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惑星を越えてでも君を探す  作者: 橘晴
第一章「異世界入門編」
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4話「サバーカ」

自分も最近物忘れが激しくなってます。

「記憶喪失?」

 男性は驚いたようだった。男性の隣で彼女も目を丸くしていた。

 すると、二人は互いに後ろを向き、ひそひそと会話が始まった。ちらちらとこちらを見ながら話をしている。会話内容はよく聞こえない。とても気になる。


「もしかして、空間転移なんじゃないか?」

「空間転移?それもこの時代に?ありえないわ。あれは危険すぎるからって三百年前に全世界で禁止されたのよ。今じゃ転移を扱える術者なんて、もうほとんどいないでしょ」

「でも、条件が合っているだろ。彼、急に森に現れたって言ったんだろ。そして記憶喪失。記憶喪失は空間転移の際に発症する精霊過剰症の症状の一つだったはずだ」

「だからといって、転移の方法は?彼が転移魔法を扱えるような人間には見えないけど」

「先人が作ったとされる、転移結晶の誤発動の可能性は十分にある」

「そうはいっても、信じられないわ。もし、本当に転移だったらそれはそれで大問題よ」

「そうだな。まあ、彼の記憶が戻らない限り真相はわからないが」

「もし、転移をしたとしたら魔化は大丈夫なの?」

「今のところ、記憶喪失だけで魔化っぽい症状は出ていないから、安全だとは思うが。どちらにせよ、有識者に診てもらった方がいいな」

「診てもらうって、そこで転移がバレるわよ」

「そこは大丈夫だ。だろ?」

「ああ、そうだったわ。わかったわ。でも、もし本当に彼が転移者だった場合、私たちも捕まるかもしれないのよ」

「そうだが……、だからといって見捨てることはできない。俺たちはそういうパーティーのはずだ」

「……そうね。でも、魔化の前兆が見えたら、すぐに殺すわ」

「ああ、それは当然だ。我々で責任をもって殺そう」

「ところで、身分証はどうするのよ」

「そこは、魔獣災害孤児ということにしておこう」

「なるほどね。丁度この間起きたばかりだし、それなら疑われることはなさそうね」

「ああ」


 会話が終わったのか、二人は俺のほうに向きなおった。気になったので所々盗み聞きをしてみたものの、全く意味が解らなかった。所々「殺す」とか物騒な言葉が聞こえたが、聞こえなかったことにしておこう。その方がたぶん平和だ。

 きょとんとしている俺に男性が告げる。

「少年、君はもしかしたら、何らかの原因で転移してきたのかもしれない。その影響で記憶を失っている可能性がある」

「テンイ?」

 テンイって、漫画とかアニメとかに出てくるあの転移のことだろうか。何を言っているのか、さっぱりわからない。さらに俺はきょとんとする。

「詳しいことは調べてみないとわからないから、君を街に連れていこうと思うのだけれどいいかい?」

「街って……」

「水上都市ミルティーユよ」

 彼女が溌溂とそう告げる。聞いたことのない都市だった。ミルティーユ。もうここは日本ではなさそうだった。頭の処理スピードが追い付かない。

 が、彼らが俺を助けようとしてくれているということは理解できた。この森で目覚めてからの最初の目標である「人と会う」ということができて非常にうれしい。それに、街まで連れて行ってくれる。断る理由がなかった。

「はい。よくわからないですが、よろしくお願いします」

「おう、任された」

 男性は、そういうと俺の前に左手を差し出してきた。

「おれはベスター。よろしく」

「ユウタです。こちらこそお願いします」

「ユウタか」

 俺はその手を握った。人のぬくもりが心地よかった。少し心が安らいだ。

 黒髪の男性はベスターという名前みたいだ。声の感じ、三十代といったところだろうか。

 数秒間の握手ののちに、ベスターは出発の準備をしてくると言ってこの場を離れた。

 ベスターは彼女に、「死体処理が終わったら一緒に来い」と伝えた。

 ちなみにだが、彼女の言っていたサバーカとやらは、あの首が二本の怪物の名称らしい。バーサーカーのサバーカ。

 つまらないことを考えてしまった。


指を食べられたのによくそんなつまらないこと思いつきますね。

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