本物のヤクザ屋さんはそこらのチンピラとは比べ物にならないぐらい怖い
「おや・・・?」
お兄さんを担ぎながら歩いていると『何者か』が走ってくる音が聞こえた。
先程、柚花とお兄さんが木から落っこちた音が大きくて人が集まってきているみたいである。
「これ闇バイトの指示役かなぁ?足音は10人分聞こえるけど。」
「普通闇バイトの指示役がこっちに来るなんてリスクのデカい事するかぁ?」
柚花とメッセンジャーはああでもないこうでもないと話をするが、重要なのはお兄さん達が持っていたものはぐるぐる巻になっていたヤクザの人って事である。
「あのヤクザを琵琶湖に沈めようとしていたということは、敵対するヤクザとの抗争が絡んでいるし・・・。失敗したらダメな事だからリスク上等で来るんじゃないかな?」
「でもそんなに重要な事なら闇バイトなんて使わんだろ。闇バイトなんて使い捨ての駒だからな。」
メッセンジャーの言うことも一理ある。敵対するヤクザを闇バイトなんかに沈めさせるのってなんか不安だ。
危機感も何もない人にやらせるのは失敗した時のリスクがデカすぎる。
そんな事を考えながら歩いていると柚花は何かを感じた。
「どうした柚花?」
「近い。メッセは隠れていて。」
柚花の言葉にメッセンジャーはすぐに木に隠れてる。
そして柚花は担いでいたお兄さんが邪魔だから見えない所に放り投げた。
足音はゆっくりと前からやって来る。
柚花は視力も良く夜目が利くため、少し前を意識して見てみると・・・いた。
目の前から屈強な筋肉質の男たちが。
恐らく全員何らかの格闘技を経験しているのだと思われる体格である。
歩き方からして武道、プロレス、ボクシング・・・といったところであろうか。
町のチンピラにはこんな奴はいない。
半グレやヤクザ屋さんは本当に人を殺しそうな圧倒的な武力を持っている。
そこが町によくいるチンピラと半グレ、ヤクザ屋さんとの違いである。
「ふーん。なかなか良い体格しているね。見た感じヤクザ屋さんというより半グレかな?アレじゃあ人前に出ても怖がられるし。」
ヤクザはみんな怖そうな人ばかりと思っている人もいるだろう。しかし、そういう人ばかりではなく表面的には普通の人も多い。
というのもヤクザは人を相手にする稼業である。
クスリ売るにしても明らかに怖そうな人からはなかなか買えないだろう。しかし人当たりの良い人や普通の人からは買える。
つまり表面的に良い人の方が人が寄ってくるのである。
それ故にヤクザは見た目が怖い人ばかりではないというのである。
さて、指示役が近くにやって来るとなると柚花も覚悟を決める。
殺しの覚悟を。
「殺すは嫌なんだけどね。まぁ、しょーがない。殺りますか。」