大和と紅葉の親子の愛
凄い客の数ではあったが柚花と紅葉の2人で何とか切り抜けることが出来た。
「はぁ・・・。やっと落ち着いたぁ・・・!今日はいつも以上に多かったよぉ〜」
「うん・・・。私も疲れた」
いつも以上の客の前に柚花と紅葉は今までにないほどクタクタになった。良く考えたら、この客付きで柚花と紅葉とお祖父ちゃんの3人でやっていけているのは凄い事だと思う。
本来ならバイトを3人ぐらい欲しいところであるが、お給料の関係で出来ればバイトを雇いたくないのである。
そんな感じで一息ついたところにある客がお店に入ってきた。
「邪魔するぜ〜」
「いらっしゃいませ〜♪ってお父さんだ♡」
柚花の父・大和が店に入ると一気に店の中の空気が変わる。
本来、大和みたいに明らかにガラの悪い人がいると店の空気が変わるのだが、そうではなかった。
一気に明るい雰囲気になったのだ。
店内にいるお客さんは大和を見ると「あ、大和さんだ」と大和に話しかけに行く。
大和も柚花の母が生きていた時は喫茶店を手伝っていたから昔からの常連客は大和のことを知っているし覚えている。
大和は粗暴で豪快な性格だが、どんな人に対しても友達の様に接する。だから、みんな大和と親しく話すことが出来る。
そしてそんな性格だから常連客からは好かれており、もう一度喫茶店で働いてくれないかと思っている。
大和は常連客とのお話を程々にして柚花と紅葉に話しかける。
「柚花ぁ!腹減ったからなんか作ってくれぇ!って紅葉!!」
大和は柚花の隣にいた紅葉に目をやると驚く。
「紅葉ぃ!おめぇ久し振りじゃなぁー!久し振りに会うと改めて思うわ!お母さんによく似ているってな!」
「えっ?そ、そうかな?」
紅葉は顔も身長も胸の大きさも普段の雰囲気も死んだお母さんに似ている。
「おう!そうじゃそうじゃあっ!おりゃ!」
すると大和は紅葉の頭を撫でて肩車をする。
「ちょ、ちょっとお父さん!?」
必死に抵抗をする紅葉だが大和にはそんな抵抗などまるで意味がなかった。
「おりゃっー!!柚花にも肩車したけぇのぉ、紅葉にもしてあげんとおえんじゃろうが!どうじゃ紅葉ぃ!俺の肩車はぁっー!」
満面の笑みで肩車をする大和だが紅葉は物凄く恥ずかしそうな顔をしていた。
「ハッハッハ!子供の頃を思い出すじゃろぉが!?」
「う、うん・・・」
恥ずかしくて顔真っ赤の紅葉だが、これが大和の紅葉への愛である。
普段大人しい紅葉にはとことん愛情を注ぐ大和。大人しい紅葉には明るい柚花と違って自分に自信がない。
だから、自分に自信がない紅葉には愛情をたくさん注いであげたい。
それが将来、社会に出た時に紅葉の心の支えになると思っているから・・・!