22.兄様街中で襲われる
「---ううっ・・・」
体中がギシギシと音を立てている気がする。・・・私は身を起こそうと体を動かすと、あちらこちら痛みが走った。
動かない体ではなく、目を開け情報を得る事にし、何があったのか・・・と考えを巡らせることにした。
---ここは、自分の部屋か。いつ帰ってきたのか・・・。
そんな事を思い、自分は何をしていたのか・・・と思い返す。
そう・・・ルーと別れた後、私は駐在所に向かったのだ。東門と南門・・・そこで訓練を終え、東門に戻る途中だった。
何時ものように、夕暮れ前の中央広場の喧騒の中をすり抜け、東門を目指していた。夕暮れ前の皆が忙しくしている時間帯---不意に後ろから声を掛けられたのだ。
真っ黒いフード付きのコートで全身を隠した者に・・・。
「---その魔力の持ち主を・・・私に返しなさい!」と・・・。低く絞り出すような冷たい声---それは女性の声だった。
---なんの事だ、と振り返った時には、「・・・うっ」と胸に衝撃を受け地面に叩きつけられていた。
覚えているのは、振り返りぎわに見た瞳・・・眉を寄せ憎しみの色を纏っていた濃い紫色が涙で霞んでいた・・・と。
そして---私は意識を失ったのだろう・・・家の壁・・・屋根・・・飛び上がる黒い人影と空を最後に、記憶が途切れていた。
次に目を覚ましたのは、東門の駐在所だったか。例の東門騎士団長ギレンが、居た。
---どーやら、東門に担ぎ込まれたようで、騎士達に舘に伝令を走らせたりし、駐在所が騒がしくて大変だったと、顔なじみの騎士に渋い顔をされた。
「護衛についてやろうか?」と言われる始末だ・・・。一人で領地とは言え、一人行動をする領主の息子である私は護衛対象になるのだろうが、・・・王室騎士団に所属する近衛として護衛されるのはいかなるものかと---しかし、この有様だ。ため息を一つ吐きだし、妥協する事にした。
「---そうだな、次からは共に行動してもらおう、鍛錬をする際は声を掛ける」
減らず口を言うと、ヒクリとニヤリと笑っていた顔をひくつかせた。そんな遣り取りの後、私は駐在所が用意した馬車に乗せられ舘に帰ったのだ。
街ではそれなりの騒ぎになっただろうが、馬車の中には、護衛騎士を数人連れ、目立たないように移動をした。
移動中に確認した事は、私を襲撃した黒ずくめの者は、すぐさま逃亡をした事により、目撃者も少なく一瞬の事だったので屋根に飛び上がった後、どうなったかは、目撃者は居ないと意言う事だった。何か覚えている事は無いか・・・と問われたが・・・濃い紫色の瞳だけだった。
だが、私は「何も・・・気が付いたら吹き飛ばされていた---」と答えていた。
そう、あの言葉が気になっていたのだ。
魔力の持ち主・・・ルーの事だったからだ。黙り込んだ私は、そのまま館の自室に入り、寝台に体を沈めると意識が遠のいていく。思ったより衝撃が強かったようだ。
東門に居る医者の話では、ただの打ち身であるが、地面に叩きつけられた際の衝撃が全身にわたっているようで、暫く養生をするようにと言われた。
「---どんな技をかけられたんだ・・・」とギレンに聞かれたが、明確な答えがない以上隠匿する事にした。
---攻撃魔法だった、などとはいえるわけが無い。
ルーからもらった腕輪が何らかの効力を発揮し、吹き飛ばされるだけで済んだのだと。私はどこにも触れられていないのだから・・・。
そして、再び眠りにつき・・・この痛みだ。
呻く声を聞いたのだろうか・・・コンコンと扉を叩くと、静かに扉が開く。静かに近くにやって来たのは、やはりルークスだった。
「---起きてますか?兄様・・・どこか痛みますか?」
と寝台の傍により、声を潜めながら言う。
起きているのに、わざわざ小さい声で聞く事でもないだろうに・・・と思い少し笑ってしまった。---余程心配をかけてしまったようだ。
「笑い事じゃないです。皆心配したんですから!」
頬を膨らませ、むくれた顔も可愛いなぁ・・・と思っていると、今度は顔を真っ赤にして怒られてしまった。---本当に、かわいらしい弟だ。
ひとしきり、笑った後、水を一杯差し出された。
「---で、何があったんですか?」
---東門のギレンから報告があがっているだろうに・・・それでは納得がいかないようだ、と苦笑いを浮かべる。
「何も目撃していないなんて事はないですよね・・・兄様が?」
と言われてしまった。はぁ・・・と息を吐きだし、仕方が無いと話事にした。---ルーに関する事を黙っている訳にはいかないのだから。
「『---その魔力の持ち主を返せ』と言われた・・・濃い紫色の瞳をした女だった」
「その魔力・・・??」
ルークスには心当たりが無いようだが、私はこの腕輪の事だと思った。そっと、腕輪に触れる。私が腕が動いたのを見ると、ハッとしたように驚き黙り込んでしまった。
そんな長い時間ではなかった、私が水を一口飲み喉の渇きを潤していると、何かを決意したルークスの瞳がこちらを見ていた。
「---兄様、きっと私の魔力を込めた魔石を持った事によって、攻撃をされた。・・・相手は魔族だと思います。私が、街に行けば姿を現してくれると思うのですが・・・」
「・・・それは駄目だ!」
私の反対する声も、聞く気はないようで・・・少し困った顔をしたルークスが私に疑問を投げかけた。
「---街には紫色の瞳をした女の人は、多いのでしょうか??」




