力だとわかったら大変。


 次に、僕の魔力が涸渇するまで、シンに渡す・・・そして、シンの魔力をもらう。正しくは、シンの記憶を乗せた魔力をもらう。記憶と共に魔力が僕の中に入ってくる(たぶん許容量以上になる)ので、とても体が耐えられない。よって、気絶する=寝る。


 見せたい記憶を思い浮かべながら魔力を、シンから僕へと魔力を流す。


 あの後シルクリース様がどうなったのか・・・。

 僕はシンの記憶を見せてもらう事にした。






『ルー!!・・・ルー!!・・・ルーフェストォ----!』


 この視界は、走るシンの記憶だろう・・・。風を切るように、生い茂る木をギリギリのところを疾走する。視線の下からシルクリースの僕を呼ぶ声が聞こえる。騎乗する時間がなかったから、シンは口に咥えた状態で森をひた走る。


 瞼の奥に映った映像が途絶えた。・・・魔力の許容量を超えたのか・・・。

 森を抜けた後くらいまでは、確認できると思ったのに。


「・・・・ううっ。」


 体の奥で何か大きなモノが動いた感じがし、なんとも言えない痛みが全身に走った。

 この後はお決まりなのだが、痛みに耐えきれず、気絶をする事になった。












「----------おはようございます、ルークス様。今日も気持ちの良い天気ですよ」


 僕を起こしに来た侍女のアンが、カーテンを勢いよく開け朝の光を部屋中に満たす。


「・・・・・おはよう」


 気持ちの良い天気でも、僕の気持ちは全然晴れないのだけれど・・・・・予想よりもシンの魔力はキツカッタ。それ以上に情報が得られなかったのも堪えた。


「おはようございます、ルークス様。体の具合はどうでしょうか?」


 アンと共に部屋に来ていた我が家の執事のセバスが、寝ぼけ眼の僕に声をかけた。

 普段は僕の部屋にわざわざ朝早くから来る事はないのだけど、全く部屋から出る気の無い、引きこもり中の僕の様子を確認しにきたんだろう。


 ---こうなるとねぇ。一応、仮病じゃないんだけど、もう部屋から出て来いって事だ。


「・・・おはよう、セバス。少し体が怠いけど大丈夫、起きるよ」


「皆様が食堂でお待ちになっておりますが、あまり無理はなさいませんように」

 セバスはニッコリと頬を緩め、そう言い残し僕の部屋から退出した。


 イヤイヤ・・・食べに来れそうなら絶対来いって事だよね。


 ラインハルトが来ていた10日程は、父や母を含め家の者たちは忙しいらしく僕に構う事はなかった。

 ・・・ある意味とても助かった。気持ちも切り替えもできたし、いつもより多い魔力を制御して隠す事が必要だったから。


 今は自分で魔力を体内に納め、記憶を思い出す前の魔力量よりほんの少し分くらいの状態になるよう保っている。・・・全く感じられないとそれはそれで不自然だし。時折様子を見に父や母が来たが、頑張りました。


「・・・ルークス様、お支度の準備が整いましたので、こちらにお着替えください」


 あまり体調がよくないと思ったのか、アンが着替えを用意してくれた。


「ありがとう。後は自分で出来るから、下がって」


 アンを部屋から退出させ、僕は急いで着替え体内に魔力を巡らせた。


 ・・・しっかり制御しないと。


「よし、シン食事に行こう!」


 ずっーと僕の寝台の横に伏せていたシンがノソリと立ち上がり、僕の右に寄り添った。シンは、昔からずーっとこの位置にいる、僕の傍に。心強い味方を従えて、家族の待つ食堂に向かった。

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