一度攻勢に移れば後は一方的
西洋の大きな太刀を持って喜田は柚花に見せつける。まるで子供が新しい玩具を友達に自慢するような感じである。
「この太刀さ、北條会の若頭から貰ったのよ。質の悪いガラクタって言っていたけど俺はこの武器使い勝手が良くて好きなんだよな。デザインも良いし。」
「へー。じゃあかかってきなよ。」
喜田の話なんてどうでもよく感じた柚花は戦う顔をする。
「おい、オメェは武器使わねぇのかよ?素手で俺に勝てると思ってんのか?」
「あたしは君を無傷のまま捕らえて海に沈めなきゃ駄目だからね。『忍びの掟』って面倒だよねぇ・・・」
殺すだけなら簡単なのだが無傷で捕縛するのは難易度が高過ぎる。面倒くさすぎて柚花は「はぁ〜」と溜め息が出てしまった。
「さぁ喜田くん!掛かってきなよ!ヘイ、カモン!」
余裕の表情で迎え撃とうとする柚花に対して喜田は全力で走って、手にする太刀で斬りかかろうとする。
元忍者の喜田が全力で走ると一般人では目で追えない速さになる。
しかし、特別な訓練を受けて育った忍者なら話は別である。
「ぐはぁっ・・・!」
柚花は目に見えない速さで斬りかかってきた喜田の攻撃を軽く避けて、カウンターで腹に蹴りを入れた。
この柚花の攻撃も当然、普通の一般人では目で追えない速さである。
「どうしたの?攻撃が遅すぎるんじゃない?」
柚花は蹴りを入れられて動きが止まった喜田に殴り掛かる。
「ぐぅ・・・!」
柚花の尋常じゃない破壊力のパンチは壁を破壊するほどの威力。そんなパンチを喜田はモロに受ける。
「げほぉ・・・!ちょ、ちょっと待ってくれ・・・!」
その言葉を聞くと柚花は素直に攻撃をやめる。本来なら攻撃を止めるべきではないが、強者である柚花は余裕があるから攻撃を止めてあげた。
「おまっ・・・!この威力ヤバすぎっ・・・!俺を無傷で捕らえるんじゃないのか?俺もうボロボロなんだが!」
口から出てくる血を拭う喜田。柚花の攻撃がこんなに威力あるとは思わなくて、思わず「卑怯」と思ってしまった。
「あぁ、やり過ぎちゃったか〜♪でも元忍者なんだから身体は人一倍強いでしょ?だから死なないから大丈夫♪」
ボロボロになりながらも喜田はゆっくりと立ち上がって柚花を睨みつけるが、喜田の心はもうボロボロだ。柚花の一方的な攻撃で戦意喪失している。
そして遠くから柚花と喜田の戦いを見ていたメッセンジャーは「勝負あったな・・・」とボソリと呟いて柚花の肩に止まる。
「もう止めてやれ。喜田にはもうお前と戦う心が無い。これ以上戦う意味もないぜ」
「そうだね。これ以上動いたら、せっかくのお洒落な服も汚れるしね」