隕石襲来・月
隕石が落ちてきた。
何の因果なのか、居住スペースに。
災厄は突然やってくる。
隕石に気付いたのは、1日前の事。
レーダーにより、月に漂着するゴミや石などを前もって確認する作業を行っている時に発見した。
と言っても、全長約1メートルほどの隕石だ。
発見後、すぐに対策が練られ、ミサイルを撃ち込む時間や方向が設定された。
このような事態が起こったのは初めてであった為、初めはぎこちなかったが、なんとかここまでこぎ付けた。
しかし、予想だにしない事態が起こった。
何と、発射の許可が下りないのである。
しかも理由は『ミサイルの軌道上にツアーの客船が通るから』らしい。
こちらは命がかかっているってのに、金持ちの娯楽によって拒否されるなんて、バカげた話だ。
月の偉い方たち、俺の父親などが政府に掛け合ってるが、発射が許可されることは無かった。
そして、隕石が到着した。
死ぬかもしれない、そう思った。
ハレー彗星が近付いた時の人類もこんな気持ちだったのだろうか、どうしようもない気持ちがこみ上げてくる。
生きたい。
俺はシェルターの中に潜り込んだ。
シェルターの中に入ってしまえば、空気が漏れることはまず無い。
1人で居れば2、3日は持つだろう。
そうして、俺はシェルターに入り、内側からカギを閉めた。
その直後、大きな音がした。
2日が経った。
もう空気が無くなってきた。
頭が、熱い。
食糧や水のことを全く考えていなかったので、2日間何も腹に物を入れていない。
もうここにいても限界である。
俺は、空気の無いはずの外に飛び出した。
辺りはシンとしていた。
そして、空気があった。
ひんやりと、涼しい風。
猫の子一匹、いない。
隕石を探してみたがどこにもない。
とりあえず、空いたはずの穴を探す。
穴らしきものを見つけた。
そこには偶然なのか必然なのか、家の壁が貼り付いていた。
誰かがそうなるよう仕向けたのかは、定かではない。
良く見ると壁と天井の間には人のようなものが挟まっていた。
他のシェルターがあったので、ノックしてみる。
初めは驚かれたが、確かにそこに人がいた。
というか、父親だった。
やはり親子というのは似るものか。
俺と父親以外にも、他に数人ほど生き残っていたが、それ以外は宇宙に飛んでいってしまったらしい。
とにかく、お墓を建てよう。
ここに残った者の義務である。