プロローグ 百度目の願い
高校生活という物は――
やはり華やかであってほしいものだ。
それは何より、その高校生活が、二度とやり直せないものだからだろう。
だから人は、一生に一度の高校生活に夢を描く。
...俺だって、華やかであってほしい。
だが、先の事を考えると、どうも気が進まない。
どうやっても進めない。
俺は百年も前から高校生を続けている。
最初は――大正時代だったかな。
何処かの財閥の子供だった気がするが、覚えていない。
どういう事かと言うと、どうあがいても、
高校一年生以上にはなれないというわけだ、俺は...。
他の奴は二年生に上がっていくのに、俺だけ一年生のまま。
しかも、皆俺の事を新入生としてみてくる。
容姿も名前も変わらないのに、始めてみたような顔で俺に、
「二年生だから頼ってね」オーラを出してくる。
それが知ってる奴だとなお恨めしい。
さらにだ、ありえないことに親まで気付けば変わっている。
四月一日になれば、俺の殆どがリセットされる。
こんな嘘くさい話は信じてもらえないだろうが、
そう言う事だ。
さて、俺はいつになればこの高校生活を終えられるのか、
というか、いつになれば二年生になれるのか...。
未だに見当がつかない。
誰か、地獄から俺を開放してくれ――
そんな事を考えていた高校百年目の春。
入学式へ向かう途中で、俺は目を疑う光景を見た。
「あれは...」
俺の通うはずの高校から、煙が上がっている。
誰か、こんな滑稽極まりない話を聞いてくれよ。
主役は俺、紫藤 幸樹だ。