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第0話 魔神討伐の後始末


 辺り一面に広がる、とある平野の一角。


 そこで魔法使いの女性が大規模な魔法を発動するための準備をしていた。


「こちらと……あちらの世界の座標を計算して……、転移する範囲を指定。巻き込まれた人がいてもすぐに送還できるように、転移発動時のマーキングもしないと……」


 作成にあたっての計算を行いながら、同時並行で作業も進めていく。


「ノーリィ、貴女少し休んだら……? 魔神が逃げ出した直後からずっとやってるじゃない」


 仲間からの声に反応しながらも、手を止めずに動かし続ける。


「ありがと、リーシャ。でも……、あの瀕死になって逃げた魔神は、いつ死んでもおかしくない状態だった。ほかの世界に迷惑をかけるわけには行かない」


 戦いの余波でボロボロになった服や、そこで負った疲労を引きずりながらも、特殊な粉を用いて魔法陣を完成させるべく努める。

 

「それは確かにそうだけれど……。私たちも戦いの傷が治りきっていないのだし、少しでも休んだほうが……」


 そんな女魔法使い相手に、破けてしまったウィンプルを片手に語りかける、装飾が精緻でおしゃれな改造シスター服の女性。


「ううん。もしも別の世界で魔神が死んでしまったら、そこで近くの生物がその力を継承してしまうかもしれない。そもそも、こちらの世界と別の世界は、時間の流れが同じかも分からない。だからこそ一刻も早く対処したい……」


 魔法使いの女性は立ち上がり、先ほどから作成していた転移魔法陣全体を睨み、焦燥に駆られていた。


「無理だけはしないで。私は何か元気が出る軽食を作ってくるから。少しでも食べてね。」

「……わかった、作業が終わったら食べに行く」 


 シスター服の女性は心配そうに肩を叩いた後、遠くのテントまで食事を作りに向かう。


 そこに遠くから声が聞こえてくる。


「おーい!こっちはこのぐらいの溝でいいかな——?」


 その声の主である男は、戦いでボロボロになった深緑の鎧を着て、魔法陣の溝を作る作業を手伝っていた。


「ブレイド、ちょっと待ってー。今確認する……」


 男が担当した範囲を見回り、掘った溝の深度や溝の強度を確認すると、女魔法使いは一つ頷いた。


「うん。これでここは大丈夫! あとはクゥの所なんだけど……」


 女魔法使いがその後、同じように手伝っていた仲間である女獣人の担当した所を確認してみると、日なたに当たって土を掘り起こす体制で眠ってしまっていた。


 近くに人が来たからか、目を覚ます。

 

「……あ、ごめん」


 暖かな橙色の髪を靡かせながら、女獣人は申し訳なさを顔に出して謝罪した。


「ははは、あんな戦いがあったとは思えないぐらいに日当たりもいいし、しょうがないさ。ノーリィの危惧もわかるし、俺も手伝おう」


 深緑の鎧を着た男がにこやかに笑うと、布手袋を外し獣人の顔についていた土汚れを拭う。その後、すぐに手袋を着用し直して作業に取りかかった。


 先ほどの話を男が聞いていたことを察した女魔法使いは、男が担当していた箇所の進みが早かった理由を悟り、呟くように言葉を吐いた。


「……聞いてたんだ。ありがと。」


 女獣人も、男の近くでひなたの暖かさに負けるわけにはいかないと、やる気を出す。


「……私も急ぐ」


 こうして勇者一行は魔神討伐の後始末をするため、土に塗れながらも着々と準備を進めていくのであった。

 

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