薬を売る女
柚花達と別れてすぐに学校を出た関本若菜はいつもポニーテールしていた髪を解いた。
「さて、新しい薬出来たし長浜の駅前で不良に売るか・・・」
この時の若菜の顔は非常にドロドロとした笑顔をしていた。端から見ても悪い事を考えているんだと分かる、そんな表情と感情が読み取れる。
若菜は電車通の為、徒歩で虎姫駅へ行ってそこから長浜駅へ行く。
駅の改札口を出て長浜の駅前を歩いてみると沢山の女子高生が歩いていた。
「いるねぇ・・・。どこの学校も中間テスト前なのに遊んでいるお馬鹿さん達が。こんにちわお馬鹿さん、なんちゃって♪」
女子高生だけでなく男子高校生さえも小馬鹿にした様に見る若菜・・・。彼女の雰囲気は学校とはまるで違っていた。
学校ではいつも明るいクラスのカースト上位なのだが決して人を馬鹿にするような人ではなかった。むしろ柚花と同じ様に誰にも分け隔てなく話しかけたり笑顔を魅せる女の子でクラス中、いや学校中で人気の女の子だった。
それが、一人になるとまるで女王様の様な雰囲気を出し道行く人を嘲笑うような態度を取る。
そしてそんな若菜は長浜の町をしばらく歩くと暗くて狭い路地裏の道を通って奥へと歩いて行く。
すると・・・いかにも怪しいお店の薬局があった。
ここは以前、顔面入れ墨男を見つけた柚花の襲撃によって営業を停止したのはずなのだが若菜は店に入っていく。・・・。
「やっほー!若菜だよー♪」
若菜は入ると明るくて可愛い声を出した、すると奥から柄の悪そうなシャブ中の不良達が現れた。
「あ、ひ、姫・・・!薬くれ・・・!金ならあるっ・・・!」
「こ、こここに10万ある!薬!薬くれ!」
ゾンビのように歩いてくる不良達を前に若菜は怯みもせず自ら近寄り、頭を撫でてあげた。
「うんうん。そんなにお薬飲みたいでちゅか〜!!」
すると若菜は鞄からどこからどう見ても市販の風邪薬の箱を取り出してみんなに配った。
コレ、実は中身が違うだけである。若菜は家が大手製薬会社だから市販薬の薬の箱くらいいくらでも手に入るのだ。
「今回のお薬は少し無敵感が増して身体能力も上がっちゃうぞ〜!!私が自ら開発したばかりのお薬なんだからねっ!」
満面の笑みで一人一人に手渡していく。そして渡した時にお金を貰っていた。
すると不良達は若菜に跪き、若菜の靴を舐め始めた。
「うむ、苦しゅうない♪」
若菜は薬によって頭のおかしくなった人を奴隷のように扱うのが大好きだ。コイツらは薬によって正常な判断がつかないのだ。
「姫、いつもいつも有難うございます。俺たち、あなたの言うことなら何でも聞きます。こんな俺たちを見捨てず薬を下さるあなたの役に立ちたいです」
ゾンビの様に若菜をボっーと見つめる不良達に、若菜は一切悩まずに頼み事をした。
「じゃあ一つ頼み事良いかな?以前、この店が襲撃受けたって聞いたけどさ、誰がやったか調べてくれる?ここ、私のお父さんと仲の良い組の人が経営していた薬局だったんだよね。それが皆殺しにあってね。監視カメラも全部壊されたし記録に残ってないし、色々と謎なんだよね。」
ゾンビの様な不良を前にして語る若菜であったが若菜はゾンビ達に期待などしていない。
万が一情報が入ればラッキー♪って感じで居るだけだ。
「了解しました・・・!」
そう呟いてゾンビの様な不良達は独り言を言いながら外へ出ていく。
店の中には若菜が1人残された。もちろん若菜は悪魔のような顔をしてお札を数える。
「はい終わった♪今回も儲かった〜。じゃあ、これから恋愛ゲーム買って帰ろうか♪」
学校ではカースト上位のクラスの人気者、恋愛脳でハイテンションだが教員の受けも良い若菜。
学校の外で一人になると人を見下し嘲笑い、不良達に自作の薬を売って周る悪魔。
家では恋愛ゲームに興じる乙女。お父さんに怒られないように勉強もしっかりしている真面目な女の子。
そんな今どきの女子高生が自ら薬を売っている。
そしてそんな女の子がいつも学校では柚花の近くにいたのであった・・・。