雑談【魔少年】
「Oh!強く握りすぎちゃったね」
そう言って少年は俺の手を離す。
いやしかし、かなり痛かったな。
「僕は柿行 亮っていうんだ」
「柿行、ね。俺は紫藤 幸樹だ。よろしく」
『柿行』というのは珍しい苗字だが、しかし、『亮』と名前は結構聞くな。
今まで数十人の『亮』と会ってきた俺だったが、
しかし、こいつはいろんな意味で忘れられない『亮』になるだろう。
「しかし君、結構おっきいねー」
亮が俺を見上げるようにして言う。
まぁ、確かに先ほども言ったように俺はデカい。
いや、2mとかはいかないけれど、
高校一年生の中じゃあ、デカい部類だろう。
「なんというか、頼りがいありそうだよねー」
「ハハハ。そうか?」
俺は少しばかり調子づく。
他人から頼りがいありそうなどと言われるのは、
思ったより嬉しいものだ。
しかし、コイツ、なんだか話しやすいな。
やはりこういう奴がクラスの人気者になるのだろうか。
確かに友達多そうだ。
俺自身は、幾度となく高校生活を送っているが、
クラスの人気者になったことなどない。
二、三回なろうとしたこともあったが、
しかし、上手くはいかなかった。
なんだろう、性に合わないというか、
こうやって他人を引っ張るのが苦手らしい。
「克服しろよ」とか言われるかもしれないけど、
残念、これだけは治せないんだ。
「...もうすぐだね」
亮がいきなりそんな事を言うので、
俺はハッとして、亮の目線の先を見た。
壁にかかった時計からすると、
もうすぐ入学式の始まる時間だ。
よく見ると、他の生徒たちも集まってきている。
となると、クラス分けが発表されるのだな。
この高校では、新入生が集まってからクラス分けの紙が配られ、
それから並んでもらう制度なのだ。
俺は効率悪いと思ってるんだけど...。
「一緒のクラスだといいね」
「そうだな」
などと会話をして俺たちは一旦はぐれた。
新入生が全員集まり、騒がしくなったところで、
クラス分けの紙は配布された。
この高校は三クラスしかないから、紙は見やすくなっている。
一組から順に見ていくと、早々に、亮の名前があった。
しかし、一組のさ行に俺の名前はなく、
『紫藤 幸樹』は二組にあった。
紙を見てから、並びに行くと、
偶然にも隣に亮がいた。
「いやー、別々だったね。クラス」
「まぁ仕方ねーさ」
「そうだねー」
亮はニコニこと笑いながら、頭の後ろで腕を組んだ。
「そういえば、三年に僕の姉ちゃんいるんだよね」
亮は唐突にそんな話をし始めた。
「え?そうなの?」
しかし、それが本当なら、俺が知らないというのはおかしいぞ?
だって、二年前に同じ一年生だったという事なのだから。
「名前は?」
一応、聞いてみた。
「『柿行 凛』だよ」
むむ...。駄目だ、分からない。
やはり百数年も生きてきたから、俺の記憶力も薄れてきたのだろうか...。
困り顔の俺を見て、亮はからかうように言った。
「あ~、もしかして僕の姉ちゃん狙ってる?
でも、多分幸樹君じゃあ脈ナシだと思うよ?」
「あ?そりゃ俺に魅力がないって事か?」
「違う違う。姉ちゃん、重度のブラコンだから」
自分で言いやがった...。
「重度って、どれくらい?」
「まだ一緒にお風呂入ってる」
「マジでっ!?」
それは重い...。大丈夫なのかその姉ちゃん。
「このあいだは夜這いされた...」
「おおう...」
亮の顔から笑みが消え、どんどん青ざめていく。
トラウマなのか...。
俺はそんな亮をかわいそうと思うと同時に、
少しばかり羨ましいとも思った。




