忍者は任務では殺しを躊躇ったら駄目なんや
柚花の殺り方と同じ手順で春奈は不良のお兄さんを惨殺した・・・のだが、春奈は少し気分が悪くなったみたいである。
「うぅっ・・・」
春奈の手には人を殺した感覚が残る。
さっきまで生きていた人の生命をこの手で奪ったのだ。春奈は例え任務とはいえ人を殺す事はいまだに慣れない。
殺した人間から流れる血を見ると気持ち悪くなる。
そんな春奈の気持ちは柚花はちゃんと理解していた。理解していたが言わなきゃいけないことはハッキリと言う。
「春奈ちゃん?さっきボールペンで喉を潰す時に一瞬躊躇ったでしょ?アレは駄目だよ。格上が相手ならその一瞬で形勢逆転に持って行く事が出来るんだから。勢いで思い切り殺らなきゃ駄目だよ。」
「ご、ごめんなさい・・・。」
尊敬する柚花に怒られると正直心が凹んでしまう。
「でも前より動きは良くなっているね。昔から比べると心身ともに成長しているのが分かるよ♪」
春奈の少しずつだが確かな成長を感じて柚花はニコニコと笑顔で春奈の頭をナデナデする。
「あ、柚ちゃん・・・♪ッッッ♪♪♪」
尊敬する柚花に頭を撫でられて春奈は嬉しくて飛び跳ねてしまう。
「はいはい、喜ぶのはそこまでだよ。この先にアプリ開発者がいるかも知れない。」
「う、うん・・・!」
冷静になる春奈はふとテーブルの上に置かれている2つのスマホに目をやる。恐らく殺した不良のスマホだろう。
「柚ちゃん・・・!このスマホ念の為に持ち帰らない?屋敷でスマホの情報を調べようよ。」
しかし柚花は春奈の提案に首を振る。
「最近のスマホは位置情報とか分かるからね。スマホを屋敷に持ち帰るってことは不良や半グレ、ヤクザにあたし達の居場所がバレるって事だから止めた方が良い。それより、今ここで情報を調べた方が良いけど・・・そんな時間あるかな?」
モタモタと不良のスマホから連絡先や通話記録、LINEの記録を調べている間に仲間がやって来るかも知れない。
そうなると面倒なことになるから出来る限り、時間の掛かる事はしたくない。
「まぁ、せいぜいコレくらいしか出来ないかな。」
すると柚花は不良のスマホから連絡先一覧を簡単に見てみた。
そして気になる連絡先の電話番号やメールアドレスだけ自分のスマホにメモった。
柚花の手際は物凄く良くて、この間に掛かった時間は30秒程度であった。
「ん・・・?柚ちゃん、さっき何かやった?」
「ちょっとね。不良の連絡先一覧から聞いたことある名前の連絡先をメモっただけだよ。」
柚花達忍者は日本全国の主だった半グレ集団、暴力団のお偉いさんの情報を共有している。
その共有している情報にある名前が不良のスマホの連絡先にあったのでメモったのだ。