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21.噂に興味の無い人

 塔に登った翌日から僕は、書庫に入り浸りになっていた。『魔素の森』に入る為の準備をし、『光の泉』の記録を探す為だ。

 その間、兄様は魔石商に腕輪とイヤーカフスを取りに行ってもらった。


 腕輪の一番大きな魔石には、護の魔法を掛けた。ある程度・・・僕が込めた魔力量と同等の攻撃魔法の魔力を受け止められる様になっている。数日かけて最大限まで魔力込めたので、魔族からの本気の一撃を一回であれば耐えられるくらいにはなっている・・・はず。


 小さな魔石には、一度だけ物理攻撃を弾く魔法と、回復魔法を込めた。


 シンのイヤーカフスにも、護の魔法、物理攻撃を弾く魔法、回復魔法、その他にただ魔力を込めた魔石を出来るだけ用意した。これはシンだけでなく、僕が使う事が出来る。僕は魔力さえ補充出来ればなんとかなるからだ。


 僕自身は、書庫に入り浸っている間、使わない魔力が勿体ないので、こっそりと魔石を作ってる。これは僕自身が使う物と、父様にも渡す予定だ。


 そんな日々を過ごしていたのだが、兄様が痺れを切らし、僕を外に連れ出す為にやってきた。



「---騎士達が色めき立っているから、気を引き締める為に鍛練をする。ルーもたまには姿を出せ」

 と言ってきた。既に鍛練に行く格好に着替え、片手には僕の練習様の剣を持っていた。


「色めき立っているって・・・、どうしたのですか?」

 僕は、自分の剣を受け取りながら、生き生きと皆に鍛練を付けに行くと言う兄様に尋ねた。

「---街に、美少女がいると、皆が街周辺の見回りを希望しているのだ。一目だけでも、見てみたのだそうだ」

 見回りをなんだと思っているのか、と兄様は大層お怒りの様だ。

「そうなのですか・・・」

 僕には、興味の湧かない話だ---。僕の中での、美少女は既に決まっている。心を締め付ける程の存在は、ただ一人なのだ。遠く、森の奥にある泉に意識を飛ばし、泉の光を浴び笑みを浮かべ僕を呼ぶシルクリース様の姿を思い浮かべる。ふふふっと思い出し笑みをこぼす。

「はいはいルーには、興味ない事だったな」兄様は、少し呆れた様に苦笑いしていた。

 ・・・これはもうどうしようもないのだ。魔族だった頃の記憶を持つ僕の、一度失った喪失感と焦り。

 笑顔を思い浮かべると胸に広がる暖かい気持ちと、直ぐに会いに行けない苛立ちとで、複雑な感情が入り混じるのだ。悔しいやら、情けないやらで、苦笑いを浮かべるしかない。


「興味はないですね。兄様はどうなのですか?」

 この様子だと、美少女に一目会ってみたいと思うよりも、ダラけている騎士達を鍛える方に興味が、いってしまっている。

 兄様が、恋に落ちる時はどんな相手なのか・・・普通の令嬢では、荷が重い気がする。

 またまだ、恋にはうとい兄様に少しホッとしていた。僕はもう少し兄様に甘えていたいらしい。僕も兄様が大切で大好きだ・・・ちょっと知らない女の人にとられるのは、焼いてしまうかもしれない。


 自分の思考に、思わず苦笑してしまった。・・・そうこうしているうちに訓練所につき、噂話に花を咲かせている数人を見た兄様は、大きな声で一喝入れると訓練場中央に躍り出て、剣を構えていた。


 そんな兄様は、この後街の駐在所に行き、騎士の人達に渇!を入れに行くんだそうだ・・・。兄様は物好きだなぁ・・・と僕は思ったが、あえてとめる気はない。



「---これを、腕に嵌めていってください。使う事はないと思いますが・・・激しい訓練の時は外した方がいいと思いますが、いろいろと防御魔法をかけてあるので、護身の為にも身につけていてください」


 何日かかけ魔力を補充した腕輪を兄様の腕に嵌め、そう伝えた。---ものすごく驚いた顔をしていたが、直ぐに笑顔になり、腕輪にそおっとふれる。


「ありがとう・・・大切にする」


 見た目は、普通の魔石を嵌めてある腕輪だが、防御力の高いものだ・・・。この街では必要ないと思うのだが、『深緑の森』に行く際や、魔獣の討伐に必ず身に付けていってほしいのだ。


 その日兄様は、街の中の東・南門の駐在所に行き、訓練する予定だと、僕に話し館を出て行った。










 僕は剣の訓練の後、シンと共に館の裏手にある池の傍に来ていた。もちろん、魔術の訓練の為だ・・・いざという時に攻撃魔法、防御魔法を使用できなくては、守れるものも守れない。

 人目に付かない場所でなら、魔法を使っても良いと、父に許可を取ってある。

 いつ訓練を行っているかは、兄様には秘密だ。---絶対、見に行く!!というに違いないのだ。それはいいのだが、困るのは魔法で攻撃を仕掛けてくれ!と言われるのが困る。

 兄様は、剣術を得意としていて、鍛錬を欠かさないでいる。そして、上を目指すしている。・・・絶対に、攻撃魔法を剣で受ける!とか言い出すに決まっている。


 勇者と呼ばれる者達がどんな攻撃で、魔族を討伐したのかは、分からないが、剣術が優れていたのは確かだろう。魔力の弱い人間は、剣で対抗するしかないのだろう。


 胸に手を当て、手の中に魔力が集まるのをイメージし、前に突き出す。炎の玉が池の中央まで勢いよく飛び、池の中央に飛び込む。水蒸気の煙を上げ、炎の玉は消える。


 ・・・まずは、コントロールだよね。


 炎の玉、水の玉、雷の玉・・・を作り同じ事を繰り返す。それを数回繰り返し、暇そうにしているシンに向かい、水の玉を解き放つ・・・。

 もちろん、威力は最小限で・・・シンの避けた水の玉は、再びシン目掛けて動きを変える。避けるシンを追撃するよう水の玉を制御しつづける。こうして、少しずつ僕は、魔力の制御を正解に行い、威力と速さを磨いていく。


 ---・・・夜、部屋でなら、水魔法なら使っても大丈夫そうだ。


 ある程度の制御が出来るようになった僕は、館に戻る事にしたのだが、途中ものすごい速さで馬を走らせ舘に向かう騎士に出くわした。


 ---兄様が、何者かに襲われたとの、一報を告げるものだった。



・・・サブタイトルって難しいです・・・。

今更ながらいらないかな、と思うくらいには。

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