彼女と男のコイバナとおまけの彼氏
「その後の男と彼氏とおまけの彼女」の続き。
ホラーっぽくなりました。
「結婚しました~!」
前触れがなかった。
大学4年になり卒論と就職活動が落ち着いてきている中、男はやってきた。
ここは、大学内にある学食。
いつもとは違い周りも騒がしい中で、男と会っている。
男は顔がよく、よく見られるタイプだが、なぜか近くにいる人たちはこの男をジロジロとみてこない。
崇拝と畏れを感じ、目を合わせないよう必死になっているように感じた。
もしや、こいつの元信者達がまわりにいるなのでは・・・?
周りが怖くて見れない。
「・・・って結婚!おめでとう!」
「驚きと祝福の言葉を同時に君から聞けてうれしいよ!ありがとう。」
周りを怖がっている場合ではなかった。
「お相手はどんな人なの?」
「亡命先で知りあった人なんだよね。話しているうちに気が合って、結婚することになったんだよ。」
「へー、あなたと話が合う人って想像できないかも。どんな話がきっかけだったの?」
「コイバナ」
周りの騒がしい音が聞こえなくなった気がした。
空気がきしんだ気がするので恐る恐る周りを見てみると、近くにいる人たちは会話をしながら目がガンギマリになっている気がした。
表情筋は笑顔なのに。
「・・・こイ・ば・NA?」
「発音がおかしい気がするけど、そうコイバナだよ。」
学食の騒がしさが戻ってきた。
「・・・あなたがコイバナって、なんか・・・その、新しい詐欺商法?でも思いついたのかなって・・・?」
「なんで詐欺商法?俺、誰もだましたことないよ。」
本人は、だましたつもりはないのだろう。
いままで色々な立場や役職になったのは、生存本能からのものだろう。
顔がよく、口がうまい。
考えれば(考えなくても)、この男は詐欺師の資質があるのだ。
やる気がないので、なるつもりもないのだろうが。
それよりも、
「コイバナ聞きたい!」
「なんで?」
「あなたが、そんな話した事ないから興味がある!」
高校時代から付き合いで5年経つ。
音信不通の時もあったが、長い付き合いといっていい期間になってきたのに、そのような話を聞いたことがないのだ。
「・・・まあ、いいけど。」
「本当!」
男の珍しい間に、さすがに話すのは気恥ずかしいのかなと思いながら先を促した。
「結婚相手とコイバナで盛り上がったのは、その人が報われない恋をしていたからなんだ。」
「えっ、あなたも報われない恋していたの?」
そんな素振りみせたことはない。
「君の彼氏には話したことあるかも。」
後で彼氏に問い詰めてやる。
「俺の報われない相手は、まあまあ付き合いが長いほうでね。5年かな?ビビりだから告白できなかったんだ。でも、彼氏ができないだろうと思っていのもあって油断していたんだけど、できちゃったんだよね。」
「彼氏がいるのは置いといて、ビビりだとはいえ一回も告白しようとは考えなかったの?」
この男にもそんなことがあるのだ。
考えれば男は家族仲も悪いので、人生とはままならないものだ。
「うーん、考えなかったと言えば嘘になるけど、彼女のお相手のことも俺は好きだったから告白しようとは思わなかったな。」
「そうなんだ。」
「うん。俺、彼女がいなかったらその相手と付き合いたかったし。」
なんか、風向きが変わってきた。
「うん?」
「思い人がいなかったら、お付き合いしたいくらい魅力的だったんだよね。彼。思い人と彼は二人並ぶとお似合いだったから、一旦考え直して二人まとめて俺とつきあってくれないかなと考えた時があった。」
「・・・へぇ~。」
「けど、推しとして二人を眺めているほうが楽しいことに気づいたんだよね。好きな二人がいちゃいちゃしてるんだよ!それを眺められるなんて、究極な推し活じゃん!」
段々と興奮してきたのか、声に熱がこもり目がらんらんと輝いている。
この男に合わせて周囲の人たちの熱も高まっている気がする。
男と周りの人達が共鳴して、ここだけ熱帯になってる気がする・・・。
怖すぎる・・・。
「その話で盛り上がって、結婚することになったんだよね。」
「・・・そうなんだ。」
男は落ち着いたため、男と周りの人たちとの共鳴が終わった。
「おー、ここにいたか。」
彼氏がやってきた。
「めずらしく、周りに人がいるな。」
「うん、今回は趣向を変えてみたんだ。いろいろと布教をしようと思ってね。」
「フキョウ?」
彼氏は疑問符を上げた。
「やっぱり、たまには直に見たい時ってあるよね。」
「はっ?」
さらに、疑問符を上げた彼氏。
こちらを見てきたが、なんのことかこちらもわからない。
とりあえず、この男が結婚することと結婚するきっかけを伝えた。
「そういえば、二人だけでコイバナしてたって聞いた!なんで私を混ぜないの!」
と、私はいちゃもんをつけたが、彼氏は少し顔色が悪かった。
「・・・お前、もしかして信仰の対象にしていたものって・・・。」
「えへっ。推しと守れるし、推し活もできるし一石二鳥じゃん。」
「それ、信仰ではなくただのファンクラブなのでは・・・。」
「似たようなものでしょ。」
ごにょごにょ話している男と彼氏。
「何の話?」
「・・・いや別に。」
なにもかも悟りを開いた人ってこういう顔なのかな、といった感じの彼氏は一言いった。
「・・・とりあえず、おめでとう。」
「ありがとう!」
とろけるような顔をして男は彼氏と私をみていたのだった。




