第12話 TENPURE再現と目立ちたくない
この世界では、外を歩いていると凶暴な怪物━━魔物などに遭遇する。
しかし、なぜか討伐した後の手続きがやたらと複雑だった。
魔物を狩って固定の買取所で売り払えば終わりではなく……。
剥ぎ取りや処分、さらにはそれぞれ持っていける個数制限や店舗制限もあり複雑で面倒だ。
それを知ってから俺はずっとその事務手続きをリーシャたちにやらせていたのだが、ふと大事な事を思い出した。
ギルド登録してないな……。
ギルド受付嬢や併設する酒場で管を巻く荒くれ者、そしてなにより美少女新人冒険者。
それらを見に行った上で、美少女や美女冒険者が俺のハーレムに入りたがっていたら、迎え入れてやらなければ。
俺としたことが手抜かりだった。
思い出したのは少し前の話。
山賊王カンダタを打倒して伝説に残る一騎打ちを演じたり。
その後祝勝会で俺を称える人々と飲み比べをし、あまりの接戦から勝負が長期化して、店の酒が尽きることを懸念した俺がかっこよくお酒を飲み干し、相手に本来の酒の楽しみ方をすることこそがこの戦いの勝者だと説いたり。
その際に、酒場での絡んでくる荒くれ者どもを導いてしまったが故に、本来なら途中乱入してくるはずの美少女が出てこなかったな……。
仕方がないので俺は、ハーレム入りを待ち望んでいるはずのその女冒険者たちを迎えに行くため、ギルドの職務内容内やそれらの特徴や俺が行ったら起こるであろう出来事などを事細かにリーシャに伝えた。
すると1日調べてくると言って出ていったリーシャが、探し出して見つけてくれたのだ。
やはりあったか異世界ギルド。
◇◇◇◇◇
「(リーシャ、今回の出費はどういう意図なの?)」
「(TENPUREという神神が信仰している予言書の記述に出てくるGIRUDOという組織を探しているらしくて、それで色々と用意するのに使ったの……)」
「(なにそれ)」
「(私にもよく分からないのだけれど、とにかくそのGIRUDOは一度だけ儀式的に登録というものをすればいいらしいわ)」
目立ちたくない俺ではあるが、アムレアスに力あるものの責任を説いた身として、手本を見せるべく正面から堂々とギルド登録をしに行った時の事。
まずは優雅にドアを開け、さらに一歩一歩目立たないように屋内に踏みしめた。
その際、少しばかり音が鳴り響いたのは誤差だったが……。
「(なにあれ……わざと音を出して、注目を浴びるのがTENPURE?)」
「(いえ。まずは建物に入った際、絡まれるのが作法みたいなの。意味が分からないけれど……)」
やはり俺の存在感は隠しきれないのか、近くにいたゴツいおっさんが絡んでくる。
「おい、坊主。ここはー………………えー、あ、ガキが来るところじゃねぇぞ……!(どう見てもガキに見えないんだが)」
「そ、そうだそうだ! ここは俺たち荒くれ者が仕切ってる、GIRUDOだ! ママのミルクがほしいなら家にかえんな! ぎゃははは……(だったか?)」
はぁ。やはり俺の道を阻むものは多いらしいな。
日本人は異世界で童顔に見られてしまうという話はやはり真実だったか。
やれやれやれ。
目立ちたくはないが、ハーレムの主として最低限の見栄というものも守らなくては。
「(……なんだこれ)」
「(つまんなーい)」
「やれやれ……」
肩をすくめながら、さりげなくハーレムメンバーを見る。
俺への無礼に不機嫌になったのか、アムレアスとヴァイナも眉を顰めている。
「あー、お前たち。俺はただ、ギルド登録しに来ただけなんだが……。」
ここで俺は謙虚に仁王立ちをして、ちらりと横目でヴァイナとアムレアス相手に流し目をしながら啖呵を切る。
「一度だけ言うぞ、道を開けろ。今ならば俺への無礼を許してやろう。この神々しくも奥ゆかしい寛容さの権化である神ゴッドがな……」
「ブフッ」
「くくっ……!くっそ……あれ……(意味わからんくてセリフ忘れちまったよ)」
やはり地球で創作されたラノベ小説というのは、一つの予言書だったか。
ここまで俺が想定していた通りの展開が起こるとは。
「あー……! 通れるもんなら、俺たちを倒してからここを通るんだな! この悪逆皇帝ベルザード様相手にできるなら、の話ではあるが……」
「その部下のマリオン」
「アインもいるぜ」
ベルザーなんちゃらたちが名乗りを挙げたが、興味もない。
「無知蒙昧な君たちは知らないようだな。超絶怒涛、最強伝説、天下無双の『神ゴッド』の名前を持ったこの俺を……!」
控えめに救世主の宣告した途端、場が静まった。
やれやれ、こういった自己顕示はしたくなかったな……。
まったく、わからず屋たち相手にわざわざ教えてやる俺は優しすぎるぞ。
「やれやれ、目立ちたくなかったんだが……」
「(やれやれ何回目だよ)」
「(もっと語彙はないのー?)」
すると、荒くれ皇帝とその仲間を武器を構えて俺に対峙してきた。
「お、おら……! 通りたいなら、通ってみな……!」
「「……さっさとこい!」」
まるでさっさ済ませたいと言わんばかりの傲慢。
俺の謙虚な宣告に、こいつらの増長は留まるところを知らんな……!
「ゴッド……! 拳圧……!」
「「「「ぐ、ぐわぁ……!」」」」
その瞬間、3人の荒くれ者は見事に吹き飛び、俺が無意識に自動発動していた防護魔法で怪我をせずに済んでいた。
「敵対した相手のことを考えて、無意識に防護魔法を使うとは、俺の甘さはいつか弱点になってしまうな……。だが、それでもこの甘さを抱えて生きていくんだ。なぜなら、それが勇者を越えた勇者、神勇者ってやつだからな…………」
「さ、流石勇者様です……! 目立たないように力を行使してなお圧倒的なお力!(ノーリィ、ベルザードさんたちへの守り、助かったわ)」
「はぁ……。さすが……(いいよ。だけど、今日の神神はいつにも増して長い上に意味不明。私が魔法で対処していなかったら……)」
◇◇◇◇◇
やがてギルドにいた人間たち全員から大喝采が起こった。
その際、ぶかぶかの冒険者の服を着た美少女が俺のハーレムに入りたいと言ってきたのには困ったものだ。
やれやれ……。
ただし、この子もアマンダたちのように現地限定で旅の後に迎えにいく方針とリーシャから言い渡されたのは残念だな。
まぁ仕方ない。
序盤から仲間になっていたら大成していただろうが、既に固定メンバーが5人いるからなぁ。
そのままギルドの受付で美人受付嬢を相手に登録手続きをすることになった。
「えっと……。お名前とご職業、それから特技をこちらの書類にご記入お願いします。」
「読めないんだが、これは母国語で書けば相手の認識に合わせて記入内容が見れるようになる魔法の羊皮紙なのか?」
「…………え?……あ、はい!そのようになっております!(どういうことなの。リーシャさんが頷いてるからとりあえず合わせるけど)」
流石異世界だ。
日本とは違って融通が利く。
やがて手続きを終えた俺は、奥にある一室で水晶に力を込めて勇者の力を送ると、簡単に壊れてしまった。
やれやれ……。
「普通なら誰にも砕けないはずの測定機が……! 流石神ゴッド様です!」
「えええぇええ……! 魔力測定機が壊れた……! これがあの、数多の悪人たちを討伐し世界の安寧のために大陸中を飛び回っている伝説英雄、ゴッド様の潜在能力だというのですか……!」
「フ……俺の偉名は隠そうにも隠せないのか……」
「す、す、すごすぎます……! 私……こんなの見たことない……!」
やれやれ、目立ちたくないのに目立ってしまう。
力あるものの責任をつい先日に説いた身として引き下がれないのが残念だが……。
念のために言っておくか。
「目立ちたくないんだがな……。俺、もしかして何かやったのか……?」
「なんということでしょう。自分の力が高度すぎて、私たち一般人とはレベルが根本的に違うのですね……! ああ……! ゴッド様……!」
ギルドの受付嬢が驚きのあまり椅子から転げ落ち、俺が軽く力を込めただけで壊れた水晶を見て恐れ慄いていた。
「(アリスさんやりすぎです……)」
「(ぶふっ……)」
ギルドランクは最上位のSSSランクを超えて、SSSSSランクが適応された。
しまったな……。
俺はただ、目立たずハーレム救世主神勇者として、謙虚堅実に生きていたかっただけなんだが……。
こうなってしまったからには致し方なし。
別れ際にアリスもハーレムに誘うと、俺が旅を終えた後のためにここで待っているらしい。
しょうがない、既に大所帯だからな。
旅を終える楽しみがまた一つ増えたってわけだ。
「(とても詳細な願望を口にされていたから再現しやすかったわね。協力してくれた劇団の人たちも、仕事がなかったらしくて安価で引き受けてくれたし)」
「(これでしばらく、子供みたいにてんぷれ連呼するのは収まるといいな)」
「(これ、なんか意味あったのか?)」
「(んー、神神の夢? まぁ今日はあんまりかなー。もっとはっちゃけてほしかったー)」
売れない劇団に声をかけて格安で雇い、空き店舗を一時的に借りて、神ゴッドから聞きかじったテンプレギルド登録をリーシャたちが再現しました。
この時テンプレやギルドという言葉は、太郎があまりにもいろんな概念をひっくるめてテンプレやギルドを言葉にしていた結果、翻訳魔法で意味が翻訳されずに【TENPURE】や【GIRUDO】とそのまま聞こえていたからこその困惑です。
ベルザードたちは裏で座長のアリスさんから叱られてます。
※この後神ゴッドがギルドイベントを望まなかったため、第二幕はありませんでした。(もしものために今回のシナリオや展開は引き継ぎ用にリーシャがメモしてた)




