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死後屋のいろは  作者: 杞憂蛇
序章
7/20

三叉路の邂逅(5)

少し長くなりました。

二話に分けたら微妙なところで止まりそうだったので1.7話分くらいの気持ちで読んでください。

「え…あ………え?」


口を半開きにし、目を色々な対象に回して混乱を募らせる麗夜に、その妙な女はコトコトと足を鳴らしてこちらへ歩み寄る。


「うむ、混乱するのも無理はない。一つずつ情報を整理してやろう、まず君の窮地を救ったわしの事なんじゃが、」

「うわぁぁぁぁぁぁ!!!!」

「へ?」


麗夜は全力で逃走していた。


(やばいやばいやばい!あの変な黒いのもヤバかったけどあの変な白いのもヤバい!変なのしかいないじゃん!)


混乱の結論として、ヤバいのを吹っ飛ばしたアレももっとヤバいという結論を出していたのだ。


「待て!蕗市の!!」


例の着物は全力で追ってきている。


「HUKICHI…蕗市⁉︎何で私の苗字知ってんの⁉︎」


疑問は募るばかりだが命の危機もまた近づいているという恐怖から足は止まらない。


「ちょっと待て!話すから!何で逃げとるんじゃ!足速いなちょっと!」


そういうと妙な女は急加速して跳躍、麗夜の前にカンと飛び降りた。


「うわっ!!」

「い…ったん話を聞かんか…頼むから…」


…着地の体制から動かず、肩で呼吸している。

逃げるのは半ば諦めたのと、やや冷静になれたので対話を試みることにした。


「…何でしょう。」

「おぉ…うん、よかった。」


女は一息ついてよっと立ち上がる。


「ふー…えーっと…なんじゃっけ?」

「………はぁ?」

「いやすまん!本来ならさっきの流れで名乗りから置かれてる状況までまるッとすっきり教えるつもりだったんじゃが…お主が逃げるんで…」


困った様な顔で話す。

どうやら私の状況を把握しているらしい、ますます疑念は深まるが、まともな対話が通じるので質問を始めた。


「…ここってなんですか…あとあの黒いのも!」

「ほぉ…!ここが『違う場所』と認識できるか、良い良い、よく現実が見えてる。」


困った顔から一転嬉しそうな顔に変わる。


「そうだね…まず君、」


何かを問おうとしたところで、雰囲気が変わる。


「…君ィ……」

「は、はい?」

「なんてところに逃げたんだ…」

「へ?」


辺りを見回すと、三叉路であった。

まぁ反対の方向に逃げたのだから当たり前だが

女が呆れたように言う。


「ここは霊障の中心じゃよ。」

「…れいしょう?」


麗夜に背を向けて、三叉路へ目を向ける。


「ここは『霊力』の吹き溜まり、私たちは『異界』と呼んどる。それでこの異界にいるのが…ほら来た。」


三叉路の真ん中と右側から先ほど見たあの黒い化け物が現れた、二体だ。


「…アレの説明まだ貰ってません。」

「君意外と肝あるねぇ…アレがこの世界の住民A『霊』じゃよ。」


三叉路の合流地点で、あの化け物がぶつかったかと思えば、影のようにぐにゃりと混ざり合い、体躯を大きく、頭を二つに増やしていた。


「…ッ」


体はまだまだ大きくなる、1体目より一回り大きく、背中の高さが家の屋根に達し、横幅が綺麗に道路を覆った。

この女より逃げれる気がしないが、足が無駄に逃げ出そうとする。


「逃げんほうが良いぞ」

「……」


正直逃げようとしたが、足が硬直していた。

しかしその女は化け物をじっと見据えていた。


「安心せい、この状況になることを予想して来たんじゃから。」


いつの間にか女の手には紋様のついた金槌があった。


「わしの名は死後屋(しごや)二十(はた)、対霊特化の祓い屋(はらいや)をやっとる人間じゃ。」


そういうと、二十は軽く、かつ非現実的な跳躍を見せた。

方向は化け物一頭の頭上。


「我が小槌、福呼び魔を弾き飛ばさんッ!!!」


二十の動きを見て上を向いた片方の頭、影の鼻先を、身を捻って打ち付ける。

その頭は勢いよく地面に叩き落ち、塵のようになって消えた。

麗夜に目を合わせていたもう片方が、危機を覚えたか建物に向かって走り、これまたぐにゃりとぶつかり姿を消した。


「逃げた…?はずなかろう!屈め!!」


二十が麗夜に向かってそう叫んだ時には、化け物が麗夜の近くの建物から飛び出していた。


「あっ……」


全速のソレは私をバクンと引きちぎり、今度こそ私は殺された。

と思った。

バウッッ!!という鳴き声がしたかと思えば、今度は別の、真っ黒の大型犬のような影が、横合いから一気にぶつかった。


「ようやった!!!ワンコロ!!!」


よろけて地に着いた化け物を、更に上の化け物のような人間が叩きのめす。

同じく塵のようになって消え、あたりには静寂が訪れた。

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