24.会いにゆく
おはようございます。ルークスです。
僕は今、家族で朝食を摂っている最中です。ですが、頬の緩みがとまらず、ニコニコしているようです。隣には、少し体が痛そうにしてる兄様がいます。そして不思議そうな顔をしている母様がいて、複雑そうな顔をした父がいます。
夜の内に、僕は父に兄様が襲撃された原因を話をしました。襲われてしまった兄様には申し訳ないが、僕は彼女に会いに行くのだと!と父に宣言した。
---だって悪い虫が付く前に迎えに行かないと!
と僕のあせる気持ちは誰にも分からないだろう。・・・魔族とは嫉妬深い生き物なのだ。その記憶がある僕としては、あの街の騎士達が彼女の姿を、あわよくば!といろいろ考えていると思うと、どす黒い感情が湧き上がる。
・・・さて、どうしてくれようか。
家族で朝食を摂りながら、僕はそんな事を考えたり、少し大人になった彼女の姿を心に思い浮かべ、クスッと笑い、百面相状態だったのだろう。
「---何か楽しい事でもあるのかしら?お母様にも教えて下さいな」
と・・・。もちろん秘密にするつもりもないので、
「僕の会いたい人が、街にいるのです」
とちょっと、恥ずかしいながらも素直に答えておいた。
「あら、まあぁ!」
母様は、急いで席を立ち、僕を急かせた。
「駄目よ!そんな格好じゃ、もっと素敵な服に着替えてきて~」
腕を引っ張られるように、部屋に連れ戻され、僕は良い家の子息・・・実際そうなんだけど、洒落た貴族の装いに着替えされられた。
---装飾品は止めてくださいとお願いをした。街で物取りにあうのはごめんですからと・・・。
今日の護衛は兄様・・・体中が痛いらしいので、回復魔法を掛ける。
・・・今すぐに会いに行きたいのに、兄様以外の護衛では、会いにいけないからね。
念の為、兄様の腕輪の魔石に魔力を補充し、いざ出発。
---貴族の服装なので、本日は馬車での移動となりました。回復させたとはいえ、兄様の体調もあるので丁度よかった。
僕の足元には、シンが寝そべり、あくびをしている。
---忘れてはいないはずないのに、シンは嬉しくないのか、そっけなかった。
昨夜、彼女が近くにいると思うんだ・・・と話をしたのだが、ペロリと僕の頬を舐めた後、寝てしまった。
兄様と御者の人が対応し、馬車は街中に入る。---滅多に通る事のない領主の馬車。普段乗るのは母様だけだが、街を訪れることはなく行きかう者の視線を集める。
ゆっくりと、街を走る馬車の速度にあわせ、進む先に・・・僕の目指す魔石商があった。
---静かに馬車を止め、御者が馬車の扉を開けた。
この扉の先に、彼女がいるはずなのだ・・・と僕は、ゆっくりと馬車を降りた。先に下りた兄様が、従者の様に、魔石商の店の扉に手をかけている。僕はゆっくりと頷くと、扉を開けようと腕を引いたのだが・・・扉は開かなかった。
「---??留守か?」
兄様は眉を顰め、御者に裏に回り店を開けるよう言ってくるように指示をだす。
---・・・はぁ。と僕は少し緊張気味だったのか、息を吐きだし、周囲を見渡した。
注目浴びてるな・・・とグルリを視線を流す。ふっと、一輪の花に眼が止まった。花かごを持った子供だ。・・・今の僕と同じくらいの少女。
籠の中に入った花・・・それは彼女の好きな花。白い5枚の花びら・・・で中央が薄い水色をしている。小さい花。
僕は、花売りの少女に近づき、籠ごと花をもらい受けた。数種類の花に囲まれた中にある、彼女の好きな花・・・。僕は、籠の中に手をいれ、白い花にそおっと触れる。・・・魔石で覆う事は出来ないが、魔力を纏わせるくらいは出来る。僕の作った婚姻の魔石・・・と同じ花。
僕は、再び籠を持ち、ニッコリと笑みを浮かべ店の扉の前に立った。厳しい顔をして、扉を睨みつける兄様と並ぶ。
カランコロン・・・といつものベルがなり、店主が顔を覗かせた。
「---今日は休みにした。・・・帰る気はないのか?」
「申し訳ないが、入れてくれないか?」
対する兄様はとても威圧的・・・もっと穏便にしてほしい。
「---はぁ。・・・入れ」
店主は、バリバリと頭を掻くと、仕方がないとばかりに、ため息を付き扉を開けた。
「何のようだ・・・」
魔石商に来たのだから、魔石を買いに来たと思うのが普通だと思うのだが・・・男は、花籠を持った僕を睨みつける。---いかにも、身なりを整え、女性に会いにきたと言わんばかりの格好なのだろう。実際そうなのだから、仕方がない。
「---これを、彼女に渡して欲しいのです」
と花篭を差し出すと、僕と花篭を交互に視線を動かした後、こう言った。
「・・・年齢が合わないと思うだがね?---ここ数日困っている。街の男共が店にやってきては、家に滞在してる女性に合わせてくれ!と・・・いい加減にして欲しいんですがね」
と、半ば怒りを含んでいた。
僕は、ニッコリと笑みを浮かべ、店主に花篭から一輪の花を差し出した。
「---これを、『お姫様』にお渡し願いますか?」
店主はさらに、眉間に皺を寄せ、凶悪な顔付きになったが、全くもって怖くはない。そんな脅しは通用しない。
「渡して頂けるのであれば、今日は帰り、また後日お伺いします」
僕は、畳み掛けるように、ニッコリと笑い掛け、店主にお願いした。
「---わかった」
苦虫をつぶしたように、引き取り願えるのならば・・・と店主は、店の奥に行く。僕はその姿を確認し、店を出ようと兄様が扉に手をかけた・・・。
「---うわっ!!」
後ろから服を引っ張られ、首元に後ろから腕か絡みつく・・・。
「・・・なっ」
兄様が扉に手を当てたまま、固まっていたが・・・そんな事はどうでも良いのだ・・・色白の腕、後ろから垂れ下がった水色の髪・・・、この香り---シルクリース様。僕は声も出せず、ただそうしていた。
---声をだしたら、夢が覚めてしまう。
ただ、身動きする事も出来ず、されるがままになっていた。
「---また、私を置いていくの・・・?これは夢なのかな・・・?」
・・・水?首筋に水滴が落ちてきた。これは涙・・・。
「・・・僕も夢じゃないといいと思う。ねぇ、---シルクは夢だと思う?」
僕の頭の上で、ブンブンと首を振り、ぐずぐずと鼻をすすりながら、小さな声で言った。
「---夢じゃ・・・いやだよ」
「うん、僕も嫌だな・・・」
僕は、年上の女性に後ろから覆い被さるように抱きつかれた状態で、二人でぐずぐずと暫くしていた。
「---なぁ、ルーそろそろ、紹介してくれるか?」
呆れ顔の兄様が僕をジーッと見ていた・・・これは、ハズカシ過ぎる。
「---何処にも行かないから!手を離して・・・」
そおっと、首に回された腕を解き、僕は彼女と向き合った。
---涙で顔がぐちゃぐちゃだ・・・。
なんて思った---でも、彼女はシルクリース様は僕の知ってる昔のままだった・・・。泣き虫で、ちょっと我がままなお姫様---僕には特に我がままだったなぁ。なんて思い浮かべ、クスッと笑ってしまった。
「---笑わないで」
とジロッと睨んだが、怖くはない。
「変わってないね・・・昔のままだ」
僕は、持っていたハンカチを差し出し、シルクリース様の涙を拭く。クスッと笑みを浮かべたシルクリース様にホッとした。
僕は、スッと姿勢をただし目の前の彼女を見上げる。シルクリース様のしっかりと立ち上がった。
「私はルークス・ヘルヴォルトと申します。以後お見知りおきください」
貴族が取る礼をすると、シルクリース様は右手をスッと差出し、僕は軽く口付けをする。
シルクリース様は、涙を堪えるようにクシャリと顔を少し歪めたが、口元に笑みと浮かべた。
「シルクリースです・・・もう、ルーフェストじゃないのね・・・」
「---ごめん」
僕は、いろんな思いを込めて、一言だけ告げた。
「---でもいいわ、もう絶対に離れないんだから!」
飛びついてきたシルクリース様に、僕は再び抱きつかれた。今度は、抱き上げられ膝の上・・・ズーッと頬ずりしている状態。
兄様に、ジーッと見られ、店主には睨まれ・・・僕はとても恥ずかしい。
シルクリース様が、この状態に早く気付いてくれるといいのだけれど・・・。
---膝の上に乗せられるって・・・僕は、早く大人になりたいと願った。
あまりきつく抱き締めないで・・・胸が当たってるから---。
僕は意識しない様にしていたが、全身真っ赤になっていると思う。
ブックマークしていただいた方々、評価していただいた方、ありがとうございます。
テンション上がりまくりです。完結できるように頑張ります。




