この薬さえ飲めば!どんな奴だって倒せるようになるんだぜっ☆
喜田は柚花に連れられて大きな大木が沢山並んでいる場所へ来た。
この場所がこの山の最奥であり、血の匂いが濃い場所である。恐らく、この場所で多くの生命の取り合いや処刑が行われたのだと思われる。
「さぁ、始めよっか!」
喜田が立っているところから柚花は10歩ほど下がって大木にもたれ掛かる。
そして、少し離れたところで高山、千歌、春奈、桧山、優が2人の戦いを見学する。
「さぁ、あたしは目を瞑っておくからどこからでも掛かっておいでっ♪」
相変わらず余裕な様子の柚花である。そんな柚花の顔を見て喜田は今のままでは勝てる気がしないと感じた。
実力でも気持ちの面でも明らかに喜田の方が劣るからだ。
なので喜田は例の薬をポケットから取り出して飲もうとする。
「ちょっと悪いな。今のままじゃあ柚花には勝てる気がしないから薬を飲ませておくれよっ!コレさえ飲めば無敵な感じになれるからさっ♪」
自信満々な顔で喜田は薬をグビッと飲む。
その様子を見ていた柚花は不思議そうに眺めている。
「そんな薬飲んでも強くはなれないよ。あたし達忍者は小さい頃に薬や毒に耐性付ける訓練しているから。忘れたの?」
「えっ??」
柚花の言葉に喜田は変な声が出てしまった。
それもそのはずだ。喜田や柚花達みたいな忍者の家で生まれ育った者は小さい頃から色々な訓練や耐性を付けるための修行をしている。
その中に毒やウイルス、薬に耐性を付けるという訓練をみんな5歳になるまでやっている。
だから忍者達は滅多な事では風邪引かないし、熱も出ない。滅多な事ではインフルエンザにも掛からないのだ。
それでも万が一、風邪引いた場合は優の実家の病院で忍者にも効く特別な薬を出してもらえる。
そして、そんな当たり前の事を喜田は忘れてしまっていた。極道とツルンでいたから、いつの間にか自分の体質も一般人と同じ様に思えていたのだった。
「ああっ!!そうだったっー!!忘れてたぁっー!どうしよぉっー!!」
頭を抱えて、どうしようかと喚きながら悩む喜田を見て柚花は呆れて溜息が出た。
「ハァ・・・。喜田くん、忍者を抜けたせいで一番大事な事を忘れちゃあ駄目だよ。あたし達に薬の類は効かないんだから。薬物とかも効かないからね?」
よくある覚醒剤やアヘン、大麻の類も忍者には効かない。飲んだら気持ち良くなるとか身体能力が高くなるなんて事は忍者には起きない。
その言葉を聞いて更に喜田は絶望する・・・。
「ぐっ・・・!クッソぉっ!」
絶望したが、まだ生きることに諦めていない喜田は手にする武器・・・、さっき牢屋から出る時に柚花から渡された刀を持って斬りかかろうとするのであったが・・・。
「アレ?」
喜田は武器を持って柚花に斬りかかろうとするフリをして柚花の真横を全力疾走して、その場から逃走を図ったのだ。
「柚花っ!後ろだっ!後ろに走って逃げて行ったぞっ!」
「喜田くん、まさか逃げる気っ!?」
メッセンジャーの言葉を聞き、すぐに柚花は目の色を変えて喜田を追う。