忍び込む前にやるべき事がある。
さて柚花達はアプリの開発者がいると思われるアパート。そしてその部屋を見つけたのだが、すぐに忍び込むわけではない。
まず、柚花と春奈は彦根の町を歩いている途中から町にある監視カメラを死角から石を指で弾いて壊していた。
科学が発展した現代社会で忍者が生き抜くには必須のスキルである。
監視カメラに写ったら警察とかが調べ上げてくるからなにかあったら面倒くさいのだ。しかもそれが仲間にも迷惑かかることになるから、このスキルは必ず身に付けなければ任務を任せることが出来ないのだ。
そして指紋は柚花たち忍者は小さい頃に消しているから大丈夫。高山は現在指紋を消す為の薬を使っているが、大人になると指紋を消すのが大変なので忍者の出自の殆どの人が子供の内に指紋を消している。
さて柚花と春奈は監視カメラを片っ端から壊したから、後は忍び込む部屋の壁の厚さを感覚で把握する。
柚花は忍び込むアパートの1階の壁を軽く叩いてみると・・・。
「ふむ・・・。流石大学生が多く住んでいるアパートだね。遊び盛りの学生が騒いでも迷惑にならない様に壁が分厚くなっているね。防音対策バッチリしているじゃん!」
この壁の厚さというのは任務をする上でとても大事な事である。
真っ昼間から柚花と春奈が部屋に侵入しても相手が大声で叫んで近所の人に助けを求めたら任務がまともに遂行出来ない。
忍者は一般人には存在を知られちゃいけないのである。故に近所の人に気付かれないように殺らなきゃならないのである。
殺す時と拷問する時・・・人は信じられない程に泣き喚き、必死に命乞いをするものである。
任務を行う前に壁の厚さを確認するのは任務を安全に行うためである。壁が厚いか薄いかで殺し方や自白のさせ方を変えることにもなるから、もの凄く重要な事である。
「じゃあ、部屋に侵入しようか?メッセはその辺の木で待機しといてくれる?」
「おう!分かったぜ!」
元気に返事をしたメッセンジャーは機嫌良さそうに近くの木に飛んでいく。
「よし、じゃあ春奈ちゃん部屋の鍵の開けるの出来る?」
「えっ?出来るけど・・・どうして?」
きょとんとした顔の春奈ではあるが、柚花は真面目な顔をする。
「モタモタせずに手際良く、キチンと部屋に侵入出来るかどうかチェックするよ。これも棟梁としての役目だからね♪」
「ううう・・・何だか緊張して来たぁ・・・」
「ふふ♪緊張しないの。いつも通りにやれば大丈夫だから。」
ケラケラ笑いながら柚花は春奈の頭を撫でてあげる。
すると緊張していた硬い表情の春奈は少しずつ柔らかい表情へと変わっていった。
そして手にする細い針金を鍵穴にぶち込んで部屋の鍵を開けようとする。