柚花ちゃんが怒ったせいで場の空気が重いよ・・・
「という訳で今日みんなに集まってもらったのはあたしが今日長浜の駅周辺で薬の売人をシメて薬を取り上げたんだけど・・・。はい、コレどう思う?」
柚花は手にする小さな袋をみんなに見せる。小さな袋に粉みたいなのが入っている。
しかし場の空気が重い・・・。先ほど柚花が高山にブチ切れたせいでみんな萎縮しているのだ。
「コレを普通の市販薬の箱の中に入れて買いに来ていた人に渡していたみたい。なかなか工夫して渡しているみたいだね〜。あ、今日ね!千歌ちゃんと遊んでいて喫茶店の中から怪しげな人を見つけて追ってたんだよね♪」
しかし柚花が明るく振る舞っても場の空気が重たいままだった。
しかしそれは仕方がない。普段笑顔でキャピキャピしている柚花が怒って殴る蹴るをした後なのだ、普段滅多に怒らない人が怒ると場の空気が異様に重くなり息苦しくなるのと同じだ。
「あ、それで棟梁は用事って言って抜け出したんですね。」
千歌が恐る恐る発言する・・・。しかも柚花の事を棟梁と呼んでいるし普段は絶対しない敬語まで使っている。
これに対して柚花は「何だかやりにくいな」と感じた。
こういう空気は柚花は本当に苦手。誰かが自分に対して畏怖の目で見て接してくるのは本当に苦手だ。
柚花としてはもっと楽しくワイワイしながら意見を出したりして話をしたいのに。
「柚花・・・。」
そんな柚花にメッセンジャーもどうしたら良いのか分からない。
さっき柚花が高山に対してキレたのがこの空気を重くした原因なのは分かっているのだが、それが悪いとも思えない。
特に高山みたいに忍者としての自覚というより一般的な常識すらない奴にはアレくらい怒らないとダメだろう。
その結果、この重苦しい空気になろうとも怒ったことは絶対に間違っていないはずだ。
「柚ちゃん、それで薬の売人をシメたとき何か情報を聞き出せた?」
こんな重苦しい空気なのに春奈は普通に柚花に話しかけてくれた。
それに対して柚花は少し嬉しく感じた。重苦しい空気の中で普通に話しかけてくれる人の存在はとても有難い。
「うん聞いたよ♪この薬を売人に渡したのが女子高生で製薬会社の娘なんだって。もちろんこの事が本当であるとは限らないし嘘の可能性も十分あるんだけど一応頭に入れておいてね♪」
「ふーん?女子高生が半グレみたいな人に薬を渡すんだ・・・。その女子高生ってたぶん普通じゃないよね。私だったら半グレみたいな怖そうな人には話し掛けられないもん!」
「確かに!あたしも怖くて無理だぁっ!」
半グレとかヤクザみたいな普通ではない怖い人や会話になりそうにない人物に話しかけるのなんて一般人の男でも無理だろう。
つまり、そんなヤバい人達に話しかける時点で普通ではないのだ。