抽選に当たった不幸な人たち
私は中国に来ていた。
というのも、次に滞在する場所を決めるからである。
そう、引っ越しなのだ。
それなのに何故中国に来ているのかというと、転勤先、というわけではなく、中国でなければ手続きが出来ない事になっているからだ。
じゃあ引っ越し先はどこかって?
答えは簡単。
宇宙。
宇宙エレベーターは中国が所持しており、ロシアやアメリカの宇宙船にガタが来てしまったので、今や宇宙に辿り着けるのは中国だけとなった、というだけの話であるが。
中国は宇宙ステーションも所持し、宇宙の全権を握っているのだ。
私自身、一度中国を介して宇宙に行った事があるので、もう手続きの仕方は覚えている。
今は、受付の順番待ち。
しかし、私は宇宙に行く事を好ましく思っていない。
むしろ嫌なくらいだ。
だというのに何故引っ越すのだと問われれば、それは義務だからである。
なんと、抽選で宇宙に住まなければいけなくなったからだ。
話によれば人口増加に伴い、居住地区を増やしたいとか。
難儀な話だよね。
宇宙は、光はあるが地球に適合しきっている私たちにとって、住むなんてのはナンセンスな話だ。
空には星、前方には星、後方には星、左右には星、下には星。
どうだろう? 気が狂うと思わないか?
それを一度行った時に実感したからもう行きたくないのだ。
「32番ノカタ、3番窓口二ドゾ」
カタコトで私を呼ぶ声が聞こえた。
……腹をくくるしかないよね。
では、ヒトクラ地獄でも見てきます。