指紋を完全に消すのは時間が掛かるんだよ?
次の日・・・朝7時。
柚花の山にある屋敷で高山は変な薬の入った桶に手を突っ込んでいた。
本来この時間は寝ている高山であったが、朝早くに柚花が叩き起こしてきたのだ。
「ねえ柚花ちゃん。これ何時間続けるの?」
正直言って桶に手を突っ込んでいるのが疲れてきた高山。
「2時間。そしてこれを毎日。最低でも一カ月はやるよ。」
高山も任務に参加させたいのではあるが、その為には現代の忍者として必要な事をやらなければならない。
その一つが指紋を完全に消すことであった。
昔の忍者にはそんな事必要無かったが、現代は何かあったら指紋ですぐに分かる。だから現代の忍者には指紋を消すことが必須なのである。
もちろん必要なことはまだ沢山あるが、これは最低限のことである。
「えぇ〜!手がヒリヒリして痒いのか痛いのかよく分からない感覚に陥っているんだけど・・・」
「我慢して。忍者のみんなは通ってきた道だから。」
みんな通ってきた道ではあるけど幼少期に指紋を消した生まれながらの忍者である柚花と20歳超えてから指紋を消そうとする一般人の高山とでは辛さが違う。
子供の頃は割と早く指紋が消せたが大人になると指紋が消えにくくなる。
それに痒いのと痛いのも大人の方がキツいのだ。
「コレを2時間やった後は基礎的なトレーニングをする事。腕立て100回を5セット、腹筋も100回を5セット。その後にこの山をランニングを5周する事。」
「えっ!?そんなぁ!キツいよ!」
「文句言わないの!初めは疲れるだろうからゆっくりで良いから。休みながらでも絶対にやり切ることだよ。この後、メッセがここに来るから。監視させてもらうからね?」
「そんなぁ〜!!てか今日さ、柚花ちゃん機嫌悪い?」
高山は先ほどから柚花にいつもの明るさがない事に気付いていた。
「毎日の疲れが溜まっているからね。主に睡眠不足。毎日学校の後は家の喫茶店で店番だし、今日はお昼前から店番だし全然眠れないんだよ・・・。今日はお昼と夕方がめちゃくちゃ忙しいんだよね・・・。はぁ〜・・・。」
忍者はだいたい睡眠時間が少なくても平気な人多い。俗に言うショートスリーパーな人が多く、千歌や春奈もショートスリーパーだから睡眠時間が3時間でも余裕なのだが柚花は逆である。
柚花は8時間は寝ておきたいタイプで、そこだけは一般人と大して変わらないのだ。
恐らく父が一般人なのが原因だと思うのだが妹の紅葉もショートスリーパーだし、柚花だけが変なのかも知れない。