出会い【魔少年】
あとから聞いた話じゃ、高校の理科室で謎の爆破事件があったらしい。
まぁ、理科室では何が爆発しても不思議じゃないが...。
しかし、今までにないパターンに俺は戸惑う。
百年間高校一年生をやって来たけど、
その道のプロフェショナルでいたつもりだけれど、
だが、高校で爆破事件など起こったことはなかった。
異常――という程のものは感じなかったが、
何か、変わる予感が俺にはしたんだ。
爆発したのは理科室なので、体育館でやる入学式は、
なんの滞りもなく行われた。
そりゃそうだ。俺はちょっとがっかりする。
さぁ、一年生は体育館入り口にて待機待機、っと。
百回も一年生を繰り返した俺にとっちゃ、
こんなの、造作もない事である。
やはり一年生を百回やってると得するのは、
他の新入生と違って緊張しない事だろう。
俺はいち早く体育館前に着いた――と思ったら、
そこには、先客がいた。
身長は、俺よりちょっと小さいくらいで(俺がデカすぎるのだけれど)
なかなか整った顔立ちをした少年がいた。
いや、同い年の事を少年と言うのも変だけれど、
経験値は俺の方が上である。
表情は非常に嬉々としており、何かいい事でもあった風だ。
しかし、一人でニヤついてるとは、なかなか変な奴。
今までいろんな一年生を見てきたが、しかし、
ここまで変わったやつを見るのは、実に五年ぶりだ。
あ、もしかして、イタい奴なんだろうか――。
そんな事を考えていると、そいつが俺の方に視線を向けてきた。
気付かれたか...。
こういう時、気まずくなるんだよね。
知らない顔だけど、でも、これから一緒にやってく仲間だしな――みたいな。
だから、微妙な空気になるだろうと予想していたが、
しかし、俺の予想と裏腹にそいつは、俺の方へ寄って来て、
俺の右手をがっしり掴んだ。
「!?」
続けて大きく縦に振る。
どうやら握手を交わしているつもりらしいが、
すごく痛いからやめてほしい。
「Hello!君も新入生だよね!Nice to meet you!」
うわぁ...。いきなりぶっ飛んだ奴に会っちゃった。
だが、今までにない展開に、
理科室での爆破に続けて、俺は少しばかり希望を抱いた。
(これは、なにかが変わるか!やっと二年生になれる!)
俺は謎の少年と握手しながら、二年生になったら何をしようか、
色々とあらぬ妄想をし始めた。
盗らぬ狸の皮算用とは、こういう事を言うのだろう。