お兄さんが選ぶのはどっちなんだい?
忍者は正体がバレたら相手を殺すか記憶を消すのが鉄則ではある。
しかし、過去には例外が沢山あったのだ。
「あたしはせっかく知り合ったお兄さんを殺すのなんて無理だし、記憶を消すのも当然無理。記憶を消すって言ってもあたしとの思い出まで消すことになるからね。今まで仲良くしてきた人にそこまで記憶を消すなんてあたしには出来ないよ。」
これは柚花の苦渋の決断である。柚花からするとお兄さんはやたら話しかけてくる常連の1人である。
しかし、そんな常連のお兄さんとは言えども柚花との思い出そのものを消すのは気が引ける・・・というか何だか悲しくなってしまう。
「でもお兄さんの記憶を消さない方法があるの。それがあたし達と同じ忍者になる事。これは過去にも沢山あった事なんだ。」
柚花たち忍者の数は時代と共に年々数が減ってきており、柚花たちは忍者を増やす働きも密かにしている。
お兄さんは突然、柚花に忍者にならないか?と言われて悩む。
「お、俺みたいなチンピラが忍者なんてなれるの?」
不安そうな顔をするお兄さんに柚花は「なれるっ!」とハッキリと力強い声を出した。
「あたしのお父さんも元は町のチンピラだったの。でもあたしのお母さんに惚れて自らに忍者なって、辛い訓練もやり抜いて忍者になれたもん。生まれも育ちも忍者な人と比べて超人的な足の速さはないけど最低限の動きは出来るから大丈夫だよ!」
その話を聞いてお兄さんは考える・・・。忍者となって殺戮の世界、修羅の世界へ足を踏み入れるのか。
「別に無理に忍者にならなくても大丈夫だからね?その代わりあたしとの思い出を忘れることになるけど・・・」
その柚花の言葉を聞くとお兄さんは胸が痛くなった。
せっかく仲良くなった女の子との思い出を消すなんてお兄さんからすると辛いことである。
そんな思いをするくらいなら修羅の世界へと足を踏み出しても良いと思えた。
「柚花ちゃん。俺は忍者になるよ。」