縦縞模様の野球帽子を被る柚花ちゃん♪
次の土曜日。土曜は授業が午前中のみで、授業が終わると柚花はダッシュで帰宅して服を着替える。
「おうおう柚花。コレから大和に会いに行くんだろ?紅葉も連れて行くんだろ?でもアイツまだ帰ってきてねぇぞ」
服を脱いで着替えている途中の柚花に声を掛けるメッセンジャー。
女の子のお着替えの最中に堂々と部屋を飛び回るメッセンジャーは特に柚花から怒られたりとかはしない。
柚花からしたら喋るとはいえメッセンジャーは所詮は鳩だから着替えているところとか裸を見られても何とも思わない。
「あぁ・・・紅葉ちゃんは今日部活だからお父さんに会いに行けないんだよ・・・」
「そうなんか・・・。なんかよぉ、せっかく大和が来ているのに会えないとか可哀想よなぁ・・・」
「でも、今日は夜にここに来るから。あたしがお祖父ちゃんと店番代わった後にご飯食べに来て、寝る時は屋敷で寝るって言ってたよ」
いつもは1日だけ娘二人に会って帰っていた大和なのだが、今回は2日間この町にいる。その際、寝る所は忍者の集会で使う屋敷の一室で寝るという。
柚花の父である大和は柚花の祖父と仲が物凄く悪く、極力顔を合わせたくない為、屋敷でコソコソと寝るしかないのだ。
「おっ、柚花良い帽子被っているな」
メッセンジャーは柚花が被る縦縞模様の帽子に目が行く。普段は帽子を被らない柚花が帽子を被るとは珍しい。
「あ、この帽子良いでしょ?プロ野球とかでよく見る縦縞帽子!お父さんがこの球団好きだからお父さんにプレゼントするために買ったの。そんでついでにあたしも買ったんだ♪」
縦縞の野球の帽子を被ってキャッキャと楽しいんでいる柚花。そんな様子を見ると、本当に父に会うのが嬉しいんだなと感じる。
「おめぇがプレゼントとか大和の奴、泣いて喜ぶだろうよ。アイツすぐ感動して泣きまくるしな」
「だねぇ〜♪お父さん、昔からよく怒るけど、よく喜んで、よく泣くもん♪」
柚花の父である大和は気性が荒く、喧嘩っ早く、柄が悪い。
しかし情に厚く、人を疑うことを知らない漢でもあり、嘘を付くことができない。簡単に言えば裏表のない漢である。
そんな父を柚花は誇りに思い、大切にも思い、憧れの存在で尊敬している。
そして、メッセンジャーもそんな大和の事を家族と思い慕っている。
「よし、決めた!俺も行くぜ!紅葉が行かねぇんだから俺が行っても良いだろ?」
「えぇ?でもどこかに食べに行くよ?メッセ、その間ずっと外で待っとくの?」
「待っとく!どうせ家に居ても面白くねぇんだからそれぐれぇ我慢するぜ!」
「うーん、じゃあしょうがないなぁ・・・」
本当は連れて行ってメッセンジャーが迷子になっても困るから連れて行きたくなかったのだが、メッセンジャーがどうしても行きたそうにしているから柚花は渋々と了承した。