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10.夜は保護者の時間

 コトッ・・・と、私は父の机に魔石を置いた。

魔石の中では珍しい程の大きな物だ。これは上位の魔獣を倒さなければ手に入らないと思われる、価値のある魔石だ。

手元にあるのが魔獣の討伐や購入したものであれば、さほど問題にはならない。---上位の魔獣が領地内に出たとなれば、それは問題なのだが、それより秘匿しなければならない出来事・・・昼間ルークスの手によって作りだされた魔石だったからだ。


「---・・・これは、珍しい大きさだが、何か問題があったのか?」


 父は魔石の大きさを見て、少し目を見開いた。上位魔獣か・・・とも思っただろうが、真っ先に報告が来るはずだが、そんな報告は一つもない。何かこの魔石を巡って問題が起こったのかと、いろいろとこの最近の情報に思い浮かべているに違いない。




 屋敷の者はすべて寝静まり、この父の執務室には、私と父だけだ。

 昼間、ルークスと共に街に出かけ、色々と問題があったのだが、夕食の際にルークスが父と母に楽しそうに話をしてた。・・・ルークスの話は楽しいものだったのだが、一緒に行動した私としては、差しさわりの無い話に摩り替えられているので笑えない事の方が多かった。



 ルークスが父と母に話した内容は、街の子供達と遊んだ。買い物は楽しかった。馬に乗せてもらうのは気持ちがいいね。お土産迷ったけど、気に入ってくれた?そんな内容だった。

 父と母は、ニコニコと聞いてはいたが、町の子供達とは全くもって遊んではいない・・・多くの問題があった気がのだが、ルークスはそんな事はどうでも良いのだと、私は思った。

 気付かないところで何かが起こる予感もする。・・・私の予感はあまり良くない事が当たるものなのだ。


 予想外の魔石を手に、最近の領地での出来事から思い当たる事はないかと、考えあぐねている父に、今日の私の苦労を知ってもらわなければ・・・と真実を話のだ。





「食事の際に、ルークスは街の子供達と遊んだと、楽しそうに言っていましたが、・・・・遊んだのではなく、一方的に暴力を振るわれたのです。一緒にいたシンに石を投げつけ、ルークスはそれを止めさせようとしていた」


 魔石に思案していた父の顔が変わり、ゆっくりと瞬きを一回・・・。


「私のところに報告は来てないのだが・・・東門の責任者は何をしているのかな」


 口の端を少し上げ、笑みを浮かべるが、目が笑っていない。


 今回の揉め事は、ルークスが既に謝罪を受けてしまっているので報告が翌日になっても、さほど問題ない案件なのだが、父の心情としてはそう穏やかには行かないだろう。・・・あえて多くの情報を父に話すつもりが無いので、子供同士の事とはいえ私も一方的な暴力に腹を据えかねる。


 そしてあの広場は東門の管理下にあり、注意を怠ったとして東門所属の騎士達は、厳しい鍛錬が待っている事だろう。子供の些細ないざこざと捉えている彼らにはいい薬だ。



 相手が我が家の末っ子だから、鍛錬が厳しくなるかもしれないが・・・それくらいしてもらわなければ、私の気がすまない。その際は、積極的に私も参加させてもらおう。


 楽しい訓練になりそうだ、と思わず口元が緩みそうになるが、元にもどす。



「石は、ルークスにも投げられたのですが、手で受け止めたのと・・・。ルークスの前にシンが立ちケガはありませんでした。しかし、シンが少しですが額を斬り、これは治療済みです」


「そうか・・・ならばその件は、明日詳しく東門からの報告を聞こう」


 ・・・是非その時は、私も立ち会いたい。




「---それで、これはなんだ?・・・魔獣討伐の報告は出ていないが?」


 そう、これはどう見ても魔石だ。街で子供達が投げつける石であるわけがない。


「いえ・・・正確には石だったのです。ルークスは投げられた石を受け止めたと・・・。魔力の暴走を抑えようと石を握りしめていたら出来た・・・とルークスは言っておりました」


「まさか---そんな事があるのか・・・」


 手にした魔石を色々な角度から確認し、父が言った。


「そんな事が・・・それが本当ならとんでもない事になる」


 父は、気持ちを落ち着かせるよう息を吐き出し、深く椅子に背を沈めた・・・。頭に浮かんだ不吉な予感を振り払うかの様に、頭を数回振り、何時にもまして低い声で父は問うた。


「この事を知っているのは誰だ・・・」

「私とルークス。---この魔石を見た者は街の魔石商の二人です。この他に、確認の為目の前でルークスに作らせた魔石が一つあり、それは街の魔石商に加工を依頼しました」


「そうか、魔石は二つだけか?他にはないんだな」

「私が確認した限りでは、ルークスが部屋で作っていないと良いのですが・・・」


 父に確認されたが、私が知っているのは二つだけだ。ルークスは偶然できたというが、そんな簡単にいくものだろうか?一つが思いがけずに出来たといって、簡単に二つ目が作成できるとは思えない。しかも本職魔石商が絶賛する程の良い出来栄えだそうだ。・・・あれは作ろうとして作るものではないから、出来栄えというのは可笑しな話だが。


「---そうか、他言は無用だ、分かっているな」

 父に念を押され、肯定の意を返す。


 ---まあ、誰に言っても信じてはくれないと思うが・・・。


 最近のルークスの魔力が、急激に増えている。それ自体信じがたい事なのだ。

 これだけの魔力を持つ者は、勇者と呼ばれる者と数人の魔術師と呼ばれる魔力の多い者たちだけだ。すでに、魔術師よりも多くの魔力を隠しているようにも思えるが・・・。

 成人になる前の子供でこれだけの魔力を持つのは極稀で、成長期の子供は魔力が伸びる傾向にある事から、まだ増える事が予想できる。・・・現に今も増え続けているようだ。





 十日ほど前、勇者ラインハルトがやって来た事が始まりだったのか・・・私は、近衛騎士として城に勤めていたのだが、勇者が故郷に向かうというので、道案内がてら共に家に帰ってきた。

 ルークスは、勇者に合わせようとした父に連れられ、訓練を見に行く最中に倒れた。


 ---医者の診断では、軽い貧血だと言っていたが。本当にそうなのだろうか・・・。


 私の部屋はルークスの隣にあり、朝方になると悪夢を見ているか、小さな叫びが聞こえる日がある。時折扉の前に立ち、様子を伺うが何かに耐える声を聞くことも・・・誰かの名を呼んでいる声も・・・。


 倒れたその日、ルークスの魔力が急激増えたのを感じた。そして、日々僅かながらにルークスの魔力が増加しているのを感じていた。


「---ルークスには、いろいろ驚かされてばかりですね・・・」


 私は、愛すべき弟の顔を思い浮かべながら、苦笑するするしかなかった。これから、弟が起こす騒ぎを思う描きながら。


「ルークスはとても甘い考えで、この領地を収める者としてはいささか不安です。他の貴族から街の者を守れるのか再教育が必要だと思います」


 私は、今日起こった事の締めくくりとして、父に進言した。父と母は、ルークスにとても甘い。


「はぁ・・・そうか・・・いろいろなあるようだな」


 父は仕方がないな・・・とばかりにため息をついた。父も甘やかしていると自覚はあるようだ。


 私は、休暇という名目でルークスのお守をする事になった。まあ、かわいい弟と一緒にいるのは嬉しいいし、騎士団の訓練と、有意義で楽しい休暇になるだろう。





 家族の心配を他所に、ルークスは「今日は疲れました。兄様、とても楽しかったです。ありがとうございました」と早々に夕食を終え、部屋に引きこもった。・・・今頃夢の中だろうか。


 ---穏やかな眠りは訪れたのだろうか。


 部屋に戻る際、私はルークスの部屋の前で足を止め、中の様子を伺う。


 私達がルークスの事をとても気に掛けていると・・・本人は気付いていないのかもしれないが、近いうちに心の奥に閉じ込めたものを話してくれる事を願っている。





もっと兄が黒くなった。

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