『無敵感』は味わえたね♪
「速いっ・・・!速いぞっ!今の俺めっちゃ速いぞっ!」
全速力で木から木へと飛び移りながら走って柚花から逃げている喜田は途中でいつもの自分と違う気がしてきた。
これが『無敵感』というのであろうか?今の自分は今までで1番速く感じる。走っている時の高揚感がヤバいのだ。
「なんだよ・・・!忍者に薬なんか効かないって嘘かよ・・・!いや、薬の免疫のある忍者にも影響を及ぼすほどの薬の強さなんだろうか?とにかく今のオレなら柚花よりも速いし、戦っても勝てるのでは?」
薬の影響のせいか凄い強気な考えをしてしまう喜田だが、何だか後ろから気配が感じる。
恐らく柚花が追ってきているのであろうが、今の喜田の速さには追いつけないだろう。
「ザコがっ!柚花!テメェが俺に追いつけるはずがねぇーだろうがっ!ハッハッハ!」
薬のせいか分からないが随分と調子にも乗っている・・・。
そんな感じで走っていると、いきなり後ろから首を掴まれる。
「グエッー!」
「つーかまえーたっ!」
振り向くとそこには柚花がいた。アレだけ速く走っていたのに、凄い無敵感を感じたのに追いつかれるとは・・・。喜田は絶望した顔をする。
「そ、そんな!スッゲぇ速く走っていたはずなのになんで!」
「えっ?いつもと同じ速さだったよ?喜田くん、昔と走る速さ変わってなかったよ?いつの間にか、あたしの方が速くなっちゃったね♪やった♪最期の最後で喜田くんに足の速さで勝っちゃった♪」
喜田は絶望しショックでその場でうずくまるが、柚花は今まで足の速さに限っては喜田に勝てた事がなかったから、最後に勝てて凄くはしゃいでいる。
「さてと・・・。じゃあ最期に戦おっか?戦いから逃げたあげくに捕まって殺されるなんて格好つかないから、最期にちゃんと戦おうね♪」
柚花はその辺に落ちている木の枝を持って喜田に立ちはだかる。
うずくまっている喜田はヨロヨロと立ち上がるが、その時の顔は既に死んだ様な顔をしていた。
柚花に捕まった時点で人生終了した様なものなので喜田はこの世に絶望し、死に対して恐怖したのだ。
「クソクソクソクソクソクソクソ。オメェさえいなければこんな事にならなかったのに。糞糞糞糞!オメェさえいなければぁっー!!」
喜田はボソボソと独り言を言い始めると突然大声で叫んで柚花の首を狙って刀を振る。
「遅いよっ!」
喜田の刀が柚花の首に届く前に、柚花が手にする木の枝が喜田の首を貫いていた。
「ごへぁぶっ!!」
変な言葉を出して喜田はその場に倒れる。
喜田の首からは大量の血が吹きあふれていた。
「忍者に薬は通じないはずなんだけどな・・・。」
柚花は喜田の死体を見つめながらブツブツと独り言を言う。
「身体能力は変わらなかったけど、忍者にも無敵感や高揚感を感じられるような薬なんてあるんだね・・・。これは注意が必要だね。日本中に変な薬が広まりそうだよ」