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19.揺れる・・・

 人間族の街で暮らすゴードンは、魔石商をして人間族での噂や人間族の王族、貴族の動向を調べ、報告しに城にやってくる。

 最初は、ただ人間族に興味があり、暮らしていただけだった。

 もう11年経ったのだろうか・・・私と知り合った事を切っ掛けに、彼は城に上がり人間族の主に・・・勇者と言われる者の行動、魔族の住むこの森に一番近い人間族の領地の事を報告してくれている。





 半月程前に、緊急の連絡が入った。『深緑の森』を超え『魔素の森』の上を飛べる様に、強力な護りの魔石を持たせた街の鳥が、城にきた。

 街の鳥を魔力で縛り、魔城を目指す。

 今まで緊急の連絡など無かった---その10分後、城に魔力の多い者が緊急に集められ、もたらされた情報に騒然とし、皆一様に向ける事の出来無い憤りを感じた。

 もちろん、私もその一人だっだ。




【『光の泉』に負の感情をもらした勇者が、街に滞在する】---と。

 城が---揺れ動いた。ゲンドゥル侯爵が、ガタッと椅子を揺らし立ち上がるのと同時に・・・。


「---今なんと!」

 声を---いや、膨れ上がる魔力を、感情を抑えきれず、部屋中の物が、カタカタと揺れ動く・・・。

 その、怒り震える魔力にこの場を抑える様言う者はない・・・。

 彼---ゲンドゥル侯爵の怒りは最もで、城中の者が、心を痛め悲しみに落としいれてた出来事が関係していた。

 ・・・嫡子、ルーフェスト・ゲンドゥルの死に追いやった人間が、この国の隣・・・人間の街に現れるのだ。


 でも、魔族の王である父は、この怒りのまま『魔素の森』を超え『深緑の森』を抜けさせる訳にはいかなかった。

 魔族を治める者として、また旧知の友を危険に晒させる訳にはいかなかったからだ・・・。

 この時、ゲンドゥル侯爵の様相を見て、私と同じ様に怒りと憤りと感じ、許す事の出来ないと心の奥に誓っていたのだと・・・知った。

 ---今まで、怒りを抑え感情を見せ無かったのだと。


 ---私は、この11年・・・ゲンドゥル侯爵と向き合う事が出来なかった。

 ・・・とても良く似ているのだ、ルーが一緒に居た頃は思っても見なかったのだが、ちょっとした仕草が、ふっとした表情が---そして、苦しくて泣きたくなる。

 彼を失い、私は強くなると決めた。---ただ守られるだけでは、大切な者を守る為には自分自身が守られる対象であってはいけないと・・・剣を、魔力を磨いた。


 父は、今は亡き友の息子に、娘の命を救われた者として---闇雲に行かせる訳には行かなかったのだ。


「---待つのだ。まだ、続きがある、先ず座れ!」

 予め部屋の各所に配置しておいた騎士数名が、王の言葉でゲンドゥル侯爵の後ろに立ち、着席を求めた。しぶしぶと侯爵は指示に従ったが、普段落ち着き払った瞳が、強く父をみていた。・・・なぜ、とめるのかと・・・行かせてくれないのかと、語っていた。


 ---今すぐに、その首を取りに行きたい。


 侯爵の目が・・・そう語っていた。


「『光の泉』周辺の警備を強化し、その先へ行かないよう各方面へ伝達をするように。---それから人間は、森に入るのが目的ではなく。我らを警戒している人間達の剣術指導をするのが目的のようだ。---余計な事はするな」


 父はそう言い、射殺さんばかりの視線を向けるゲンドゥル侯爵に、最後の言葉向けた。・・・ギリギリを歯を食いしばり、暴れる魔力を抑えている。


「---どけ!」


 椅子を跳ね除け、部屋を出ていった・・・人前で感情を露わにするのを見たのは、11年前の---あの日以来だった。

 侯爵はその日、王城にある執務室から出る事はなかった。


 私は、此処に居るだけを許された身として、ただ涙をのみ、怒りを抑えるしかなかった。






『光の泉』の警備が強化されている中、私は何時ものように泉に行った。護衛の騎士達には嫌がられていたが、私は守られる程弱くは無い!そう言い、通い続けた。

 ゴードンが姿を現し、久しぶりの再開だ。

 緊急連絡が半月程前にあったが、姿を現したのだから緊急性がなくなったのだろうと、笑みがこぼれた。



 共に、城に戻った私は、服を着替え父の執務室に向かった。---執務室では、父やゲンドゥル侯爵、騎士団長がおり、報告を聞いている事だろう。こうしてゴードンがやってくると幼かった頃の私はこっそり部屋の片隅に潜り込みよく聞き耳を立てていたものだ。もう、今は昔のようには行かなくなったので、別の方法で参加する。


「---失礼します。お茶をお持ちしましたわ」

 軽く小さく音で扉を叩き、侍女が用意したお茶を持ち私は静かに入室した。お父様は気付かないようだった。


「---・・・以前、シンという名のシルバーウルフを探していると・・・」

「---!ガチャ」

 シルバーウルフのシン・・・押してき配膳台を揺らし音を立てて、4人の目が私に向いた。父は、頭を振った後、私に退出を促したのだ・・・。


「いや!いやよ---お父様!---聞いては駄目なの・・・?ズーッと探しているのよ。・・・今聞けないなら、私がゴードンの所にいけば会えるわよね!」

 そう、ゴードンが見つけたのなら、直接人間の街に行って確かめればいい!教えてくれないのなら、私は直接行って確かめる。


「街に行って、確認するわ」

 父を睨みつけ、私は宣言すると、父は深くため息を付き、同席することを許してくれた。



 コロコロッとゴードンが、机の上に出したのは、魔石の破片。変化したシルバーウルフを連れた子供と護衛が持ってきた魔石の欠片だった。その子供は、シルバーウルフをシンと呼び、使獣契約を行っていたと、ゴードンは話していた。


 ---・・・私は、魔石の欠片に視線を奪われていた・・・だって、その魔石は。


「---ルーだよ、この魔石、ルーの魔力・・・だって、この・・・魔石を同じ」


 胸のあるンダントを握り締める・・・私の目の前には、色をなくしたゲンドゥル侯爵が鋭い眼差しで魔石を見定めていた。


「---ですが、この魔石を私の店に持ち込んだのは人間です。使獣契約を行ってるのは連れの子供で、とても仲良く可愛がっているようでした。驚く事に、従属の魔道具は使われてはいません。人間が魔獣を従えるには、従属の魔道具を使いますが、その子供は使獣契約をしていました」


 あの憎むべき人間が街を去った事、その不思議な子供に出会った事、人間と使獣契約をしているシルバーウルフがいる事を、報告に来たのだ。


 結局、ゴードンには、この子供とシルバーウルフの事を調べ報告するように指示がだされた。・・・情報が少なすぎると。


 次の日には、ゴードンは国を出て、人間の街に戻っていった。




 ---私は、ルーフェストの父であるゲンドゥル侯爵と話せていない・・・あの日、ルーが私の元を去ってから、目を合わす事が出来ないのだ。この魔石の魔力の事を、シンの事を、考えている事を知りたい。でも、ルーフェストを置いて逃げた私を恨んでいると思うと、声を掛ける事が出来ずにいる。



 ---私が・・・できる事をする。

 ねぇ、私はどうすればいいの?ルーが居なくなって、何をすれば良いのか、わからない・・・。




読んでいただいた方々、感謝します。

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