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Secret Fable  作者: ヨエ団
次章
12/15

壁の破損・火星

 寒い。

 寒い。寒い。寒い。

 どうしようもなく、寒い。



 火星は未曾有の氷河期(仮)に襲われていた。

 地下での地熱発電が間に合わないほどに。



 地熱を使うのを止めようという話が持ち上がった。

 いつまでも地熱を使っていたらその内火星の熱を全て奪ってしまうから、という事らしい。


 何を言っているのやら。

 昔には石油という便利な物があったが、全て使い果たしたのはどこのどいつだったか。

 二酸化炭素の出し過ぎとか意味の分からない事を喚き、地球温暖化で陸地が沈むとか言いつつ、沈む原因である森林伐採やら埋め立てやらを止めなかったのはどこのどいつだったか。


 原発の時と同じだ。

 原発が無いとどうしようもないと分かってたくせに原発を使うのを躊躇って、停電が起こったあの時のように。


 そこにある物を使っていかなければ、人間というのは生きられないのである。

 使わないならば、それは猿と同様。

 原始時代に戻ってしまうだろう。

 それよりは便利で、機敏で、ストレスフリーで。

 有意義な生活を過ごしたいに決まってる。



 地熱発電の運転休止が決まった。

 なんと、鶴の一声らしい。

 バカらしい、それで死ぬってことも分からないのか。

 そう思い、自家発電が機能している野菜工場に潜り込んだ。



 そして今。

 外は氷で覆われている。

 みんなみんな、家の中で暖をとっている。

 俺は野菜工場だが。

 理由は太陽の活動が弱くなったとかウンタラカンタラらしいが、発電を止めてさえいなければ、こんなことにはならなかっただろう。

 今頃気づいても遅いのだ。



 その時、外からミシミシと、不可解な音が聞こえた。

 いや、実際には聞こえなかったのだが、そう聞こえた気がしたのだ。

 そう思った時には遅かった。

 野菜工場の壁が1人でにしなり出したのだ。

 何事かと思い、外を見ようとした。

 すると外には。



 空気が、無かった。



 急いでドアを閉めないと、危なかった。

 外に吸い込まれて、死んでしまうかもしれなかった。


 ネット回線がつながっているため、ネットサーフィンで事の真相を調べる。

 やはりネットというのは素晴らしい、TOPニュースに火星のことが事細かに書かれていた。

 なんと、火星の居住地と宇宙の間に存在していた壁が壊れたのだ。

 理由は、気温が下がったことによる、壁のたわみの角度の変化、らしい。

 内側が縮小して割れ目ができ、結果的にそこから壊れていった、という事だ。



「終わったな」



 広い野菜工場の中、唯一電気があるであろうこの空間で、俺は他の火星人をしり目にのうのうと生き続ける。

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