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幕間の物語:堕ちた原形質

 ある日、広大な海を漂うとある島の上空がひび割れた。誰もそのひび割れには気が付いていなかったが、そこから黒い塊が落ちてきた。


 その塊は漆黒の玉虫色に輝いており、タールのような粘性を持っていた。そのため、高いところからこの島に落ちてきたが、特に傷を負った様子はなかった。

 黄金色の目を不定形の身体の様々な場所に浮かび上がらせ、周囲を観察した。


 その塊は、自分がどこにいるのか理解できなかった。本来それがいるはずの場所は深い雪と氷に閉ざされた最果ての土地。しかし、今それがいるのはあたたかな雑木林の中だった。それを取り囲んでいる植物、果実、緑。それにとって、今いる場所は初めて見るものばかりであった。

 群体から切り離されてこの世界に落ちてきたそれは、自分の置かれている現状を受け入れることができなかった。なぜこんなところにいるのか。なぜ自分なのか。ここで生きていくことはできるのか。そのようなことを考えていた。


 何よりもこの塊が驚いたのは明るいということだった。それにとって、光はほとんど目にすることのないものだった。このままこの明るさに包まれていては、光と熱によって死んでしまうかもしれない。

 そのようなことを考えていると、あることに気が付いた。光が動いている。

 そうして、そのまま待っていると、なんとか光が見えなくなり、闇が広がった。

 闇は、その塊にとって落ち着く環境だった。安心できるものだった。しかし、その塊は気が付いた。闇がどんどん深くなった後、次第に明るくなり始めている。このままではまたあの光と熱にさらされる。どうにかしなければならない。


 明るくなり、光が高く上った時、緑あふれる見慣れない景色の中に、見慣れた形を見つけた。きれいな直方体。明らかに何者かが作り出したもの。表面は黒土のような色をしているように見えるが、どうやら何かを入れるためのもののようだ。とにかく、この箱があれば、落ち着くことができるかもしれない。この中に入っていれば、安心できるかもしれない。

 そう思い、この箱を持っていこうとしたその時、声が聞こえた。


 「こら!そこの黒いの!私のトランクに触れるんじゃない!」


 そこには白い服に身を包んだものが立っていた。どうやら、以前にやってきた者共に似た姿をしている。すると、それはこちらに向かって走ってきた。


 塊は危険を感じ、急いでその場を離れた。べたべたする跡を残しながら。

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