12.大切な温もり
「おはようございます。---・・・ルークス様!?」
窓のカーテンを勢いよく開け、起きた僕を振り返り、普通に朝の挨拶をしたアンだったが、僕の名前を呼んだ時は、ほぼ叫び声となって部屋に響いていた。
その声はもちろん、隣の部屋の兄様にまで届いたらしく、バターンと大きな音を立てて、扉を開け放ちやって来て兄様は、僕を視界に入れるなり、側に駆け寄り抱きしめてきた。
「!?どうした」
どうしたって、僕の頬が、濡れているのに気がついた。
ああ、僕は長い夢を見ていたんた、懐かしい人達。僕は、夢を見ながら泣いていたのか。
「----・・・ふっうぅぅ」
起き上がった状態で、声を出さずにただ涙を流し続ける僕・・・ただ目から涙が溢れて止まらなかった。
どうしよう。止まらない。
朝目が覚めた時、夢の中の人々がとても愛しくて、そばに居られない、触れることが出来ない、涙を拭いてあげられない、何もする事が出来ないのが悔しかった・・・。
兄様が部屋に駆け込んでくれた事が嬉しくて、触れる事のできる温もりがとても離れがたいものだと感じ、失った温もりを取り戻せるわけもないの縋っりついたのだ。
「---ううっ」
兄様に、思わずしがみつき、顔を埋める。
---また、余計に涙が止まらなくなったよ・・・。
騒ぎを聞きつけた父と母が、そっと部屋に入り僕と兄様を一緒に抱きしめてくれていて、なんだかとても恥ずかしくて、嬉しくて、幸せで、また泣きたくなった・・・。
「ううぅ・・・」
父や母、兄様が僕の背中や頭を優しくなでてくれて、少し気持ちが、落ち着いてきた。
泣きながら寝てるなんて、恥ずかしい・・・なんてちょっと思った。
握り締めたこの温もりは失いたくない大切なもので、もう二度と手放したくないものだ。魔族だった記憶を持つ僕を、家族は受け入れてれるのだろうか。と悪い方へと思考が傾きかけた・・・。
「う~、わん!」
・・・?シンが、僕達の上に飛び乗ってきて、兄様を押しのけるように顔を近づけ、僕の頬を舐めた。
「---やだ、止めてシン!そんなに舐めないで」
皆に抱きしめられた状態の僕は身動きできなくて、ひたすらシンに舐められる。そんな僕を見て、クスクスと兄様が笑い出し、父と母が笑い出した。
「「おはよう、ルークス」」
父と母は、そう言うと僕の頬にキスをして部屋を出て行った。兄様は、僕の頭をクシャクシャと撫で回し、寝台の上に横になった。
「もう少し寝るか?」
ポンポンと僕に隣に来るように寝台を叩く。兄様と一緒に?・・・どうしようか考えてると、シンが僕の上に体重を乗せてきて、重さに耐えられなくなり寝台に横になった。
「よし!シンも一緒に寝るぞ」
と言うと、兄様は僕を腕の中に閉じ込めた。
・・・僕は女の子じゃないぞ。ちょっと複雑な気分を味わいつつ、兄様のシャツをギュッと握り締めた。隣にある温もりが心地よく、とても安心して、直ぐに睡魔がやってきた。
「ふぁぁ~・・・」
欠伸を一つして、僕は目を閉じた。暖かな兄様の温もりとシンが傍に居てくれる心強さを感じながら。
シンは、すっかり寝台の上で寝るつもりのようで、僕の隣で寝転がっている。
「-----おい、ルー起きろ」
ユサユサと兄様に揺すられ、ボーっとする頭で、なぜ・・・兄様が隣に??・・・一緒に寝てた?
「寝すぎた!もう昼だ!」
と慌てて、寝台から降りる兄様を見て、ハッと思い出した。
・・・朝から大泣きしているところを見られて、一緒にもう一度寝たのだった。なんて、恥ずかしすぎる。うわぁ~!とジタバタしたい衝動の僕をよそに、兄様は部屋を出て行く。
「ルーも、急げ!昼食に間に合わなくなる」
と言い残して。
僕も寝台から降り、身支度を始めた。
朝の挨拶にも出てこない僕達を待っているであろう父や母の元に行こう。昼食は一緒に出来るように待っていてくれるはずだから。
家族に会える幸せにちょっと涙が出そうになるが、こらえて笑顔を作る。ちょっと変な顔になってしまうのは仕方ない。




