それぞれの力
ラフは話終えると辛そうに微笑んだ。と同時に場に降りた沈黙。
「…あたし達でも力になれるのかな。助けてあげたいけど」
「だね。何をしたらいいかわかんない」
「まず、俺らはただの高校生だぜ?…無理だろ」
ぽつんと呟いた澪に莉桜が同意し、颯も弱音を吐いてしまう。亜葵は何かをずっと考えてるのか黙ったままだ。ラフは祈るようにじっと四人を見つめている。またしても広場に降りる沈黙。その沈黙を破ったのは亜葵だった。
「…そうだ。そうじゃんか。俺ら、ただの高校生じゃない!」
「「「は?」」」
いきなり変な事を言い出した亜葵を澪たち三人が何を言ってるんだコイツという目で見る。亜葵は目を輝かせて言う。
「俺さ、こっちの世界に来るときに一つ力をやるって言われたんだ。俺はウィザードって言われたけど」
そして目を閉じ、右手を開いて胸の高さに差し出す。呪文らしき単語を呟くと、手のひらの上に小さな炎の玉が生まれた。手に炎を乗せたまま亜葵が得意気に言う。
「うし、成功!」
唖然としていた三人は我に返り、
「おま、それ、どうやったんだよ?!」
「わあぁ…!」
「え、炎熱くないの?」
というそれぞれの思いを口にする。ちなみに上から颯、澪、莉桜だ。颯の問に亜葵はニヤッとして答える。
「テキトー!」
ラフを含め四人がずっこける。
「なんか、こうしたら行けそうじゃね?って思ったやつをやってみたらなんか行けた」
ドヤ顔で言う彼を呆れたように見る三人。ラフは楽しそうに笑っている。
「とりあえず。じゃ、亜葵はウィザードの力なんだな?それで行くと俺はパラディンか」
颯が言うと、
「パラディンって?」
莉桜がキョトンとする。
「ナイトの上級職ですな。人を守る力に長けております。ちなみにウィザードはメイジの上級職で、攻撃にも防御にも長けた魔法を主に使用する職ですな」
「へえー。じゃ、ボクのバトルマスターっていうのは?」
莉桜の言葉にラフは少し目を見開く。
「バトルマスターはその名の通り、攻撃に最も長けた職です。防御には全くと言っていいほど適しませんが、最強の職と言っても過言ではありませんな。ファイターの上級職です」
「莉桜、つえー…」
「うかつに喧嘩できないな」
男二人が苦笑する。澪は目をパチクリさせている。
「そう言えば、澪はなんて職だったんだ?」
亜葵が聞くと。澪はニコッとする。が、何も言わない。
「…。いや、ニコッじゃなくて」
「澪、もしかして力をもらわなかったの?」
「もらったよ?もらったんだけどね?」
「もぉ…。もらったんなら言ってみなよ?じゃないとボクたち、これから何もできないでしょ?」
言い渋る澪を宥めるように莉桜が言うと、やっと口を開く。
「…ヒーラー」
「ヒーラーって、あのヒーラー?」
「ヒーラーは回復に長けていて、防御もこなします。…下級職なので効果はやや低いですが」
ラフの説明に肩を落とす澪。
「やっぱりあたしだけ下級職…」
「まぁまぁ、俺らは戦いに行くんだから回復役は重宝するって」
「そーそー、それに下級職とか上級職とか関係ないでしょ?澪はボクたちの仲間、それでおっけーじゃん」
亜葵と莉桜が慰め、その横で颯が頷いている。
四人の力がわかったところで、ラフの提案で食事をとることにする。夕焼けで茜色に染まった空を見上げてラフは思う。
『この方たちなら、あるいは…』