17.父
昨夜、二人が屋敷を、抜け出すのを私と妻は黙って見守る事にした。
ここ、半月ばかり我が愛する末の息子に違和感を感じたが、角兎の討伐から息子が下を向き私達と目を合わす事をしなくなった。。---少し大人びた、物悲しげに見える事が多くなった。
事の始まりは---そう勇者ラインハルトを、我が領地に招いたからだったのかもしれん。
我が領地は、魔族を終始警戒をしなければならない場所にある事から、士気をあげる為『勇者ラインハルト』を招き、騎士達の訓練を行う事にした。より強い相手と戦い己を鍛え、高みを目指さねば技術は衰え、弱い者の集団の集まりにならないよう、より目標となる人物をと思い招いたのだ。
・・・それからだ、末の息子ルークスの様子がおかしくなった。最初は、季節変わり目の体調不良かと思い様子を見ていたのだが、そんな安易な考えでは済まない事だった。
不意に感じる魔力。それは、今までの物とは比べ物にならない程の魔力量だった。そして、我が愛する末息子は涙を流しながら眠っている事が増えた・・・。
本人は私が夜寝顔を見に行っている事など気付いていないのだろう・・・翌朝、少し赤い目をしているのだが、何食わぬ顔をして笑顔を浮かべ挨拶をするのだ。
泣きながら寝ている姿を見たときは、揺すり起こし、何があったのか問いただしたい衝動にかられた。だが、妻に止められたのだ。『・・・話してくれるまで待ちましょう』と言われたのだ。
だが、とても心配でならない。事細かに聞き出すのは本人も嫌がるであろう・・・と思い、妻の言葉を思い出し、物分りの良い父親を演じる事に務めている。
幸いな事に、長男が勇者と共に戻ってきており、末息子と行動を共にしているので、影ながら見守るよう、言ってある。
---任せてはいるのだが、私がいつも一緒に居たいのを我慢しているにもかかわらず、『休暇の間中一緒に居るので任せてください!』と宣言できる長男が羨ましいなどと、絶対に思ってはいない!
私は今、夜中に部屋を抜け出した二人が戻るのを、今か今かと待っている。
東の空が明るくなり始めた頃、二人が戻ってきた。---二人の距離がとても近くなっていた。
---・・・物凄く羨ましい!!
平然と父親らしく、夜中に家を抜け出した事を注意するのだ!と思い腕を組み正面にたっただが、
「申し訳ありません、父上。ルークスと散歩に行ってました」
と、にこやかに先に言われてしまった。こうなっては、とやかく言う父親は、ウザったい存在に成りかねない。ここはグッと堪え、言葉少なく返すのが良いだろう。
「そうか、余り心配をかけるな。---何事もなければよい」
聞きたいことは多々あるのだか、今この場で聴くのは得策では無い。
「父上、これから私達は一緒に寝るので、一旦部屋に戻ります」
と、ニヤッと私に挑発的な笑みを浮かべて言ったのだ。
なんだと。これから二人で寝ると宣言し、邪魔をするなと・・・。
「---ゆっくり休みなさい。目が覚めたら私の部屋に来るように」
私の眠ることの出来なかった夜をどうしてくれるんだ。
私も、ルークスと寝たい!!とモヤモヤとする気持ちを知ってか知らずか、二人は私の前を通り過ぎていった。
ポンポンと、後ろから肩を叩かれ振りかえると、少し困り顔の妻がいた。
「私じゃあ、ご不満かしら?」
と首をかしげニコリと微笑んだ。
もちろん不満などあるわけがない、愛する妻の腰を引き、頬を寄せ、部屋に戻る。
では、私達も休むとしよう。




