アンタ、誰・・・?
桜井の護衛の1人に声を掛けられ、柚花はキョトンした顔をする。
「柚花ァ・・・おめェ昔俺をみんなの前でボッコボコにして恥かかせてくれたよなぁ!?」
男が指をポキポキ鳴らして威圧的な態度を取ってくるが柚花は全く分からず頭の上に「?マーク」が出ているようであった。
「アンタ誰?あたしの知り合いに極道や半グレと繋がりのある人なんていないはずなんだけど・・・」
柚花のその言葉に男は腹を立てて柚花の胸ぐらを掴む。
「何だとゴラァッー!!アレだけの人数の前で恥かかせて忘れたなんて舐めてんのかっー!?」
背の高い男に胸ぐらを掴まれ、大声で怒鳴られているにも関わらず柚花は動じず、余裕の表情で男を見ていた。
「だからアンタは誰なんだってば。怒鳴っても分からないんだけど。」
「なら言うてやるわ!俺は喜田じゃあっー!!喜田豪じゃっーー!!5年前小学生だったオメェに公開処刑された喜田じゃっー!!」
大声で怒鳴り散らす喜田の声がうるさくて柚花は耳を手で防ぐ。
それと同時に「喜田豪」という名前を聞いて柚花は思い出す。
「あっー!!思い出したぁっー!!5年前、忍者の集会の時に当時小学生だったあたしに喧嘩売ってきてボッコボコに公開処刑されて惨めな気持ちになって勢いで忍者を脱退した喜田くんだ!久し振りっ!元気だった?」
喜田は昔と変わらずテンションが高い柚花の声が鬱陶しくて手で耳を防ぐ。
「元気だよ・・・。惨めにオメェにボッコボコにされた後、忍者を抜け出して良い仕事を見つけたからな・・・!」
喜田は「ニチャァ」と汚い笑みを見せて武器を取り出した。その武器とは西洋の大きな太刀であった。
「オメェに負けた後、勢いで忍者を辞めたけど後悔はしてねぇ・・・。いつかオメェに仕返しすために・・・復讐するために鍛錬を積んで来たからな・・・!」
喜田からメラメラと負のオーラが漂っていた。しかし柚花と喜田、2人の会話について行けないもう1人の護衛は2人が知り合いとかそんなの関係なく武器であるナイフを手にして柚花に襲い掛かる。
「オメェら、ごちゃごちゃとうるせぇンだよ!桜井さんに酷い事をする奴は死ねェ!!」
しかしナイフを手にしたところで一般人のスピードでは忍者を刺すことは出来なかった。
柚花は相手のナイフが自分に届く前に、相手の顔面に蹴りを入れた。当然、相手は鼻から血を流して気を失った。
「まぁこの人は人殺しした事なさそうだし、これくらいで勘弁しておこう。でも喜田くんは別だよ。君、多分だけど極道に所属しているでしょ?それも関西最大の極道である北條会に。」
微妙な変化ではあるが喜田の表情が少し変わった。
「図星かな。」
喜田の表情を見てニヤリと笑い柚花は喜田に掴みかかる。
「アンタ、なんで極道に属してんのっ!?忍者や元忍者が極道に属したらどうなるか分かっているでしょっ!?」
大きな声で柚花は怒鳴る。それも物凄く重大な事だからだ。
「あぁ、知っているよ。『忍者、元忍者はその力を反社組織の為に使ってはならない。もし使ったなら海に沈める刑に処すべき』だろ?分かっているよ。でもここで俺がお前を返り討ちにしたら大丈夫じゃん。」
不敵に笑う喜田。自信があるのが表情から読み取れる。
柚花に復讐するために忍者を抜け、柚花に復讐する為に反社組織に属して、柚花に勝てると確信しているから喜田は堂々している。