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14.僕の大切な・・・

「兄様は、今日の予定は決まっていますか?」


 ラインハルトは遠く城下にある街は帰って行ったのだ、色々確認しておきたいことがある。でも、一人では外に出ることは許可はおりないので、お手軽で申し訳ないが兄様に頼む事にした。


「---特に予定はないが、訓練を怠る訳にはいかないからな。それが済んだら予定はないよ」


 よし!じゃぁ、お願い聞いてくれるはず。


「『深緑の森』見に行きたいんです。遠くから見るだけでもいいので連れて行ってもらえませんか?先日読んだ本の中に、『深緑の森』の記述があって、父様はこの森から出てくる魔獣と戦っているのでしょう。僕も知らないといけない事が沢山あるのだから、しっかり見ておきたいんです」


 子供の好奇心一杯だよ!を前面に出し、兄様にお願いをした。


「-----いまは駄目だ」


「・・・駄目なの?」


 兄様は、ちょっと困った顔をして、教えてくれた。


「・・・ここ数年、森の魔獣が凶暴化しているようなんだ。ここ数日も年に数回程しか森から迷い出る事の無いはずの魔獣が、姿を現している。だから今は無理なんだよ」


 だから、この前も森に近づくなって、言ってたのか。

 もともと、魔獣は出会いがしら襲われる事はあるが・・・どういう事だ?



「・・・そうなのですか、---皆、騎士団の皆は大丈夫なの?」


「ああ、大事にはなっていないから安心してくれ。---大丈夫、俺達はその為に訓練をしてるんだからな」


 兄様はニヤリと笑って、僕の腕を取り歩き出した。


「よし!お前も訓練するか?部屋に閉じこもりっきりじゃ、体がなまっただろう?」


 兄様の足取りはとっても軽く、楽しそうだった。


 ---ええっ、僕は、全然楽しくないよ。


 抵抗むなしく、ひきづられる様に訓練所に連れて行かれた。そこには、思い思いに自己鍛錬を行う騎士の皆さんが居た。兄様に連れられて来た僕の姿を見つけると、『がんばれよ~』『まけるな~』とか声を掛けてくれる。


 ・・・そんな、ゆるい声援はいらない。






 兄様の勧めもあり、僕の日課に『体力作り』と『剣の訓練』が加わった。もちろん騎士の皆さんに混じって行うので、手を抜いた生ぬるい訓練を兄様が許さない。


 僕だって、皆の前で根をあげる訳には行かない。もう頑張るしかないじゃないか~!



 訓練を頑張って、技術がある程度ついたら、『深緑の森』に連れて行ってくれると、兄様が約束をしてくれた。だから僕は少し頑張ってみようと思う。

 ・・・魔法使えるからそんな心配いらないと思うけど、それは兄様にも、誰にも言えてない。




 半ば自棄になりながら、毎日行われる兄様との訓練。そんな中・・・シンは楽しそうに僕達の訓練に参加していた。

 一緒に走ったり、騎士の皆さんの剣の周りを飛び跳ねたり、ふざけた騎士の攻撃をヒラリと交わしてみたり、後ろから体当たりしたり、とても騎士の皆さんと仲良くしてた。ちょっと今の本気だよね・・・と突っ込みを双方に入れてくなるくらいの時もあるのだ。




 もう、ただの犬だって誰も信じてくれないと思う。・・・シンには、隠す気持ちはないのかな?

 そのうち、魔獣討伐を想定した模擬戦をシンでやるなんて事にならなきゃいいけど・・・。







 そんな変哲もない日々を過ごし、僕は少しこのままで居たいと感じた。・・・穏やかで何の変化もない日々だ。父と母、兄様が居る、穏やかな日常。


 そんなある日、小型の魔獣の集団が森から出たと緊急の連絡が飛び込んできた。

 本来であれば単独で行動し、冒険者成り立ての若者が倒せる魔獣といわれてる角兎が『深緑の森』から一斉に草原へと姿を現したのだ。


 この角兎、大きさは小型犬程の大きさで、見た目は兎なのだが、頭に一本真直ぐに伸びた角を持っているのが特徴だ。すばしっこく、臆病な性格で、角を振り翳し逃げるのだ。


 ・・・だが今回は違った。


 角兎は、草原に身を潜め眠っているのだが、近づくものがあれば、真直ぐに突進し、突き刺す・・・という行動をとっている様なのだ。

 一頭ならば、身をかわし首を落とすと、いう方法が有効だが、数が多いと、四方八方に警戒が必要で、厄介だ。


 そんな、報告を父は受け、街に警戒を促し、冒険ギルド・傭兵ギルドに協力依頼をだし、そして・・・兄様と領地に駐在する騎士団に討伐するよう命じた。



「・・・兄様。---僕も一緒に行きます。連れてって下さい」


 だって、僕は防御魔法使える。兄様の裾をギュッと握り訴えた。でも、それは聞き届けられる事は無かった。



 ---まだ、僕は何も伝えていなかったから。



 今の僕は、魔力が多いだけの、剣もろくに扱えない子供なのだと、思われているのだから当然だ。



「大丈夫、心配いらないよ。十分注意する」



 と兄様は、僕の頭をガシガシとなで、行ってしまった・・・。




 僕は何をしているのだろう・・・、失う事はしたくないと決心したのに---大切な人の命が消えるのを黙ってみている事は出来ないのに。

 ---・・・だったら、共にいる温もりを無くしてでも、大切な人たちを守りたい。全て否定され今ある温もりを手放す事になったとしても。



 今までの、記憶がもどるまでの僕と今の僕。何か変わったと言われれば、魔力が上がった事と、知らなかった筈の事を知ってしまった・・・の違いだろうか。


 大切な者を失う哀しみを知ってしまった今、拒絶され共にいる事さえ出来なくなったとしても、守りたい。僕の大切な人々。




 その日、朝一報を受け、直ぐに行動した騎士達や街の冒険者、傭兵の人々との連携により、街の人々に怪我はなく、実際に討伐に参加した兄様や騎士団に大きな怪我はなかったと、夕方、父の元に知らせがきた。


 草原へと向かう騎士団を、ただ何も言わず見送る僕に、騎士団の皆は一様に「心配し過ぎだ」と苦笑いを浮かべ出て行った。


 今は信じて待つのだ、と心に決め連絡を待っていたが、兄様を失うのかと、無事な姿を見るまでは、何もする事が出来ず、弱い自分と向き合う時間になった。


 弱い自分と別れる為にも必要な時間だったのかもしれない。


 大切な人々を守るたもにも、全てを捨ててる事になったとしても。---この日、僕は、全てを打ち明ける決心をしたんだ。



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