昔の仲間は手厚く埋葬する。
喜田の亡骸を片手で担いで、みんなの元へ戻って来た柚花。
この後、みんなで丁寧に手厚く埋葬する。
幸いにも山の最奥は全体が墓と思って良い場所の為、埋葬する場所に困ることはなかった。
この埋葬に率先して動いたのが桧山とメッセンジャーであった。
「喜田は俺の事を兄貴のように思っていたからな。せめて最期くらいはちゃんと埋葬してあげたい・・・。」
普段、寡黙な桧山は目に涙を浮かべて喜田の亡骸を優しく持つ。
「そっちに埋めるんじゃなくて、こっちにしよぉぜ!そっちは罪人を埋める所だろ?こっちは決闘で戦って死んだ者を埋葬場所だから、こっちに埋めようぜ!」
喜田の事を柚花の次に親友と思っていたメッセンジャーは桧山に指示をする。
鳩のメッセンジャーは柚花に拾われた後、必死に日本語を教わったが、その日本語を教えてくれたのが柚花と喜田であった。
当時、ロクに学校に通っていない喜田はしょっちゅう柚花の母が店番をしていた喫茶店に行き、メッセンジャーと日本語を教えたり遊んだりしていた。
当時のメッセンジャーにとっては物凄く嬉しかった事で、その時の恩を返したくてメッセンジャーは喜田を罪人として埋葬するのではなくて戦って死んだ者として埋葬したかったのである。
「喜田、あばよ。地獄でまた会おうな・・・」
桧山に続きメッセンジャーも死んだ親友の為に涙を流す・・・。
そして喜田の亡骸は桧山が丁寧に埋葬した・・・。この山の最奥にある木の中で1番大きな大木の隣に埋葬した。
「喜田・・・たまにはお供えを持ってくるからな」
そう呟いた桧山はその場で一礼をして去っていく。
その桧山の姿を見て、喜田と殆ど関わることのなかった千歌と春奈に加え、高山までも涙をした。
「グスッ・・・なんだろ?私、喜田くんと話たこと殆どなかったのに、何故か涙が出てくる・・・」
眼鏡を取って千歌は目から溢れてくる涙を拭う。
「わ、私も・・・!千歌ちゃんと同じ・・・。名前ぐらいしか聞いたことなかった人だけど・・・やっぱり人が死ぬのは悲しいよぉ・・・」
柚花や千歌と比べて人の死に対面したことがない春奈には結構くるものがあったようだ。
「お、俺は・・・なんか涙が出てきた。何でだろ?」
高山の場合はもらい泣き。周りの皆が泣いていると自分まで泣いてしまうのだ。
殆どの人が泣いている中で泣いていないのが2人いた。
柚花と優の2名だ。
「優ちゃんは大丈夫なの?」
「何が?」
柚花に尋ねられるもクールに対応する優からは大人の風格があった。
「いや、同世代の喜田くんが死んで悲しくないのかなって・・・」
「もちろん悲しいわ。でも私は泣かないから。それに昔から危なっかしい喜田だったからね・・・。何となくこうなる気はしていた。」
「そっか・・・」
「ところではアンタは?柚は涙とか出ないの?」
優は柚花の目を見るも全然涙を流している感じがしなかったから不思議に思った。
「あたしも悲しいんだけどね。何故か涙が出ないんだ。多分、あたしはお母さんが死んだあの日から泣けなくなったんだと思う・・・。あはは・・・」
そう笑顔で呟いて柚花はその場を静かに去った。