ちぇんそーまんず伝慈朗:食べ物の怨みは恐ろしい
※スタンドマイク使用(笑)スピーチの際に持ち上げたりしますが驚かないでください(笑)
ゆっくりと彼は歩いてマイク前に立つ。深く御礼をしてみせる。
「しゃー!!! おらー!!! お前は誰だ!!! この野郎!!!」
マイクを持つなり、凄まじい声量のシャウト。
しかし、その勢いは収まらない。
「俺は!!! デンジロォ!!! ちぇんそーまんずの!!!」
早くも「はぁ……はぁ……」という息切れが聴こえる。
でも奴は収まらない。
「知っているか!!! オマエェッ!!! 俺を!!! いや俺達を!!!」
デンジローが観ている客とは別の客から「知ってる!」と大声。
「おう、君、君は優秀だ。今から俺が話すことを聞かなくてもよし。耳塞げ」
いきなりトーンが下がった。思ってもない展開だったのだろうか。
「だがしかしぃ!!! 今日の俺はどうしても言いたい事があるぅ!!!」
やっぱりデンジロー。大絶叫。
「数年前!!! 俺は薦められた唐揚げを食べさせられた!!! 食べさせられたんだよ!!! この野郎!!! 数年前!!! 俺はここに立っている筈だった!!! あ、その節は透也くん、世話になりましたぁ!!! ありがとうございましたぁ!!! だけどぉ!!! 俺はあんな腐った唐揚げを食べなければぁ!!! 食べなければぁ!!! あの日、ここに立って違うことを喋っていたんだよぉ!!!」
前回大会で確かにデンジローは決勝進出を決めた。しかし大会当日になって腹をくだしてしまい、そのままパフォーマンスを棄権したのだ。
「でもぉ!!! だけどぉ!!! 話そうとしていたのは今日と同じで!!! 食べ物の怨みは恐ろしいって話だぁ!!!」
ここで胸ポケットにしまっていたヤクルポを取り出して飲み干す。
「おい!!! 今のルール違反じゃねぇだろ!!! 鳴沢!!! いや、今回は中下!!! 何にもしてないって言われているダテケン!!! 喉痛くなったら飲むってことにしていたので許せぇ!!! 今日の俺は本気だからなぁ!!!」
確かにルール上に飲み物持参を不可とはしていない。また運営陣の悪口などを言ってはいけないルールもない。それでヤクルポを持参しているのはまさかだが。
「俺は真面目だから!!! おい!!! そこ!!! 真面目じゃねぇだろって顔をするなぁ!!! 超真面目だから!!! コンビニのバイト中にサボってでもブログを更新させるぐらい真面目だから!!! おい!!! そこ!!! 今の何が可笑しい!? 笑ってんじゃねぇ!! いや、お笑い芸人だから笑わせてもいいのかな……笑っていいよぉ!!! というぐらい俺は真面目なんだよ!!! 人を見かけで判断するなぁ!!! そういう俺だから!!! 差し入れは意外と行くところ、行くところで貰えるんだよぉ!!! 羨ましいだろうがぁ!!! ざまぁみやがれ!!! だけだなぁ……だけど……」
デンジローの目から涙が溢れだす。
「賞味期限……違うわ……消費期限が3日前に切れている弁当なんかをこの俺にだすなよぉ!!! 唐揚げ入っていたから能動的に食べてしまっただろうが!!! 大会前日の取材に応じてやった御礼がそれか!!! 分かっているなぁ!? フジサンテレビかクリスタルエデンのどっちかの責任だろうが!!! ダテケン!!! 逃げんじゃねぇぞ!!! 俺がここで優勝したら、テメェらのスタジオで俺が主演の映画かドラマを作りやがれぇ!!! お芝居なんて1回もしたことないけど!!! あ、やろうとしたことはあったわ。台本にあった漢字が難しくて読めなかったから、その仕事を辞退してやったわ。だけどもぉ!!! そんな俺でも主演にしやがれぇ!!! いいなぁ!!! ダテケンじゃなくてもなぁ!!! 鳴沢か!!! 中下か!!! 野田か!!! あのキモい顔した男か!!! 何だっけ……古川……古田……フルトシ……トシオォッ!!! 俺はテントウ虫が可愛くて大好きだぁ!!! 可愛いコがいるんだったら、この俺に紹介しやがれぇ!!! ヒロインはそのテントウ虫のメスだぁ!!!」
またも胸ポケットからヤクルポを取り出して飲み干す。コイツ、何本ヤクルポを持っているのか? そのあとに涙の痕を拭く為のハンカチを取り出して目元を拭く。よくみるとテントウ虫の柄が入っていた。
「清田!!! お前たちフジサンテレビが1番怪しい!!! あの弁当もどきが出てきたロケ地はフジサンテレビ本社だったしぃ!!! これが本当にフジサンテレビから出された弁当だったならぁ!!! 全責任はテメェらにある!!! いいか!!! あの取材があった当日、誰が俺にどのようにして提供したのかを徹底的に調べやがれ!!! 中峰のときよりも簡単だろうが!!! そしてその事実が一致か不一致か!!! 一致か不一致か!!! 明確に一致か不一致かを清田社長の会見で弁明しろ!!! 完全オープンな体制で!!! そして!!! もしも……もしも本当にフジサンテレビのスタッフによるものだったらぁ!!! 俺がMCのバラエティ番組を週7作りやがれぇ!!! いいなぁ!!!」
苦笑いをしながら頷く清田憲司が画面に映しだされる。
「俺は!!! 本当は!!! こんなくだらないことじゃなくて!!! 数年前のスピーチヒーローのことなんかじゃなくて!!! フジサンテレビのドッキリ番組でドラ焼きのなかに辛子を入れやがった!!! そいつのことを話してやるつもりだった!!! でもぉ!!! そのPが違うテレビ局に移籍したっていうホットなニュースが最近あったからぁ!!! 梨本、お前のことは今回に限って何にも触れないでおく。名前をだしちゃったけどなぁ!!! 言っておくけどなぁ!!! 俺は予選でスポンサーの社長の審査員から支持を受けてここにいるんだからなぁ!!! 分かっているなぁ!!! ふざけているようでふざけてないぞぉ!!! 来月からヤクルポのCM入っているからなぁ!!!」
そして彼は急に絶叫をやめる。
乱暴に持って揺らしていたスタンドマイクも定位置へ。
会場を舐めるように見渡す。
「ご清聴ありがとうございました」
深々とお辞儀。こんなスピーチでも大拍手喝采だ――
お前、一人でもちぇんそーまんずは続いていたな。嬉しくて泣けるよ。
天国から見守っている――
STAND UP SPEECH HERO+の1作として書かせて頂きました。
デンジローってこういう感じのタレントなんですよね。
安心してください。彼は言うほど何も考えておりません(笑)
明日の19時にもSTAND UP SPEECH HERO+のもう1作が投稿されます。
是非読みに来てね(#^.^#)




