2人とも昼間っから焼肉食い過ぎぃっー!!
駅の近くに有名な焼き肉店に柚花と大和は入店するなり、早速注文しまくる。
「ちょっとお姉さーん!こっちじゃー」
遠くにいる店員のお姉さんを呼ぶと大和はまず初めに「生中」を頼む。
それに続いて柚花が「塩タンと塩カルビ、塩ロースを3人前ずつお願いします♪」
柚花たち親子の間では焼き肉食べに行ったら必ず塩タンや塩カルビ、塩ロースといった『塩シリーズ』を頼む。
あっさりした『塩シリーズ』の味が柚花も大和もここにはいない紅葉も大好きなのである。
そしてこの親子は共に大食い。普段、家の家計の事も考えて柚花も紅葉も少食ではあるが、父の奢りとなるとめちゃくちゃ食べる。
そんで大和もアホみたいに食べるもんだから一回の外食の費用がバカみたいに高い。
「すみませーん!ご飯特盛を2つお願いじゃー!」
「あ、あたしはジュース頼みたい」
柚花がジュース飲みたいと言うと大和が少し「ピクッ」と反応する。
「そっか・・・おめぇまだ高校生だもんな。誕生日来てないから、まだ15歳じゃったなぁ・・・」
柚花の顔を見て大和は寂しそうな顔をする。それはまるで遊び相手が居らず、1人で遊んでいる様な顔をして大和はビールを飲む。
「お父さん、どしたの?」
父の寂しそうな顔を見たのは父が家を出て行ったとき以来である。お祖父ちゃんから家を追い出された時に見た。
「聞いてくれ・・・。俺はなぁ酒が大好きなんよ。友達や後輩と飲んでバカ騒ぎするんが大好きなんよ!それがのぉ!最近の若者は飲みに誘っても酒を全然飲まんのんよ!俺は寂しいわ!悲しいわ!誰もおっさんの酒に付き合ってくれん!」
「へー、そうなんだ?じゃああたしが二十歳になったらお父さんのお酒に付き合おうか?面白そうだし♪」
ニコッと笑う柚花の顔を見た瞬間、大和は泣きそうな顔になる。
「うおぉ〜〜!!柚花、二十歳になったら飲んでくれるか!?寂しいおっさんの俺と飲んでくれるんか!?嬉しいのぉ〜〜!!自分の大きくなった子供と一緒に酒を飲む!これこそ親になった時から叶えたかった夢よ!」
案外、父親の夢というのはこういうものである。大切に育てた子供が大きくなったら一緒酒飲んだりタバコ吸ったり、パチンコ打ったりしたいものである。
それは子供が男でも女でも変わらないだろう。
大きくなった子供と大人らしい遊びをしたいと思っている親は沢山いる。
特に過酷な幼少期を生き抜いた大和はそれを特に感じている。
嬉し泣きをする大和は泣きながら塩タンや塩ロースを食べまくる。
「あ、それまだ焼けてないよ?」
「おー?おぉっ!涙でよく見えんかったわぁ!」