1.最悪な事思い出しました
初投稿で、どきどきしてます。つたない文書ですが宜しくおねがいします。
・・・アレハ、ダレダ。
僕は、父に連れられ領地内にある騎士団の訓練を見学に行った。
住んでいるこの領地は、『深緑の森』の含む魔族の住む森を警戒を行う地域である。
『深緑の森』を奥に進むと『魔素の森』、その森を抜ければ魔族の住む国へと続く。魔族の危険に一番近い土地の領主である父は訓練は日々欠かす事はない。
それ故、国から『深緑の森』の警備を任されている為、多くの騎士団を指揮する役目を負っている。
そんな騎士団の訓練の為に、特別な講師を招いたと、僕を騎士団の訓練に誘ってくれたのだ。
喧騒の中から外れた位置に立ち、手合わせをしている騎士団のにいる彼を見た直後・・・ドクン・・・と心臓が脈を大きくうった。
太陽の光を浴び、輝く金色の髪。白金に輝きを放つ剣。
・・・彼から目を背けることが出来なかった。
・・・ドクドクと体中に早鐘を打つ音がし、動くことが出来ないでいる僕に、父は騎士たちと共に訓練を行っている彼を見ながら感極まったように告げた。
「ラインハルト殿だ。彼は10年くらい前に勇者の認定を得た実力者だ。ルークくらいの年頃は彼に憧れてると思ってね」
と視線を僕に向けた父は、会ってみたかっただろう?と言うはずの言葉を告げられずにいた。
「---・・・。」
隣に立つ父に視線を向けた僕の顔は青白く、訓練を行う騎士団に視線を向けたまま、体がゆっくりと傾いていくのを感じた。
倒れる寸前のところ、父に支えられたようだが、意識が・・・父の顔がぼやけていった。
遠くで、僕の名を呼んでいる父の声がしたが、それも聞こえなくなった。
永い夢を見ていた。それは、とても穏やかな日常の一幕で、終わることのない日々だと思っていた。幸せな、二度と手に入ることのない日の夢・・・。
穏やかな日常は、ある日突然終止符が打たれた。穏やかないつもの場所で・・・僕は殺さたんだーーー。
「・・・・・・」
ボンヤリとした頭の中、ここは・・・自室の寝台に寝かされているのだと認識した。
・・・永い夢をみていた気がするが、あれは現実にあったことなのだと・・・。
この心の痛みは間違えであってほしいと願わずにはいられない・・・。もう二度と大切な人々に会うこと難しいのだと。
あの時、僕たちはただ遊んでいただけだった。
魔族の王の娘・シルクリース様と魔物と呼ばれるシルバーウルフのシン背中に乗って、魔族の住む領地の隣に位置する『魔素の森』と『深緑の森』と呼ばれる森の境目にある泉に来ていた。
『光の泉』・・・この場所では、生命を奪う事は許されていない、いかなる魔獣も争う事をしない泉。
この泉は、魔素・・・魔力の元となる力が大気中に多く含まれる『魔素の森』の中央にあり、魔力が多くなるにつれ、魔獣も強い物が多くなる場所。普通の人間族は『深緑の森』から奥に入る事はない。
『魔素の森』は魔族の領地と暗黙の了解となっているらしく、不可侵の領域だ。領地を広げようとも、普通の人間族では、『魔素の森』にはいると、魔力酔いといわれる状況になり、体内に取り込まれる魔力が多くなり体調不良を起こす。無理をして奥に進むと体内に取り込まれた魔力が暴走を起こし死ぬか、動くこともままならず魔物に襲われ死に至る結果となるはずで・・・普通の人間族は『魔素の森』に近づくことはできないはずだった。・・・普通の人間族ならば。
・・・ガサッ。と音と共に振り返った時には、シンに剣を振りかざす人間の姿が視界を捉え、体が動いていた。
僕たちが襲われていたと勘違いしたのか・・・、シンに向かって振り下ろされた剣は、とっさに身に纏った簡単な魔法障壁と短剣で飛び出した僕が盾となった。
「・・・シン、早く行け!」
人間は、戸惑い驚いた表情を見せたが、それはほんの一瞬だった。直ぐに表情を引き締め剣に力を込め、振り切った。
そりゃそうだろう・・・こんな場所にいる子供なんて魔族しか考えられないし、シルバーウルフを逃がすんだから。
とっさの事で、耐え切れなかった魔法障壁は脆く、剣で斬られ倒れることとなったのだ。
でも、僕は後悔はしていないよ。シンとシルクリース様を無事に城に向かわせる事ができたのだから。
僕の命が尽きるまでの時間だけがあれば『魔素の森』を抜ける事ができると確信していた。
結果、一撃目で深い傷を負った僕は、数回攻撃魔法を放ったが、抵抗虚しく人間に倒されたのだ。
人間族になって知ったんだけど、魔族の討伐証明は髪の毛なんだって。月の光を浴びると銀色に輝くのだから一番わかりやすい。元の髪の色に左右されるから、本当の銀色ってわけではないけど、元の色の上、銀の光を纏う。
僕は、髪が黒だから下地黒に銀色を塗った感じになる。
ラインハルトという人間族を見た際に感じた息苦しさと、気を失った時に思い出した事だ。
・・・僕はルークス・ヘルヴォルトという人間族の前は、ルーフェスト・ゲンドゥルと言う名の魔族だった。