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20.招かざる訪問者

南門騎士と兄様視点です・・・。

「お嬢さんは、何処に行くのかな?」

 南門・・・『深緑の森』に面した門にすっかり日が昇りきった頃、濃い紫色の瞳をした色白の少女が訪れた---年は、17・8くらいだろうか。

 黒に近い深緑色のフード付きのコートで全身を隠し、南門に立っていた。


 門番を担当している騎士は、戸惑いを隠せないでいる。この門を使うのは、冒険者か、傭兵、騎士しか居ない・・・この時間に出て行く者が居たとしても、出たのを確認していない場違いな、少女。目の前に立つ騎士に、臆する事にも無く堂々とした佇まいに不可思議な感覚を覚えた。

 この門の先には、『深緑の森』しかないのだが、少女が到底その方角から来たとは思えない・・・。では、他の街から来たのなら、北門にたどり着く。



 もちろん、身分を証明するものを持たない者を少女だからと言って入れる訳には行かなかった。


 まず行き先を聞く事にした。その間に、門の上から様子を伺っていた仲間の騎士が、少女が入門出来ない状況にあると察し、南門の責任者の元に知らせに走った。


「知り合いに会いに行くの、入れないの・・・・?」

 悲しそうに瞳を潤ませ、怯えた様子を見せる。・・・だが、これは規則なのだ、街を守る為にも例外はあってはならない。


 奥の部屋に案内され、『知り合いの身元を引き受ける者が現れる此処で待つように』というと少し少女は笑みを浮かべた。


「お嬢さんが会いに来たのは誰なのかな?」

「魔石商をしているゴードンよ?ご存知かしら?」


 出来るだけ優しい口調で騎士が聞くと、ゆっくりと首を傾げて答えた。

 この時、騎士達がホッと息を吐き、少し胸をなでおろした。少女が口にした、『魔石商のゴードン』という男は確かにこの街の住人で、あまり目立つ事を嫌うようだが、腕っ節の強い頼りになる男だったからだ。街の住人の知り合いという事であれば、『監視』から『保護』と少女のこの部屋での意義が変わるからだ。



 すぐさま、一人の騎士があわてて、このゴードンに身元の引き受けを頼みに走った。




*****



 私は、魔石商に依頼したものを受け取るため、東門にある騎士団駐在所に馬を預け、魔石商の店を目指し歩いていた。

 依頼していた魔石を受け取りにやってきたのだ。本来であればルーも・・・と思ったのだが、今は書庫に篭り、過去の文献を読みふけっている。私も協力していたのだが、ルーが行くと二人で行く事になり効率が悪いと、一人で行ってきてくれと・・・私に頼んできた。---もちろん愛すべき弟の頼だ、快く私一人で街に赴いたのだ。


 丁度、店が遠く視界に映ると、騎士の後を追いかけ、南へ走る魔石商店主の姿があった。



 カランコロン、と音ともに扉を開くと店には、この間の店員が柔かな笑顔で対応してくれた。

「いらっしゃいませ。ご依頼頂いた品物はできています」

 と、ブレスレットと耳飾りを取り出した。

 その出来栄えに満足し、早々に金を払い店を後にしよう、と扉に手を掛けた。


 ルーの作った魔石を、早く持ち帰らなければならなかったのが、この店の店主の事を聴いておく事にし、扉に手を掛けたまま振り返る。


「先程、随分と慌てて騎士の後に着いて行ってたが、どうしたんだ?」


「---南門から騎士が慌ててやってきましてね。なんでも、店主の知り合いの少女が南門に来ているから身元引き受けに来てくれ!と言われ、慌てて出かけて行きました。いや~あんなに慌てたおやっさん見たのは、初めてですよ」


 と店番の青年は、愉快そうに笑っていた。この青年は、普段ちょっと残念な行動をするので、致し方ない気もするが、余程慌てていたのだろう。



「---そうか、では『良い仕事をしてくれた。また頼みに来る』と伝えてくれ」

 と私は、店を後にする事にした。




 丁度、中央広場に差し掛かった時、南門の方角から魔石商の男が早足でこちらに・・・店に向かって歩いていた。身元引き受けに行ったのは、この少女なのだろう---全身を隠す程長いコードで身を包み、深くフードを被った少女は腕を引っ張られ、走るように付いて来ていた。

 魔石商の男は、とにかく店の中に入りたいのか・・・私に気付かない。---だが、少女は私とすれ違う際に、目を合わせた・・・まるで何かに気付き振り返った・・・ように、瞳を大きく開き、私をみたのだ。


 濃い紫色の瞳・・・フードからするりと零れ落ちた水色の髪---明らかにこの街の者ではない様相をしていた。


 何か不思議な感覚を覚えたが、・・・魔石商の男と少女が店に入っていくのをだた見送っていた。







 私は、何時ものように東門に馬を預けていたのだが、対応してくれた騎士の一人が顔を引きつらせていた。・・・私の知らない顔なのだが、何かあったのかと思っていると顔なじみの騎士がやって来た。


「---よお、先日は世話になったなぁ」と・・・いや何もしていないが、何があったのか?と考えを巡らせていると、とっても渋い顔をし始めた。


「オイオイ・・・忘れてのかよ。この間の騒ぎの後の訓練がきつくてなぁ・・・ほんと勘弁してくれよ~」

 なるほど・・・先ほどの騎士の態度はそう言う事かと納得したが、これでも軽く済んでいるのだと私は思っている。

「---そうか、まだ訓練が足りないようなら言ってくれ。次は私も参加しよう」

 先程の騎士といい、この東門の騎士達の気持ちが引き締まったのなら、多少気が晴れたというものだ。



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