溺死は嫌だ!死ぬなら派手に戦って死にたい!
「じゃあ、喜田くんは日本海の真ん中に生きたまま沈めるって事で良いかな?」
みんなの反応を見て柚花は海に生きたまま沈めても良いと判断した。
「柚ちゃんが言うなら賛成っ!私、喜田くんの事、実はあまり知らないし別にどうでも良いし!」
「まぁ仕方ないわね。掟なんだから・・・」
「そうだね。柚ちゃんがそういうなら・・・」
「喜田・・・あばよっ!」
「柚花ちゃんの言う事に賛成!さっさと沈めよ〜ぜ!この抜け忍を!俺、コイツのこと知らねーから死んでも何とも思わんし!」
5人とも喜田を日本海に生きて沈めても良いと思っているみたいだ。そして春奈と高山は正直、喜田の事を全然知らないからどうでも良く感じている。
喜田は自分の事を良く知らない2人に死ねと言われることに物凄く怒りを感じた。
「おい!春奈とチンピラっ!オメェら好き勝手に言いやがって!ブチ殺すぞ!?」
ボロボロの状態で身動き出来ない喜田が大声で怒鳴っても高山も春奈も何とも感じなかった。
「動けねークセに何か言ってら」
「私なら喜田くんぐらいは制圧出来るけどね」
喜田が身動き取れない事を良い事に高山は喜田を見下した目で見る。
そして春奈は絶対に喜田に負けないと確信している。柚花たちの組織では春奈は2番目の強さである。それ故に春奈本人も自分の強さに圧倒的な自信がある。
喜田も春奈がかなり強いのは見て分かるが、高山が滅茶苦茶弱いのも分かる。背は高いし、強そうな風貌ではあるが高山は一般人の中でもかなり弱い部類だろう。
「ぐぅ・・・!春奈は強いから別に良い。でもチンピラ!テメェに見下されるのだけは我慢ならん!テメェ、オレと戦え!」
「弱者男性がなんか言ってら。動けねークセに」
高山に好き勝手に言われている喜田が哀れに感じたメッセンジャーは柚花に肩の上に乗る。
「メッセどしたの?」
「喜田に最期の晴れ舞台を用意してやってくれ・・・。アイツはオレの友達だったんだ・・・。昔オメェが学校の時にいつも遊んでくれていたんだ、喜田は・・・」
メッセンジャーが言う『晴れ舞台』とは最期に戦いの場を設けてくれとの事である。
忍者の殆どは生まれた時から普通の人生は歩めない出自の生まれである。それはある意味哀れな人生とも言える。
そんな哀れな元忍者の喜田には最期は戦って散って欲しいというのがメッセンジャーの考えだ。ある意味温情とも言える。
メッセンジャーの提案に柚花は目を閉じて考える。この提案を受けるということは忍びの掟を破るようなものである・・・が!柚花は即座に決断を下した。
「分かった!あたしも喜田くんとは昔遊んだ仲っ!故に喜田くんには最期に戦いの場を用意してあげる!」
柚花の言葉にその場がざわざわする。
忍者の掟を破ることになるが、そんな事は知らない。
今の棟梁は柚花なのだから柚花のやりたいようにやる。誰にも文句言わせないし文句言ってきたら殴り倒してやる。
「喜田くん、良いかな?最期にあたしと戦うの?」
「ゆ、柚花と・・・?わ、分かった!最期にお前と戦って散ってやる!溺死するくらいなら華々しく散ってやる!」
喜田は最初、ビックリしたがすぐに柚花との戦いにOKを出した。
実はこの時、喜田はある事を思い付いていた・・・。