いつだって柚花ちゃんは僕のヒーロー
「早く行かなきゃっ・・・・!」
「う、うん・・・」
高山が大和にボコボコにされて人生最大の危機に陥っている時、柚花は紅葉を連れて山まで走っていた。
緊急の事だったから忍び装束に着替えている暇なくて2人とも私服のままで飛び出た。
そうして急いで屋敷に向かっている途中で柚花は大和らしき人物を見つけた。
「んんっ!?アレお父さんじゃない?高山くんを担いでいる様に見えるけど・・・」
柚花は木の上に止まり、遠くを指差す。それを紅葉も見てみる。
「ん・・・。そうかも?」
「だよね!?お父さんを止めなきゃ!」
紅葉は柚花ほど夜目が利かないから正直分からないが、柚花が言う事の殆どは正しい事だ。なので紅葉は黙って柚花について行く。
一その頃一
大和は高山を肩に担いで友達であるクマを探して山を彷徨っている。
「おいっー!!ムーアとボーアぁっー!!どこなんならっー!!美味い肉食わしたるぞぉっー!!」
大和は友達である熊のボーアとムーアに会えるし美味しい肉を提供出来ると思ってニコニコだが高山は怖くて震えており、オシッコまで漏らしている。
そうやって大和が山を歩いていると茂みの中から何やら動物が現れた。
「おぉっ!スアレス生きとったんかワレぇ!」
大和の目の前に現れたのはイノシシであった。しかし敵意を感じない。むしろ大和に対して友好的な雰囲気であった。
大和は担いでいた高山をそこら辺に投げ捨ててイノシシのスアレスに抱きつきに行く。
「おめぇ何歳になったんならぁ・・・。もうおじいちゃんぐらいの歳じゃろがぁ・・・!」
友達との再会に涙する大和。そしてイノシシのスアレスも目をウルウルさせて大和とじゃれ合う。
今この瞬間、大和に隙ができた。それを高山は見逃すほど馬鹿ではなかった。
コソコソと茂みの向こう側へ逃げようと動き出す。
だがしかし!運が悪かった。
高山が行こうとした茂みの向こう側から熊が二匹歩いて来ている。
「つ、詰んだっ・・・!!!」
2匹の熊を見た瞬間に高山は絶望した顔をし、そして生きるために仕方なく賭けに出た。
「もう、駄目だ・・・!もう無理だ・・・!喰われるっ・・・!助けて柚花ちゃーんっー!!!」
高山は柚花に気付いてもらうために敢えて大声を出す。これは柚花が山に入れば効果的だが、いなかったら全くの無意味である。
それどころか大声を出したせいで熊や大和が怒って余計に酷い目に遭うかも知れない諸刃の刃である。
すると2匹の熊が高山に近寄ってくる。大声を出したから当然ではある。
「グア?」
「グワ!」
「ひえぇっー!!」
2匹の熊のボーアとムーアは逃げようとしていた高山を見ると高山を掴んで大和のところまで運んでいこうとする。
すると熊がなにかの気配に気付いて木の上を見た。
「やっぱり高山くんだ。近くにお父さんもいるし」