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25.馬車の中・・・

 ---なんだ、この状況は。


 私は目の前の光景に眩暈がした・・・---この状況はおかしいだろう。


 私達4人は魔石商の店を出て、我が家の馬車の中で、館に向かい移動中だ。

 私の目の前に座る女・・・とその女の膝の上に座らせられ抱きつかれている我が弟。そして、仏頂面で腕を組み私の隣に座る男。


 女と言っても、18歳くらいの見た目の少女だ。

 私は、この少女・・・女にイライラしている。


 私のかわいい弟を、あの様に恥じらいも見せずに膝に座らせる様な女に、大切な弟にふさわしくない。

 ---だが、ルー自身が再会を望んでいた相手である以上、迂闊な発言はできない。交際を私が認めないといい、哀しい顔をさせたり、最悪嫌われる事は避けたい・・・。


 納得の行かない感情は、一先ず隠す事にして、隣に座る男に視線を向ける。断じて、あの様に真っ赤な顔をした情けない格好を甘んじて受け入れている弟を見ていたくないが為ではない。

 わたしの視線を受け、何か感じる所があったのか、腕を組んで視線を下にして眉間に皺を寄せていた男と目があった。


「---店主は、何者だ」

 真っ赤な顔をあげ、こちらを見つめるルーが視界の端に入る。


「ご存知の通りしがない魔石商です。ご挨拶が遅れましたがゴードンと申します」


 あからさまな、何も情報を渡す気がないという対応に眉間に皺を寄せてしまうのは仕方ないだろう。


「---ゴードンさんは、魔族だよ。・・・違わないよね」

 ニコリと笑いかけるルーに、ゴードンは、チッと舌打ちをし、忌々しとばかりの視線を向ける。


「お前は、何者なんだ---魔族並に魔力を持ち、今は亡き者と同じ魔力を持つ、お前は何だ」

 ギロリとルーを睨みつける。


「・・・そう、僕はなんだろうね。ゴードンさんはどう思う。魔族だったルーフェスの頃の記憶を持つ僕は---、これからどうすればいいのかな・・・。でも、魔力量が魔族並になっていると感じてくれてるなら嬉しいかな」


 人間族の私と、魔族の二人・・・人間ではあるが、記憶を持つルーとしてはどちらにも付きたくは無いはずだ。

 特に少女との敵対は避けたいはずなのだ。そして、私達家族とも敵対はしないはず。


 出来れば、魔族、人間族とのしがらみの無い関係を望んでいるはずなのだ。


 それは、ここに居る二人にかかっている。ルーの事を考えると種族は関係のない繋がりを求めたいのだ。この男は、どう答えるのか・・・。


「お前さんはどうしたいんだ・・・。俺たちは今、お前達に囚われているのと同じ状況だ。それを聞かない事には身の振り方が、変わるだろうが」


 少しイラついた素振りを見せるが、この男何を言ってるのだ---不利な状況は、我々だ。魔族二人に対して、私は狭い馬車の中では剣を振るう事は出来ないのだ。


 ルーに至っては、あの少女の膝の上。シンは、大きな欠伸をし、足元で未だに寝そべっている。全く・・・当てにならない。


 ふぅ・・・と息を吐き出し、何かを心に決めたのか、ゆっくりと口を開いた。


「---僕は、魔族と争いたくない。でも、それは僕の力だけでは叶う事ができないから、協力して欲しい。・・・僕が、シルクと一緒に居るためにも、お願いしたい」


 しっかりとゴードンを見つめハッキリと告げる。しかし、ルーの言葉に感激した少女に再び抱き締められ、苦しそうにしているのが残念な感じになってしまっている。


 ゴードンは、全くそんなルーの様子は気にならないのか、ルーをしっかり睨みつけるように見つめ、品定めをしている様だ。


 暫く何か考えながら、二人の様子を観ていたのだが、私の方に視線を向けてきた。

「そうか。で---お前は、どうなんだ」


 ・・・すっかり忘れていたが、名乗って無かったな---。敵意が無いと示す為にも名を明かしておいた方がよいだろ。


「私の名はフォルトス・ヘルヴォルト。ルークスの兄だ、よろしく頼む」


「---はぁ?!何で次期当主が、護衛の真似事してんだ!」


 はははっ、この反応を見たいが為にもやっているのだが、なかなか良い驚き方だ。


「兄弟あまり似てないな・・・顔付きというか、受ける印象が違う。---まあ、魔力量が桁違うのは持って生まれた素質か?」


 意地が悪そうに、口元を上にあげ、ニヤリと笑みを浮かべる。


「護衛が出来るくらいには、剣の腕は立つつもりだよ。今度試してみるかい?」


 私の髪父親の色を受け継いだのか赤茶色で、弟は母の髪の色・・・青みがかった黒だった。

 光の反射で黒にも濃い青にも見えたはずの髪の色のはずが、魔力が上がるにつれ最近、銀色に輝く黒になっているように感じる---これでは受ける印象がかなり違うだろう。


 魔力量に至っては、私は普通の貴族よりは多い方だ。弟が規格外なのだ、一緒にされては困る。



「---それは上々、楽しみにしている」


 思いもよらないところから声がかかった・・・ルーを膝にのせている少女からだ。口角を上に上げ挑むような輝きを瞳に乗せ、私を見据えた。


 ---おいおい、剣を握った事があるのか?!


 ぺチン、と自分の額をはたく男が深い溜息を吐き、首を振る。・・・ルーも驚いて、顔を上げて少女を見つめていた。そんな視線を受け、再びルーに向けて微笑む姿は、普通の少女だった。


 ゴードンと少女の関係が気になるところだが、この状況をみるかぎり不本意な事態に陥っているのだろう。---先日、南門に現れた噂の少女ならば尚の事。様々な情報を聞き出しておきたいところなのだが、ルーと少女の状況から聞き出す事は難しいだろう。少女とゴードンが魔族だという情報だけで、満足しておかなければならない。---今後協力をしていくのならば、情報を急いで聞き出そうとしてはならない。まずは、友好な関係を---。




「---くわぁっ」

 足元には、全く関係ないとばかりに大あくびをするシン・・・と、馬車の走る音だけが、響いていた。

私の中のサブタイトルは、ばかっぷるでした・・・ちょっと楽しかった。


評価いただいてありがとうございます。

完結を目指して投稿していきます。ブックマークしていただいて感謝で一杯です。

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