呼び出し
遠く異世界で人々が喜びに湧いている頃。澪、莉桜、颯、そして亜葵はいつも通りに高校から帰っていた。
「あはは、じゃ、澪ったらまた体育でコケたの?」
「ちょっと、そんなに笑うことないでしょお?」
「さっすが澪だな、俺には真似できねえわ」
「なにせ俺らの中で一番のドジっ子だしな〜」
「颯と亜葵まで!3人ともひどいよー」
数え切れないほど歩いてきたこの道を他愛もない話をしながら歩く。と、異変が起きたのはその時だった。突然、4人を中心として地面に光の円が出てきたのだ。
「え、ウソ、なにこれ!?」
「漫画の魔法陣みたいー」
「ふわぁぁぁぁ!すげぇ!魔法陣だ!」
「と、とりあえずこの円から出るぞ!」
上から順に莉桜、澪、亜葵、颯である。それぞれバラバラな反応を示した4人だが、真っ先に颯が行動を起こした。軽いパニックを起こした莉桜の手を引っ張って円の外へと走り出し、それに澪と亜葵が続く。が、外へ出る前に一際強く円が輝いた。
「うわ、眩し・・・」
「っ、きゃあっ!」
奪われた視界の中、不意に澪の悲鳴が響いた。続いて亜葵の叫び声。
「わぁぁっ!」
「澪!?亜葵!?どうしたの!?」
莉桜が叫ぶが返事はない。隣に立つ颯の体が強ばる。次の瞬間、莉桜の体を電気のようなビリっとした衝撃が走り抜けた。
「きゃああっ!」
颯が彼女の名前を叫ぶが、莉桜はそのまま意識を手放す。
「莉桜!おい、しっかりしろ!莉桜・・・!」
必死に莉桜を揺さぶる颯。しかし、次の瞬間彼の体にも衝撃が訪れ、倒れてしまう。するとだんだんと光は弱くなり、やがて円と共に消える。だが、その道に4人の姿はなかった。
ーほらほら、澪、起きて
「・・・?あなた誰?」
ーごめんね、その質問には今は答えられない。それよりさ、澪は何の力が欲しい?
「え?力?」
ーそう、力。澪に今から力を1つだけあげる
「あたしは・・・。みんなを元気にする力が欲しいな。いつも元気をもらってばかりだから・・・」
ーりょーかい♪じゃ、澪にはヒーラーの力をあげる
「ヒーラー・・・?」
ーじゃあ、もう行っていいよ。あ、そうだ、オマケあげるよ
「え・・・?」
謎の声は一方的に告げると、澪の意識は途絶えた。
ーえーと、次は亜葵だね。起き・・・
「おせぇ!」
ーえ、もう起きてたの!?まあ、いーや。亜葵は何の力が欲しい?
「力?そんなもの決まってるだろ。人を守り、闘う力だ」
ーおお、即答だね。2つの力を求める欲張り亜葵にはウィザードの力をあげる
「ウィザードか。それよりお前誰だよ。あの魔法陣はお前がやったのか?澪達はどこだ!?」
ーあ〜、もう。落ち着きなって。その質問に答えることはまだできないなー。あ、でも、最後の質問の答えは教えてあげる。・・・それはね、今から亜葵が行く場所
謎の声は答えを告げないまま、亜葵の意識は途絶えた。
ーはーい、次は莉桜だね。起ーきーて
「ん・・・。誰?」
ーあはは、みんなその質問するねぇ。あのさ、莉桜は何の力が欲しい?
「何?力って」
ーんっとね、人間の言葉で言うと超能力みたいなものかな?で、何がいい?
「ボクは、これ以上大切なものを失いたくない。だから強力な攻撃の力が欲しいな」
ー攻撃は最大の防御ってことだね。そんな莉桜にはバトルマスターの力をあげる。じゃっ、またね!
「えっ、ちょっと!?」
ー謎の声はまたも一方的に告げると、莉桜の意識は途絶えた。
ーふう、やっと最後かぁ。残るは颯だね。起きて
「・・・Zz」
ーえ、ウソ、熟睡!?こんなに図太いのは初めて・・・。起きてよ!!
「んん・・・。もーちょっと・・・」
ーあ、なんか、腹立つ。起きろってば!
「ふわぁ・・・。誰、お前。莉桜じゃないな・・・」
ーふーん、莉桜、ね。まあ、いーや。颯は何の力が欲しい?
「んー・・・。力?大切な人を守る力かな」
ーまだ眠いの?じゃ、颯にはパラディンの力だね。
「パラディン?・・・なんだそれ?」
ーそれは後のお楽しみね。ばいばーい
謎の声はそれだけ言うと、颯の意識は途絶えた。
謎の声と会話し、意識が途絶えた4人。次に目が覚めた時、4人は見知らぬ広場のような場所にいた。
「ここ、どこ・・・?」
澪が誰にともなくつぶやく。そのつぶやきに答えたのは、莉桜でも、颯でも、亜葵でもなく・・・。
「ようこそ、ニンゲンの方々。ここはティアノ城の中庭でございます」
豊かな白い髭をたくわえた老人だった。何やら不思議な型の服をまとっている。
「誰?あんた」
颯が警戒しながら問いかけると、老人は困ったように笑いながら言った。
「おお、これは失礼しました。わしはこの世界の長です。あなた方の世界の言葉で言うのなら・・・。王、と言ったところですかな?名前はラフです」
「王様・・・!?」
「王様ってことはここ、日本じゃないのかな」
驚く澪と案外冷静な莉桜。
「ニホン・・・。それはあなた方の住んでいた世界の事ですかな?」
「世界じゃなくて、1つの国だけどな。ということは、ここはやっぱり異世界ってことだな」
「「異世界!?」」
亜葵の言葉に驚きを隠せない女子2人。ラフはゆっくり頷き、語りだす。
「亜葵どののおっしゃる通りです。ここはあなた方の世界ではない、別の世界。言うならは、"another world"ですな」
「実は今、この世界は非常に困った状況にあるのです。あなた方を呼んだ理由は率直に言って、この世界を救っていただきたいから。少し長い話になりますが、聞いていただけますかな?」
言葉をきり、4人の顔を見回すラフ。4人はニコッと笑って頷く。それを確認してラフは口を開いた・・・。