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死後屋のいろは  作者: 杞憂蛇
序章
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三叉路の邂逅

毎度思うのだ、こういうループする場所に来た時、物語の中では気のせいだと思って3,4周目ほどでやっと気づく。

『2周目で気づけよ』と、そう思う。

だが彼らが行なっているのは、現実逃避であったのだと当事者になって今に気づく

『非現実』『理解し難い現象』出会ってみることで、得られる知見もあるのだな。いやぁ素晴らしい素晴らしい。

一度現実逃避の一種を挟んだ所で、現実へ戻る。

実はこの現実逃避の間も、私はずっと三叉路の左を選び、目の前の三叉路で砕けている。

ループしたおかげで頭も回り始めて冷静になったのか、理解し難い現象による恐怖などは薄れ始め、むしろ


「…これ家とか乗り越えたらどうなるんだ?」


ちょっとした好奇心が出てきたところだ。


「いやいやいや…そんなことしてる暇ない」


しかしまだ左以外のルートを選んでいない。

せめてそれの検証は後にしようと、出られない前提で考えていた。

三叉路を戻ることもせず、私はイチ丸の散歩ルートであった右折を選択する。

こちらを曲がれば住宅街の続きを走り、少ししたところで大通りにでる。

強がりか能天気か、それはやや口角の上がった私の表情だけが物語っているだろう。


…………


「さて…どうしたものか…アレなぁ」


朱色の髪の女性が瓦屋根からひょこりと頭を出し、自転車を漕ぐ少女を見る。


「助けた方が…いやぁ嫌じゃなぁ。」


心底面倒そうに、そのままごろりと寝返り空を見る。

空はまるで夕刻のような色で、白色に光るはずの太陽は黒くある。


「異常が見えてないのか…染まっているのは半分と言ったところか。」


彼女の目には、少女の体が霧のような黒とキッパリとした白で構成されているように見える。

少女をじっと見つめていると傍らから裾を引っ張られる。


「あーわかっておるわかっておる、裾を噛むな」


裾を引っ張っているのは、ぼやりとした犬の形に、黄色に光る目、そしてギラギラとした歯のついた影の塊であった。

もはや裾を噛みちぎりそうだ。


「どわー!!待て待て待て!!いや行くから!離すんじゃ!」


言葉は通じるようで、聞こえるはずのない鼻息が聞こえるかの様にピシッとお座りをした。


「おほん、仕方ない。」


瓦屋根の上でこっぽり下駄を鳴らしながら影を見下ろして言う。


「乗り掛かった船じゃ、この死後屋(しごや)二十(ハタ)が、お主の依頼を叶えてやろう。」


二十はにやりと笑みを向け、影の塊を抱えて、屋根から屋根へと跳びうつって行った。

犬より猫派です

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